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夫に捨てられる予定の伯爵家の妻ですが、仕事を頑張っていたら勤め先の執着強めな家族に囲われていました  作者: 多賀りんご


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番外編1 幸せな日 前編




お礼の番外編です。

前話で完結済みですが、続きになります。

最終話の直後からはじまります。




 




「ソフィア・カーリア伯爵令嬢。どうか私、

 レオナルド・ルチアーニの妻になっていただけませんか?」



 それは、まるで物語に出てくるような完璧なプロポーズだった。


 よく晴れた王宮の庭園。

 レオナルド様の手の上で、指輪のエメラルドが陽の光を反射する。

 それを目にした途端、私は目の前が真っ白に染まっていくのを感じた。


 言葉の意味を理解するまで、数秒。

 驚き過ぎて、息ができない。



「…………はい」



 どうにか喉奥から、返事を絞り出す。

 少しの間ぼんやりとしてしまい――そして、はっと我に返った瞬間。


 レオナルド様の指先が、私の薬指にするすると指輪をはめていくのが見えて……。



「あの……私なんかで、本当によろしいのでしょうか?」



 私は慌てて声を上げた。

 恐る恐る見上げると、鮮やかな翠の瞳と目が合う。

 すると、レオナルド様は満面の笑みを浮かべた。



「ああ。ソフィアしか考えられない」



 揺るぎない声で告げられて、私は思わず顔が熱くなる。

 そしてレオナルド様は、これまでの想いを語ってくださった。

 ずっと私を探していたこと――そして再会してからは、暗闇の中にいたルチアーニ家を、明るく照らしてくれる存在であることに気づいたこと。

 もう二度と、失うことは考えられないと……。


 どうしてそんなに、レオナルド様がこんな私を想ってくれているのかはわからない。

 けれど、そう語るレオナルド様の笑顔は、まぶしいほどで。

 私は胸がいっぱいになり、それ以上、何も言えなくなってしまったのだ。





 レオナルド様に手をとられ、城の中に入った。

 何が何やらわからないままついて行くと、廊下の奥の扉の前でレオナルド様は立ち止まる。


「この先は国王陛下の私室だ。これから陛下に婚約の報告をすることになっている」


「え……?」



 先ほど馬車の中で、確かにレオナルド様はそう言っていた。

 けれど、いざ自分の身に降りかかってくると、あまりの展開の早さに戸惑った。


 レオナルド様からは、先程プロポーズされたばかりだ。そんな決まりたての初期段階に、国王陛下にご挨拶などしていいのだろうか?


 レオナルド様は国王陛下の側近の一人。いくら近しい間柄とはいえ――報告をすれば、私たちの結婚は決定事項となるだろう。


 後戻りできなくなる。

 その前にまず、確認しなければならないことが。



「あの、私の父に、結婚の許可を得なければ……」



 私はヴェルディ家との離縁後、遠方に住む父と手紙のやり取りだけを行なっていた。

 名家で働き口を見つけたことに安堵したのか、それ以上追求されることもなく疎遠にしていたものの……。

 娘の結婚は父親が決めるもの。しきたりは守らなければならない。



「カーリア伯爵の承諾は得ている。だから大丈夫だ」


「え? そうなのですか?」



 父は同格のヴェルディ伯爵家との婚姻ですら喜んでいた人だ。家格が上のルチアーニ侯爵家からの縁談を、断ることは考えにくいとはいえ……。


(一体、いつの間に?)


 レオナルド様の根回しの早さに圧倒される。

 しかし、そんな用意周到なレオナルド様と違い、私はなんの準備もできていない。



「国王陛下に謁見するというのに、このような格好でよろしいのでしょうか。外出着ではあるのですが、正装ではなく」


「私的な顔見せだからかしこまる必要はない。ごてごてと飾りたてた服より、今ぐらいがちょうど良いと思う」



 今着ている濃緑色のビロードの婦人服は、レオナルド様のお母上である前侯爵夫人に買っていただいたものだ。


 ご自分のドレスを仕立てる際に「ソフィアの服も一緒に注文してしまいましょう」と、貴族御用達の名店で一式揃えてくださったのだ。


 奥様が見立ててくださった服なので、確かに良い品ではある。

 けれど……。


 戸惑っていると、レオナルド様は私を安心させるように微笑んだ。



「他に不安なことはあるか?」


「……いえ……他には、特に」


「よかった。では、行こう」



 レオナルド様が扉を開けた先には、絵姿でしか目にしたことがない国王陛下が寛いでいらした。


 冷や汗をかきながらご挨拶をした後、今度はレオナルド様が参議を務められている小評議会の皆様の執務室を訪ねる。その後は兵舎に移動し、レオナルド様の部下である衛兵隊長の皆様にもお会いして……。


 今日だけで、一体何人の王侯貴族にお会いしたのだろう? 

 そう疑問に思うほど、たくさんの方々にご挨拶したおかげで。


 白亜の城が夕陽色に染まりきる頃には、私たちの婚姻は王宮中の確定事項になっていたのだ。




 侯爵邸に帰ると、夜も深い時間になっていた。

 エントランスホールには、前侯爵夫人が待ち構えていた。


「あら、あらあらあら!」


 私の左手に光る指輪を見て、全てを理解してくださったのだろう。並んで帰宅したレオナルド様と私を見て、満足げに笑みを浮かべた。



「……ソフィア、本当によかったわ。カテリーナもね、ついさっきまでここにいたのよ? 二人に早く会いたがっていたわ。プロポーズの行方をひどく心配していたから」



 帰りが遅くなってしまったため、普段カテリーナ様がお休みになられている時間は過ぎていた。

 けれど先程、部屋の窓から灯りが漏れているのが見えた。もしかしたら私たちの帰りを待ってくれているのかもしれない。



「カテリーナ様のお部屋に、今から行ってもよろしいでしょうか」

「ええ。ぜひ。きっと喜ぶと思うわ」



 私は奥様に礼を言うと、レオナルド様と共にカテリーナ様の部屋へと向かった。















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