フェニックス、焼き鳥になる
その後、ダンジョン深層の入口にて。
「お、遅れてごめんなさい。テレポーター、壊れちゃって……」
「マインちゃん、お久しぶりです!」
私は、マインちゃんと久しぶりに合流する。
マインちゃんは以前あった時と同じく、巫女服のような探索衣装に身を包んでいた。
"おお、本物のマインちゃんだ!"
"マインちゃんもファン多いよね!?"
"すっかりここの常連になってたから忘れてたけど、あの子も、アメリカが誇るトップランカーなんだよね。呪術の腕はホンモノ"
"こんな嬉しそうなマインちゃん、初めて見たね!(英語)"
"同年代の探索者、アメリカだと珍しいもんね(英語)"
"英語ニキたちが盛り上がっていらっしゃる!"
アメリカではトップクラスに有名な探索者――そんな人と話しているんだなあと思い、私は不思議な気持ちになる。自分もトップ探索者としてカウントされることはあるが、やっぱりプロの探索者と、配信をメインでやっている者との差は埋められないとも思うのだ。
私が、そんなことを考えていると、
「良かったです! ソロ凸、思いとどまってくれたんですね。フェニックス、あまりにもソロで挑むには厄介で――」
マインちゃんは、ほっとしたような顔でそんなことを言いました。
「いえ? もう倒してきましたよ!」
「は?」
私の言葉を聞いて、ぽかんとほうけた顔をするマインちゃん。
「倒したって…………、フェニックスを?」
「はい!」
"お手本のようなポカーンとした顔で草"
"もう倒した!"
"いや、そら予想出来ないって"
"マインちゃん、これ、レイナちゃんの無茶を止めようとしてたのか"
「ま、まさか…………、たしかに間近で実力は見せてもらったけど。……だとしても、それほどの実力者とは――」
「マインちゃん?」
「あ、いえ。こちらの話」
マインちゃんは、ブツブツと独り言を呟いていたが、
「それでは、ここに何を?」
「ダンジョンイーターズのメンバーを集めて、ここで焼き鳥パーティーをやるんです!」
「???!」
私の答えを聞いて、目をまん丸にして驚くのだった。
それからしばらく経ち、ダンジョンイーターズの面々が集合場所に到達する。
「フェニックスのソロ討伐おめでとう!」
「レイナ様ならやると信じてたッス!」
ミライちゃんと剛腕さんは、開口一番そう口にする。
「ありがとうございます! ところで剛腕さん、これ、調理できますか?」
私がワクワクとハコベールから獲物を取り出すと、
「うおおおおお! あちちちちちちっ、どうやってこんなの調理しろっていうんだ!?」
結構な距離があったにもかかわらず、剛腕さんは大慌てで飛び退る。
倒した後にもかかわらず、フェニックスの身体がごうごうと燃え盛っていたからだ。
「こ、これはっ!」
「マインちゃん?」
「これ、まずいです!」
衝撃を受けた様子で、マインちゃんは懐から札を取り出す。
それをフェニックスにぺたりと貼って、
「封ッ!」
そう勢いよく宣言。
御札に向かって祈りを捧げながら、目を閉じ意識を集中させていく。
「これ、何をやってるッスか?」
「わ、分からない……。有識者の方、解説プリーズ!」
私は、白旗をあげてコメント欄に助けを求めると、
"これはマインちゃんの呪術――生で見れるのすごく羨ましい!"
"なにそれ!"
"あ~! そうか、蘇生阻止も必要なのか!"
"蘇生? なにそれ?"
"フェニックス、都市伝説じみてるけど、放っておくと復活するらしいのよね"
"え、なにそれ怖っ"
"素材剥ぎ取るなら蘇生防止の処理が必要らしいんだけど、マインちゃんは呪術で魂ごと消滅させることができるんだって"
"そんな事情が・・・"
"この有識者ニキ、何者なの?"
「な、なるほど。凄いですね!」
集合知すごい。
そんなやり取りをしていると、
「ふう。もう大丈夫」
マインちゃんは、御札を剥がし、安心させるように微笑んだ。。
「ありがとうございます。放っておくと蘇生するなんて、全然知らなくて――」
「早速、お役に立てて良かったです」
ぺこりと頭を下げるマインちゃん。
ふと私は、マインちゃんが手にした御札を見て、
「そ、それ私のサイン!」
「えへへ、本当にこれが一番、呪術に向いてるんです」
私のサインが刻まれた御札を、ぎゅっと大切そうに握りしめるマインちゃん。
(ふ、複雑です!)
マインちゃんのおかげで、フェニックスの処理が終わったのを見て、
「こ、これで調理すればいいのか?」
「はい、お願いします!」
剛腕さんは、恐る恐るといった様子でフェニックスの死体を見つめるのだった。
「あぢぢぢぢぢっ!」
「燃えてるだけッス! 気合い、気合ッス!」
「おまえは灼熱耐性持ってるから良いよな!うおおおおお! 俺は不死殺しの剛腕。なんのこれしき――あぢぢぢぢぢぢ!」
"なんか断末魔みたいな悲鳴が聞こえてくるけど大丈夫なのwww"
"剛腕さん、これを機に耐性がポコポコ生えてきそう"
"※注:剛腕さんも炎耐性は当然カンストさせています"
調理台は、そんな戦場のような様相を呈していた。
フェニックスが放つ熱は、どうやら近づくだけで大火傷を負うもののようで、剛腕さんが悪戦苦闘していたのだ。
「私も、相当きつかった。素で耐えられたのは、訳が分からない」
「そうなのかな? ミライちゃん、どう?」
「あたいも何も感じないッスね」
「ええ……」
マインちゃんからは、そんなドン引きした目を向けられる。
聞くところによればフェニックスは、死体といえども全身炎耐性の装備で固めた上で、ありったけの炎バリアの呪術をガン積みして、それでようやく蘇生防止の術式を刻む数十秒だけ近づけるレベルの危険物だったそう。
"レイナちゃんにとっては、優しい鳥さんだったからな"
"普通ならトップランカーでも、近づくだけで即死なのか・・・"
"嘘やん"
「あれを素手で殴り飛ばして倒しきったって。正気?」
マインちゃんにしみじみとそんなことを言われてしまい、私はそっと目を逸らすのだった。
「うおおおおお! 熱くない、熱くないぞ!」
「やったッス! きっと新しいスキルが生えてきたッス!」
「捌ける、捌けるぞ……!!」
剛腕さんvsフェニックスの戦いは、数十分の時を経て、新しい調理スキルを生やした剛腕さんに軍配が上がったようだ。
そうして次々と、剛腕さんが焼き鳥を調理することに成功していき、
「へい、お待ちどうさん!」
ついに念願の焼き鳥パーティーが開かれることになった。
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