42 元社畜と少年-21
冒険者の納品物を鑑定する店、なんてうまくいくのだろうか、と思っていたけれど、思いのほか、客足が途絶えることはなかった。というか、むしろ、かなり忙しい。
ヴィムヴィペールの鱗を納品してきた少年曰く、普段よりずっと早く納品と依頼完了の処理が終わったらしい。それと、恐ろしいことに、わたしの店自体があまり浸透していない、ということも言っていた。
わたしの店での鑑定は必須ではないから、今まで通りギルドでそのまま納品するのも問題ない。しかし、わたしの店で鑑定を先にしてもらった方が手続きが楽、ということが知れ渡ってしまったら……もっと忙しくなることも、容易に想像がつく。
今日は休憩をしっかり取って、閉店時間も伸ばすことなく終わることができた。でも、受付時間の間は、誰かしら人がいて。ちょっと会話をできたのは少年くらい。下手に話が弾もうものなら、業務が滞るくらいには人が来た。
これ以上は忙しくならなくていいんだけど……。せっかく異世界に来たのに、また社畜をする羽目になるのだけは絶対に御免だ。
「鑑定できるのがわたしだけなのが問題なんだよな……圧倒的に冒険者の数のが多いし。どうせ夜帰ってきた冒険者はすぐに対応できないんだし、一部の時間は予約制とかにしちゃうか……? でも冒険者のことを考えると予約制ってしたところで確実にその時間までに採れるわけじゃないしな……」
ぶつぶつと独り言を吐きながら店じまいをしていると、コンコン、と店の扉が叩かれる。もうクローズの札を下げてきたと思うんだけど……。
閉店時間を守れない客か? と思いながら扉を開けると、そこには少年が立っていた。
「お疲れ。何か忘れ物?」
開店時間一番と、その後もう一度顔を見せてくれて、二回も来たので何か置いてきたのかと思ったけど、そうじゃなかった。
「お店終わったかと思って。ご飯食べに行かない?」
「あ、いいね。……そうだ、今日は冒険者ギルドの食堂じゃなくて、どこか別のところに行こうよ。特A昇進のお祝いに、奢らせて。今からだから、予約するようなところは難しいけどさ」
昇進パーティーとかも考えていたけれど、少年が帰ってくるのが早過ぎて、まだ何も準備をしていない。かといって、お祝いに時間がかかっちゃうのもちょっとね。わたしは時間が開くの好きじゃないタイプなもので。
わたしの財布事情的に、予約が必須の高級店に連れて行ってあげられないのが情けない話ではあるけれど。
しかし、わたしのそんな内心など知らない少年は、素直に目を輝かせていた。
「本当!? じゃ、じゃあ僕行きたいお店ある!」
「いいよ。もうちょっとしたら片付け終わるから、そうしたら行こう」
少年を店内に招き入れ、待合用の椅子に座ってもらう。
少年が行きたい店ってどんななんだろう。育ち盛りだし、がっつり肉とかかな。ま、どんな店であれ、この国で出店しているのなら美味しいお店確実だから、どんなところでもいいんだけどね。




