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ファーデスは、急にがらんとした部屋の中を見回し、深くため息をついた。
フィディアス王の、ピラカの言ったことが現実になった。頂点に立つものは孤独なのだ、頂点に立つことと引き換えに、自由を失うのだと。
その上ピラカと言う羽までむしられてしまった。もう飛べない。
飛んでいる暇はない。自分が引き起こし、種を蒔いたことの刈り取りをしなければ。今までとは違うのだ。一年経って、フィディアス王の喪が明ければ、正式に王になるそれまでに推し進めなければならないことがたくさんある。幸いに財力は別に蓄えてきた。それが役に立つだろう。
そうだ。飛んでいる暇などない。ピラカがその生命を捨てようとしてまで賭けてくれたこの地位を無駄にしてはいけない。
いいのだ。飛ぶことは二人に任せればいい。本来ならば、王位についていたはずの彼に。この大空を自由に飛んでくれればいい。飛べなくなった、羽を失った自分の代わりに。
彼の代わりに、自分は大地に這いつくばり、脈々と根を張って彼らの魂を伝えていこう。リーシュラとともに。
宿命なのだ、と彼は思った。別々にこの世に送り出され、放浪していた自分たちが偶然にもオルディアに拾われ、ともに養子として出会った。この偶然を宿命と呼ばずして何であろう。そして、彼は飛ぶことを選んだ。自分が地に繋がれ、人を支配することを選んだように。
血のつながった二人は、互いに互いを羨ましく思いながら、それぞれの世界を築いていくことになる。
もう後戻りはできない。昨日へは戻れない。明日へ進む以外に道はないのだから。
「ファーデス様」
侍従の呼ぶ声がする。
所詮は血塗られた道。自分で流した血ではなくとも、常に人の血の上に王はいる。
「今行く」
答えながら、ふと表情が陰る。
囚われ人はどちらの方だろう。だがそれに答える影はない。全ては闇の中に塗り込めてしまった。
それもいいさ。闇はすべてを包み込み、癒やす。
ピラカは表舞台に立つことなく、闇から闇へと姿を消していった公子にほかならない。闇の中でしか生きられない影の公子なのだ。ちょうど自分と対照的に。
たとえ五十年、この星の支配を続けたとしても、彼以上に信じられる人物には出会うまい。私は彼を失ったおかげで一人で孤独に耐えねばならない。
それが定め。
踵を返し、扉へ向かう。
彼の脱走はじき明るみに出るだろう。そしてアガルティナの失踪も。私は二人の捜索と手配を命じるのだ。
それ以上にできることはない。私は二律背反をこの身に抱きつつ生きていく。彼が今までそうしていたように。
明かりを消して部屋を出る。その闇の中に、彼の微笑みを見たような気がした。
これで彼らの物語は終わりです。
稚拙な文章にお付き合いいただきありがとうございました。
原稿から書き起こししながら全部焼き捨てたくなりました(。。




