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43「デライトの出番です」②





 まさか殺してくれと頼まれるとは思わなかったデライトだが、同時に理解もする。

 青年をはじめ、この場にいる大半の人間が、スカイ王国に来たくていたわけではないのだということを。


「……あー、なんだ、事情を話してはくれねえか?」

「わかった」


 なんとか言葉を絞るように発したデライトに、青年が頷き語り始める。

 聞けば不愉快ではあるが、珍しい話ではなかった。


 青年をはじめ、騎士の大半が家族を人質にとられている者ばかりだった。

 ただし、ただ家族を人質に取れば問題だ。

 そこで、現在のティサーク国に不満を持ちクーデターを企んでいる面々の中で囚われた人間の家族や、クーデター組織に理由はさておき関わったことがある人間が、反逆罪の罪で投獄され、家族を開放する条件で今回の使節団に加わったのだ。


 なぜそんな面倒なことを、とデライトが困惑するが、ティサーク国に忠誠を誓う騎士や魔法使いは、現在クーデターを警戒しており国から離れられないという。

 そこで、家族を人質に、もしくは反逆罪の罪をなすりつけられた者がスカイ王国へ行き、使者を連れて帰ることを命じられた。


「俺たちは死んでも構わない存在だ。国に殉じて死んだ場合は、家族が解放されるようだが……ここ何日かのザカリアの態度では、ありえないだろう」

「だったら力づくで取り返せば良いじゃねえか」

「それができれば苦労しない! ティサーク国の貴族の大半が魔法使いだ。私たちのような騎士が集まっても、勝てないのだ!」


 やる前から心が折れている青年に、デライトは嘆息した。


「そんな状況で、よく連れてきた貴族を殺せなんて言ったな? そっちのほうが報復される恐れがあるだろうに」

「実を言うと、クーデター組織がザカリアを殺せば家族を奪い返してくれると言っているんだ」

「信用できるのか、それ?」

「わからない! 私たちには、もうなにもわからないんだ!」


 泣き始める青年にどうしたものかと、デライトは悩む。

 そんな時だった。


「やはり反逆を企んでいたのか! ザカリア様に命じられて見張っていた甲斐があったものだ!」


 魔法使いの中から、ひとり健康的な男が前にできていた。


「ま、そうなるよな」


 そのザカリアという使者がどんな男か知らないが、悪さをしている連中が、無理やり集めて言うことを聞かせている人間を信用するわけがない。

 見張りはいるだろうし、現在のように裏切ったら殺せくらいは言っているだろうと予想済みだ。


「あ、ああ、そんな」


 絶望を貼り付けている青年の肩を叩き、怒りに震える魔法使いにデライトは足を進めた。


「てめぇはなにもんだ?」

「私は、ティサーク国次期宮廷魔法使いのローモンだ!」

「……は? 次期宮廷魔法使いってなんだよ?」


 次期国王、次期当主、なら理解が及ぶのだが、次期宮廷魔法使いなど聞いたことはない。


「今回の作戦を成功させた暁に、宮廷魔法使いとなる未来が確定しているのだ!」

「正式に宮廷魔法使いじゃねえから次期とつけていることを真面目だと褒めるべきか、良い年をして宮廷魔法使いになれなかった分際がコネを使って喜んでいることを嘆くべきか……ま、俺も人のことは言えんがな」


 見た目、三十ほどの男が今まで宮廷魔法使いでなかった以上、もともと素質がないのだろう。

 ただ、宮廷魔法使いが必ずしも強いわけではなく、実力があるからといって必ず宮廷魔法使いになるわけでもない。

 スカイ王国にも宮廷魔法使いにふさわしい人材はいるが、変わり者のため断っている奴らがいるのだ。


「宮廷魔法使いねぇ。名誉なことではあるが、上には上がいるからな」


 半年前まで、宮廷魔法使いと王国最強の座を追われて燻っていたデライトだが、サムとの出会いから始まり、今では魔族と魔王と知り合い、鍛えてもらっている。

 自分が井の中の蛙だったことを知るには十分すぎた。

 魔王と関わることなどありえない人生だったが、今はこうして愉快な日々を送らせてもらっている。

 恵まれた環境を与えてくれるきっかけとなったサムには心から感謝していた。


「てめぇを見ていると、かつての俺を見ているようで恥ずかしくてならねぇ。てめぇには残念なことだが、俺は陛下からなにかやらかすようなら戦って良いと言われているんでね。つまらねえことするつもりなら――殺すぞ」

「はっ! 貴様たちのように魔族という脅威がいない土地で生きる魔法使い程度が……魔族と同等に戦える魔法使いである私を殺すなどと愚かな!」


 魔力を解き放つローモンだが、デライトにはさほど脅威に感じない。

 この程度の魔力で魔族と渡り合えるのか疑問に思う。もしかしたら、技術的な面で優れているのかもしれない、と油断はしない。


「てめぇらの国の事情は知らねえが、こっちは迷惑してんだよ。ついでに、ここ最近搾り取られる日々だったんだ、ストレス発散させてもらうぜ!」

「意味がわからぬことを! 私の炎で焼け死ぬがいい! ――竜の炎!」


 ローモンから放たれた炎がくねくねと動きながらデライトに襲いかかる。

 だが、デライトは想像していた以上に、ローモンの魔法が大したことないため大きく嘆息した。


「……なんでくねらせんだよ、直線で撃てよ。あと、この程度の火力で竜の名をつけるんじゃねぇええええええええええええええええええええええええええええええ」


 竜のブレス、攻撃を受けて死にそうな目に遭い修行をしてもらった身としては、この程度の炎で竜を名乗るのはおこがましいほどこの上なかった。

 怒りに任せて炎を撃つ。

 ただ魔力を高めて炎として放っただけの一撃だ。

 しかし、その一撃は炎の渦となりローモンを飲み込み、背後の大地を焼いた。


「おっと、力を入れすぎたか。にしても、竜や魔族の修行っていうのはおっかないが効果はあるな。自慢じゃねえが、かつてのウルを超えるほどの火力を手に入れたんだが、もう人間には使えねえだろ、これ」


 塵さえ残さずに消えたローモンに、デライトはやれやれと肩を竦めた。

 デライトの一撃を見ていた青年たちは、信じられないとばかりに絶句しているのだった。





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