新装備お披露目配信(2)
それから私たちは、次々とダンボールを開封していきます。
(それにしても、あんな思いつきに、これだけの装備品が送られてくるなんて……)
(全部紹介するのは無理だけど、できるかぎり配信で使うのが恩返しにもなるよね!)
そんな思いもあったが、これまで使ったことがなかったダンジョン装備を身にまとう機会が純粋に楽しいというのも大きい。
「こ、これは……!」
"うぉおおおお! ナース服だ!"
"生まれてきて良かった・・・"
"なんだ今日の配信。俺、死ぬのか――"
私が身にまとったのは、看護師衣装。
ちなみにスペックとしては、ユニコーンの角をアクセントにした、回復性能の向上に特化した代物とのこと。
(ハイスペックなのは疑いようがないですが、完全に趣味だけで選んでるよね!?)
「にゃーん! ネコミミつけたミライッスよ~! なんだか素早く動ける気がするッスよ!」
"ネコミミカチューシャだと!?"
"あれおかしい、ミライちゃんが可愛いぞ・・・?"
"ぴょんぴょんしてるw"
「製作者は、ニャンニャンキャット愛好会の人たちらしいッス! これ凄いッスよ、普通にこんな感じで縦横無尽ッス!」
「ミライちゃん、たぶんカメラの限界超えてて写ってないと思う」
「それはうっかりッス……」
ダンチューバーの先輩として、私はアドバイスしておく。
"しょんぼりミライちゃんも可愛い・・・"
"そう簡単にカメラの限界を超えないでw"
"ニャンニャンキャット愛好会? 始めて聞くブランドだね"
"風の魔力まとわせてるのかな? 性能もえぐいぞ"
コメント欄の片隅では、装備品の性能を真面目に語り合う人々の姿もあったが、
「次は、こっちを試します!」
「うちは、これを試してみたいッス!」
「良いですね。では、私はこっちで!」
私たちはそんなことに気づくこともなく、そのままワイワイと配信を続けるのであった。
――ニャンニャンキャット愛好会。
俊敏特化ビルドの先駆けとなった画期的な装備品を次々と量産し、瞬く間にトップ鍛冶ギルドに仲間入りすることになっていくギルドの名であった。
完全に趣味で活動していた彼らは、本人たちも、どれほどの代物を開発していたのかは無自覚であった。その行動は、推しのダンチューバーに、"とっておきの代物"を送った、という推し活の延長上にあるものでしかなかったのだ。
その画期的な技術は、配信を経て、瞬く間に注目を浴び、否が応でも表舞台に引きずり出されることになるのだが――それはまた別の話である。
「色々な装備品を試してみて、楽しかったですね!」
「楽しかったッス!」
"《鈴木千佳》ウチは、この数時間でドッと疲れたで……"
武器を連続で十本叩き折ったときは、流石に空気が凍っていた。
"《マイン》まさか、全ての武器が一振りで壊れるなんて。これが日本のトップランカー――捕食者の実力……"
「いや、マインちゃんも大真面目に感心しないで下さい……」
(私も、ポキンポキン折れるなんて予想外だったよ!?)(武器の扱い、難しすぎます……)
私が不器用すぎて散っていった武器たちには合掌。
結局、ダンジョンの壁をスパッと斬れる武器は存在せず。
"レイナちゃん式性能チェックやめれw"
"ダンジョンの壁ぐらい叩ききれないと、この戦いにはついていけないのだ"
"【朗報】拳、やっぱり拳が最強"
なお、コメント欄は終始大爆笑であった。
「やっぱり、普段通りが一番ですかね?」
「はい、レイナ様はそのままで最強ッス!」
「色んな戦い方があると、今日、改めては分かりました。色々な装備品があって――そのどれも私には扱えそうもありません」
結局、私が選んだのはいつものメイド服だ。
千佳に選んでもらった、いつもの服装が、道を切り開いてきた、この拳こそが勝負着だ。
「なので、今のスタイルで。いつものスタイルで修練を積むことにします!」
「レイナ様の戦い方は、それが最高ッスよ!」
"《鈴木千佳》うちは戦闘は専門外やけど、それでも――レイナには、今の戦い方が合ってると思うで"
私の言葉に、千佳やミライちゃんもそう返す。
"レイナちゃんに付いていける装備品がないから仕方ないね"
"まあ知ってた"
"レイナちゃんが強すぎるから・・・"
"ときどききせかえ配信はやってほしいなw"
"色んな装備品知れて楽しかった!"
一方、コメント欄はあいも変わらずそんな調子で、
「――それでは、次の食卓で、またお会いしましょう!」
私は、そんな言葉とともに配信を切るのだった。





