692.終わってしまった冒険譚
毎日投稿を維持し続け、気がつけば今回で700話目となります。
「皆殺しにして、数千年かけて杖を探す」。
純度100%の殺意を向けてくるサルハナさんたちを前に、私たちは完全に詰んでいた。
輝かしい未来に繋がっていない『ハズレ回』の世界線。
絶望する私に、ザックさん、エンディラさん、フレヤさんは笑顔で自らの命を『捨て石』にする決断を下す。
私の紡いだマギアウェルバで限界を突破し、自爆特攻でサルハナさんたちを足止めしてくれている僅かな隙。
スローモーションのように散っていく仲間たちの輝きをこの目に焼き付けながら、私は涙を振り払い、ただ真っ直ぐにアストラリスの木へと駆け出した。
新しい時代を導く、流れ星になるために――そして今に至る。
11ッッッ――!!!
もう少し、もう少しでッッッ――!!!
ああ、もう少しでアストラリスの木にッッッ――!!!
「甘いよ、アメリ君ッ!!」
「捕まえたぁぁぁッッッ!!!!」
背後から。
氷のように冷たく、そして純度100%のドス黒い殺意が、私の全身を完全に飲み込んだ。
――ズバァァァァァッッッ!!!
――ドゴォォォォォンッッッ!!!
「がっ……ぁぁぁぁぁあああああッッッ!!?」
私の背中。
斜めに深く、骨まで達するほどの鋭利な刃が。
「クソッタレェェェッッッ!!!アメリッッッ!!!」
「ぁぁああああああッッッ!!!大地にッッッ!!!重力魔法でッッッ……!!!」
「アメリさんッッッ!!」
同時に、左の側頭部。
隕石でも直撃したかのような凄まじい質量の何か。
みんなの声。
12。
みんなが命を燃やして作ってくれた、12数える間の僅かな隙。
それでも。
ああ、それでも。
不老不死の狂戦士と、千年の戦闘経験を持つ化け物の速度は、私が『バーンアウトエクスタシー』で限界突破した神速すらも、いとも容易く凌駕しているんだ。
「あ……ぁっ……」
視界が、ぐちゃぐちゃに回転する。
上も下も、右も左も分からない。
脳髄が頭蓋骨の中で激しく揺さぶられて、頭の中が完全に破壊されたような感覚。
背中から噴き出した自身の温かい血。
遠心力で空中に撒き散らされていくのが、スローモーションのように見える。
天地がひっくり返った泥と雪の荒野。
水切り石のように何度も何度もバウンドしながら、猛烈な勢いで吹き飛ばされていく。
バキッ、ゴキッ、と。
泥に叩きつけられる度に、全身の骨が軋み、悲鳴を上げる。
バーンアウトエクスタシーで痛覚が麻痺しているはずなのに、側頭部を殴られた衝撃で視界の半分が真っ赤に染まり、強烈な吐き気が込み上げてくる。
それでも。
ああ、それでも。
泥水を啜って、無様に地面を転がりながら、それでも、霞む視界の先には、青白く光るアストラリスの木。
あの木だけは絶対にロストしないように、ジッと睨みつけろ。
全身が爆散してもいい。
『イナズマ』で雷になれ。
私の耳に。
背後から、聞きたくない悲鳴と音が、残酷なほど鮮明に飛び込んでくる。
「いかせねえぇぇぇッッッ!!アメリに近づくんじゃねえぇぇぇッッッ!!!」
ザックさんの、血を吐くような絶叫。
私が吹き飛ばされていくその背後で、みんなは、己の命の残滓を全て削り落として、私を追撃しようとするサルハナさんたちに全力で追いすがっているんだ。
ズバァッ!ドスッ!という、肉を断ち切り、骨を砕く、ひどく生々しくて嫌な音。
「がはっ……!ごふっ……!!」
「ザックッッッ!!!」
ザックさんの苦悶の呻き声を掻き消すように、エンディラさんの悲鳴が荒野に響き渡った。
やめて。
もうやめて。
泥だらけの地面を転がりながら、私は声にならない声で叫んだ。
振り返って、助けに行きたい。
でも、そんなことをしたら、みんなが投げ打ってくれた命が、本当にただの無駄死にになってしまう。
「あぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
直後。
エンディラさんの、今まで聞いたこともないような、鼓膜を劈くような絶叫が荒野に響いた。
何かの防壁がバリンと粉々に砕け散る音。
何かが、決定的に破壊された音。
「エンディラさんッッッ!?」
私が思わず体勢を立て直し、首を後ろへ向けようとした、その時。
「振り返らずに行けぇぇぇぇッッッ!!!」
フレヤさんの、涙で顔をぐしゃぐしゃにしたような絶叫が、私の耳元で爆発したように響いた。
「アメリさぁぁぁぁんッッッ!!!行けえええぇぇぇッッッ!!!」
――ドゴォォォォォォォォォンッッッ!!!!!
フレヤさんの叫びを最後に、全てを呑み込むような途方もない轟音が背後で弾け飛んだ。
ツインサイクロンの暴走?ヤエさんかサルハナさんの攻撃?
熱風が私の背中を焼いて、凄まじい爆風が、泥の地面を転がるように駆け抜ける私の身体を、アストラリスの木の方角へとさらに強引に押し流していく。
「あ……ぁぁ……っ……みんな……ッッッ!!!!」
涙が、泥で汚れた頬を止めどなく伝い落ちる。
背後からは、もう、誰の声も聞こえない。
ザックさんの皮肉めいた笑い声も。
エンディラさんの気高い声も。
フレヤさんの凛とした声も。
何もかもが、あの轟音の中に消え去ってしまったんだ。
「っ……あぁぁぁぁああああッッッ!!!」
私は、喉が裂けるほどの叫び声を上げながら、血まみれの身体を、無理やり動かし続ける。
駆け抜けろ。
絶望している暇なんて、ほんのつま先たりともない。
みんなが繋いでくれた、この僅かな距離。
アストラリスの木までは、あとほんの十数バレルだ。
なのに、どうして?
私には……アストラリスの木が、果てしなく遠く見えるよ。
ねえ、みんな……私、ちゃんと前に進めている?
流れ星みたいに魂を燃やせている?
――ズズ……ズズズズズ……ッ
ゆっくりと。 本当に、ひどくゆっくりと。
青白く美しく光る、アストラリスの木。
その強烈な光が雪原に落とす、漆黒の『影』。
その影の海の中から、ぬっと。
泥のような、ヘドロのような、粘り気のある巨大な漆黒が、せり上がっている。
「……え?」
せり上がってきた漆黒は、瞬く間に人の形を取って、あの濁った青い瞳を開いて、私を見下ろした。
木に到達するよりも先に、先回りするようにして、影の中から実体化した化け物。
「あははっ。どこに行くつもりだい?アメリ君」
サルハナさんだ。
いや、サルハナさんであって、サルハナさんではない。
背後でフレヤさんたちの自爆特攻を食らっているはずのサルハナさんが、無傷の状態で、アストラリスの木の影から『出現』した。
私を見下ろすその顔には、先程までの余裕すら消え失せた、底冷えするような純粋な殺意だけが張り付いている。
ああ……
ゆっくりと流れる時間の中。
絶望で凍りついた思考の片隅で、私は、ひどく静かに、ストンと納得してしまっている。
そうだ。私が相手をしているのは……『影の魔人』だったな……
光が強ければ強いほど、影は濃くなる。
アストラリスの木が放つ希望の光が、皮肉にも、最強の絶望をその足元に生み出してしまっているんだ。
「さようなら、アメリ君。ここでゲームオーバーだ」
サルハナさんの冷たい声と同時に。
私の視界のど真ん中を、漆黒の刃が、無造作に、けれど絶対的な力で横薙ぎに一閃した。
――ズパァァァンッッッ!!!
痛みは、なかった。
ただ、視界がガクンと下に落ちた。
私の上半身が、宙を舞っている……?
泥まみれの地面。
ああ、このままじゃ転がる。
このまま踏ん張――自分のへそから下の感覚……ない?
プツリと、完全に途切れて……いる。
切断されたんだ。 私の、胴体。
「……」
「…………」
私を半分に切り裂いたサルハナさんの隣に、背後でザックさんたちが足止めしたはずのヤエさん。
音もなく降り立った。
二人は、もはやピクリとも動かない私の上半身を見下ろして、何かを口にしている。
だけど、もう何も聞こえてこない。
終わっちゃった。
私の命も。
みんなの覚悟も。
この世界の未来も。
ここで、完全に、終わったんだ。
ああ、私の下半身……燃やされている。
もうスイートアンジェリカでも無理なやつ。
本当に……終わりなんだ。
……嫌だ。
嫌だ。
嫌だ、嫌だ、嫌だッッッ!!
絶対に嫌ッッッッッッ!!!!!!!
薄れゆく意識の底。
ドロドロに溶けかけた私の魂が、たった一つの炎を灯している。
終わらせない。
みんなが繋いでくれたこの命を。
私はまだ、アストラリスの木に触れていない……!!
私はまだ、生きている!!
――だったらッッッ!!!
――燃やせ……ッ!!
切断された胴体の断面に向けて、無詠唱で無属性の火魔法を放つ。
意識が覚醒したみたい。
はっきりと『思考』が出来る。
――ジュゥゥゥゥゥゥッッッ!!!
「がっ……ぁぁぁぁぁあああああッッッ!!!」
肉が焼け焦げて、血が蒸発する凄まじい悪臭と激痛。
切断面を強引に焼き潰して止血。
吹き飛びかけた意識を、無理やり激痛で繋ぎ止めろ。
そうだ、この痛みは、私がまだ生きているって証拠だッッッ!!!!
「……!?」
「…………!!」
完全に油断していたサルハナさんとヤエさん。
驚愕に目を見開いている。
――ここだッッッ!!!!!!!
もう声すら出ない喉で、血泡を吹きながら詠唱を紡ぐ。
二度目の、いや、最後の『バーンアウトエクスタシー』。
命を燃やすどころか、魂そのものを薪にくべてやる。
正真正銘、最後の限界突破。
――ドクンッ!!
私の半分の身体から、太陽のように眩い、真紅のオーラが爆発した。
「……!…………!!」
「……!!」
サルハナさんの影の刃と、ヤエさんの漆黒の雷球が、同時に私を消し炭にしようと迫っている。
でも、遅い。
私の方が、ほんの少しだけ、速かった。
残された全魔力を、残された右腕の一点に集中させろ。
泥の地面に向けて叩きつけろッッッ!無属性の風魔法ッッッ!!!!
限界を超えた魔力の超圧縮による、大爆発をッッッ!!
――ドゴォォォォォォォォンッッッ!!!!!
「…………!?」
「……!!」
凄まじい突風と泥の爆発。
サルハナさん、ヤエさん。
バランスを完全に崩した。
爆発の反作用。
私の上半身。
猛烈な勢い。
アストラリスの木……!!
吹き飛ぶ。
空中。
震える左手。
異空間収納。
アストラリスの杖。
木。
あと――
最後の魔力――――
あと――――
杖――
――
ゼルさん――――?
幻……?
ああ――――
※ ※ ※
フレヤ視点
アメリさんによる『バーンアウトエクスタシー』の効果が終了し、全身の細胞が内側から弾け飛ぶような絶望的な反動が、私の、そしてザックさんとエンディラさんの肉体を襲っている。
「がはっ……!クソッタレェェェッッッ……!!」
「あ……ぁぁ……」
完全に動けなくなった私たちのことなんて無視し、サルハナとヤエが、満身創痍でアストラリスの木を目指しているアメリさんにトドメを刺そうとしている。
ああ、冒険譚を世に送り出して……アメリさんと一緒に、本屋で売られている光景を見たかったな……
それももう、叶わない願いなんだな……
「さようなら、アメリ君。ここでゲームオーバーだ」
私たちが命を燃やして稼いだほんの僅かな時間。
その隙を突いて、アストラリスの木へ到達しようとしていたアメリさんへと、二人の化け物が標的を変えて跳躍した。
その『ほんの僅かな時間』で、アストラリスの木まで行けると思ってた。
全身の骨が砕けたような激痛が走る。
くそっ、こんな痛みくらい耐えろ!!!
泥に顔を擦り付けて前を見た。
ああ、ダメだ。 間に合わなかった……
サルハナの漆黒の刃が、無造作に、けれど絶対的な暴力として振るわれるのが見える。
アメリさんの小さな身体がッッッ……!!
……空中で二つに分けられる。
下半身が泥の中に無残に転がって、そして……サルハナの放った魔力によって、瞬く間に黒焦げに焼却されていく。
あ、ああ……アメリ、さん……
思考が、真っ白に染まる。
ここまでの旅路が全部崩壊していく。
ウェルバ・グラフィカに込められた『スイートアンジェリカ』による蘇生すら不可能な、完全なる『死』。
私たちの希望は、泥と血に塗れて、完全に潰えた。
「うぅ……っ……あぁぁぁ……ッ!」
それでも。
歯を食いしばり、震える手で斜めがけの鞄の中へ強引に指を突っ込んだ。
指先に触れたガラスの感触。
私は、赤と青の液体が入った回復ポーションと魔力回復ポーションを掴み出すと、泥に沈むザックさんとエンディラさんの方へと、力任せに投げつけた。
パリンッ!と瓶が割れ、二人の身体に僅かながら回復の光が浸透していく。
自分自身にも回復ポーションを浴びるように流し込む。
足が折れてる……いや、全身がボロボロで、どこがどう怪我しているのか理解できない。
それなら、泥を啜りながら、匍匐前進で進め。
アメリさん、せめて死ぬときはあなたの近くで……!
もう、助からない。
それは分かっている。
それでも、せめてアメリさんの側に。
街の本屋で一緒に冒険譚を並べる約束をした、私のたった一人の相棒の側。
「ア……メリッ……さんッッッ……!!」
アメリさんを一人では行かせない。
アメリさんは私がそばにいないと……!!
天国で一人ぼっちにならないように、アメリさん……アメリさんッッッ!!!
今行くからね、アメリさん……
「エン……ディラッッッ……!!」
「……ザッ……ク……?」
「に、逃げ……られるか……?」
「……死ぬときは……一緒ですわ……」
「へへっ……そうか……だな……」
私たちの進んできた道は……輝かしい未来には通じて無かったんだ。
ああ、何がどう転がっても、かならず明るい未来にたどり着けるって……どこかで慢心してしまっていたのかもしれない。
アメリさんと……この旅を振り返って笑い合うような……
――――!?
なに、この悪臭は……?
泥を這っているから漂っているわけでも……ない。
なんだろう、凄まじい悪臭だ。
肉が焼け焦げて、血が蒸発するような、酷く生々しい死の匂い。
「がっ……ぁぁぁぁぁあああああッッッ!!!」
顔を上げた私の網膜を焼いたのは、論理を完全に超越した、狂気とも呼べる執念の光景だった。
上半身だけになったアメリさんが。 泥の中で、自らの切断された胴体の断面に無属性の火魔法を叩き込み、ジュウジュウと肉を焼き焦がしながら絶叫している。
「やめ……やめて、アメリさん……ッ!もう、いいから……ッ!!」
身体が言うことを聞いてくれなくて、うまく声が出ない……!!
私が心の中で悲鳴を上げた次の瞬間、アメリさんの半分の身体から、太陽のような真紅のオーラが爆発した。
『バーンアウトエクスタシー』。
残された魂の最後の一滴までを燃料にした、神すらも畏れるような狂乱の輝き。
直後。
アメリさんが右腕を泥に叩きつけた瞬間。
ものすごい突風が泥を巻き込んで襲いかかってきた。
超圧縮された風魔法の大爆発……!?
――ドゴォォォォォォォォンッッッ!!!!!
「…………!?」
「……!!」
遅れて音が爆散するように通り抜けていく。
突風の余波が、私の頬を切り裂く。
……バランスを崩したサルハナとヤエの頭上を越えて……!
アメリさんの上半身が、まるで投石みたいに……猛烈な勢いで……!!
アストラリスの木へと向かって飛んでいったッッッ!?!?
私のアメリさんは……やっぱり凄い人だ……
だって、下半身がないんだよ?
それなのに、貴女って人は……なんで、ああ、なんて凄い人なんだ……!
空中を舞うアメリさんの左手ッッッ――――!!!
異空間収納から引き抜かれたアストラリスの杖が握りしめられている!!!
「行けぇぇぇぇぇぇッッッッッッ!!!!!」
届く。 これなら、木に届く……!!
「サルハナさんッッッ!!!このままじゃッッッ……!!!」
「あーっ!!くそっ!!!させないよッッッ!!!」
しかし、無情にも。
態勢を立て直したサルハナの足元から、巨大な漆黒の影の刃が、宙を飛ぶアメリさんにトドメを刺すべく、大蛇のようにせり上がった。
もう、あれを誰も止められない。
アメリさんの背中は完全に無防備で、回避する力なんて残されているわけがない。
改造ツインサイクロンを……!ダメだ、破壊し尽くされている……!
フェニックス――――腕が、腕が腰まで伸びないッッッ!!!
「アメリさぁぁぁぁんッッッ!!!」
喉から血を吐きながら絶叫した。
ああ、この絶叫でアメリさんを助けることができれば――――!!!
その――瞬間だった。
――ズドガァァァァァァァンッッッ!!!!!
天が、落ちてきたのかと思った。
凄まじい轟音と、大地を粉砕するほどの衝撃波。
泥と雪が数十バレルの高さまで吹き飛び、私の身体も暴風に煽られて地面を転がった。
何が起きたのか。
舞い散る泥の雨の中で、私は目を見開いた。
「な……っ!!」
トドメを刺そうとしていたサルハナの姿は、そこにはなかった。
代わりに。 アストラリスの木の影の前に、髪を逆立てた『人影』が、片膝をついた姿勢で……着地している……?
彼の足元には、原型を留めないほどに完全にひしゃげ、泥と同化した『肉塊』――つい数秒前までサルハナだったものが、ピクピクと痙攣しながら沈んでいる。
魔法なんかじゃない。
ただ上空から一直線に降ってきただけの、純粋で、絶対的で、規格外の『暴力』による一撃。
あの千年の戦闘経験を持つ化け物が、反応することすらできずに、文字通り一瞬で圧殺されている……?
……!!!!
「ゼ、ゼルさんっ……!!」
私の震える声に反応するよりも早く。
ゼルさんが右手に握りしめていた銀色の剣の刀身から、強烈な光の筋が一直線に放たれた。
「――っ!?」
光は、呆然と立ち尽くしていたヤエさんの眉間を正確に貫いた。
その瞬間、不老不死の狂戦士の瞳から、スッと光が消え失せる。
まるで精神を、完全に剣に喰われ――――あれは『ねぼちゃん』……!?
ヤエは、糸が切れた操り人形のようにその場に力なく膝をつき、二度と動かなくなった。
あんなにも絶望的だった二人の化け物が。 ゼルさんが空から降ってきた瞬間、完全に沈黙した。
「アメリッッッ!!!」
ゼルさんは、足元の肉塊にも、膝をついたヤエさんにも一瞥もくれず。
血を吐くような悲痛な叫び声を上げながら、アストラリスの木へと激突してしまった、半分の身体になった愛しい少女の元へと、全力で駆け出していった。
サルハナたちを倒せても、アメリさんが死んでしまった……
これでもう、女神アストラリア様が復活することはない。
いや、そんなことはどうでもいい。
アメリさんが……死んでしまった。
嫌だ、嫌だよ……
嫌だぁぁぁッッッ――――!!!!
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