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57「襲撃です?」②




「アーリーさん。ボーウッドといちゃついているところ申し訳ないんだけど、ちょっとこっちの話も聞いてほしいかなって」

「あんだ、新米魔王?」


 積極的にボーウッドにアタックしていたアーリーを呼び、中庭にある椅子を指差して座って話そうと誘う。

 近くでは良い感じに酔っているダニエルズ兄妹と、気づけば一緒に飲んでいたギュンター、カル、アーグネスがいる。


「……サミュエル・シャイトだよ。一応、名前を覚えてくれると嬉しいよ」

「おう、サミュエル」

「サムって呼んでほしい」

「わかった。んで、話をするのはいいんだが、そっちの変態魔王は俺に近づけんなよ。俺の身体はもうボーウッド様のものなんだ。変態魔王に凌辱されるわけにはいかねえ」

「はいはい。というわけで、友也は少し離れていてね」

「……僕はいつでも孤独です」


 ちょっと拗ねた感じで、しゃがんで中庭の芝生を抜き始めた友也に若干の申し訳なさと、面倒臭さを覚えてサムは苦笑する。が、触れずに椅子に腰を下ろす。

 アーリーもサムを前に、どさりと椅子に座って、足を組んだ。


「で、話ってなんだ?」

「こっちにつかない?」

「はぁ?」

「聞けば、ご飯と酒を奢ってもらったことがきかっかけで元魔王についているみたいだけど、割りに合わないだろ?」

「まあな。正直、ぶっ殺したくなるような上司と同僚どもだ」

「なら」

「まあ、待てって。俺はよ、強い奴と戦いたいんだよ。生きているって実感ができる血湧き肉躍る戦いがよ。つーわけで、敵の多いクズ主人についていたんだが、ま、今はこんなだ。だが、途中で投げ出すのは俺の性に合わねえ」

「なるほど」


 忠誠心があるというよりも、一度仕えたら最後まで仕え続ける考え方は嫌いでは無い。

 自分の保身や欲で、簡単に着く相手を変えるような奴よりよほど好感が強い。

 だが、それだけに敵対しているのはもったいない。

 今後、どのような戦いになっていくのかわからないが、元魔王オーウェンがこっちに喧嘩を売ってきている以上、容赦はしないつもりだ。その戦いでアーリーを殺してしまうのは、惜しい。


「ちょっとタイム」

「あん?」

「ちょっと待ってて」

「ああ、別にいいが」


 ダニエルズ兄妹のテーブルからワインとグラスを奪って、アーリーの前に置く。

 抗議の声が上がったが、無視する。


「飲んで待ってて。おーい、ボーウッド」

「へい!」


 少し離れて見守っていたボーウッドが駆け寄ってくる。

 サムも彼に近づき、肩を組んでこっそり話をする。


「ねえねえ、アーリーに気にいられているみたいだけどさ、こっち側に引き込んでくれない?」

「お、俺がですか?」

「うん。だって、ボーウッドに惚れちゃったみたいだから、ちょっと良い感じに頼むよ」

「あ、兄貴、俺にはロボが」

「別に結婚しろとかじゃなくて、せめて元魔王から引き離したいんだ」

「それは……俺も彼女が、兄貴と敵対するのはちょっとどうかと思いますが」

「アリシアにロボの件で協力するように頼んであげるから!」

「――俺に任せてください! 兄貴の信頼に応えてみせます!」


 ちょろい、と内心思ったが、顔には出さない。

 ボーウッドは、きりっとした顔をすると、アーリーに近づき膝をついた。


「え? え?」


 突然のことに驚くアーリーに、ボーウッドは彼女の手を取る。


「レディ、どうか評判のよくない元魔王など見限り、俺と一緒に兄貴に仕えましょう」

「――よろこんで!」

「簡単! すっごく簡単! 俺との会話がなんだったのってくらい簡単に寝返っちゃった!」


 頬を染めてうっとりするアーリーに、サムが突っ込むがこちらの声など聞こえていない。


「まあ、いいや。これで、アーリーから元魔王についていろいろ聞くことが――ん?」


 上空で魔力の高まりに気付いたサムが頭上に視線を向けた。


「……やるね。普段、上空なんて意識しないから後手に回ったよ」


 サムが呟いた刹那、一筋の光の槍が空から降ってきた。

 だが、サムは落ち着いたまま、拳を握りしめて空へ突き出す。

 同時に、右腕から濃縮された魔力が闇の渦として解き放たれる。

 闇の渦は、光の槍を飲み込み破壊すると、はるか上空にいる襲撃者をも飲み込んだ。


「手応えあり。おい、そこの暇人ども。敵が来るぞ」


 サムの言葉に、ダニエルズ兄妹が、ギュンターが、いじけていた友也が雰囲気を切り替える。

 しばらくすると、空に三人の翼を持つ男女と、その三人に運ばれている三人、計六人が現れた。





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