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42「デライトの出番です」①




「おう、てめぇら。そっちの国一番の魔法使いは降伏したぞ。人様の国の王都の真前でテント張ってねーで、さっさと帰り支度をしやがれ」


 王都の外に陣を張り、キャンプを始めているティサーク王国の面々に、宮廷魔法使いデライト・シナトラが口悪く言葉を放つ。

 宮廷魔法使いの衣装に身を包み、身なりを整えているが、やつれ気味だ。心なしか、水分が足りていないようで肌がカサカサしているように見える。


「おら、さっさと撤収しろ! 今なら、痛い目を遭わせずに返してやる」

「ま、待ってくれ!」

「あんだよ」


 それなりに地位があるのか、ひとりの騎士が代表してデライトに話しかけてきた。気怠そうに返事をしながら、騎士の言葉を待つ。


「本当に、アーグネス様が貴国に降伏したのか?」

「あー、うん、そうそう、スカイ王国に……なぜか滞在中の怖い魔王様たちに……降伏したぞ」


 さすがに、ぶっ飛ばされて、女体化され、ラッキースケベられ、現在お姉ちゃんになるため教育中とは言えなかった。

 伝えても信じるわけがないし、そもそもデライト自身も部下から伝言を受けたとき、脳が情報を処理できなかったからだ。


「なぜ言葉を濁す? もしや我々を騙すつもりではないのか?」

「うぜぇ。つーか、てめぇらは一応こっちに入国の連絡を入れているが、許可したわけじゃねえんだぞ。クライド陛下が温情をお与えくださっているから五体満足でいられるんだ。だというのに、歯向かうっていうなら――灰にしてやるよ」


 デライトの周囲に陽炎が揺らめいた。

 濃密な魔力が騎士と少し離れて見守っていた面々を覆う。


「――ぐっ」


 軽い魔力酔いをしながら、デライトの本気を察した騎士が、膝をつく。


「……アーグネス様が降伏されたと言うが、ザカリア様たちはどうなった? あのお方のそばには宮廷魔法使いと騎士団長がいるのだぞ」

「そっちは特に聞いてねえが、使者殿のご心配か?」

「そうではない! 奴らが降伏、もしくは殺されていなければ、我々は降伏すらできないのだ!」

「ああ?」


 国に仕える騎士が、使者と宮廷魔法使い、騎士団長を「奴ら」と言い放ったことに違和感を覚える。


「弱みでも握られてんのかよ?」


 冗談まじりにつぶやいたデライトに、騎士は頷く。

 さすがに、「おいおい、マジかよ」と目を見開いてしまう。


「とりあえず話くらいは聞いてやる。降伏しろとは言わないが、剣を地面に置いて、面を見せろ」

「――承知した」


 デライトに言われるまま、騎士が剣を地面に置き、続いて兜を取った。

 彼の行動にどよめきが走るが、他の騎士が続くように武装解除していく。


「まだ若えじゃねえか」


 騎士は、まだ二十代半ばくらいの青年だった。

 くすんだ金髪に、痩せこけた頬。目元には濃い隈ができていた。

 栄養不足と睡眠不足だということが見て取れた。


「……ちっ、ティサーク国ってのは、どうやら良い国じゃないみたいだな」


 他の騎士たちも、青年同様にやつれていた。

 よく見れば、離れている魔法使い風の面々も、顔色が悪く、細い。

 遠い国から遠征してきたことを抜きにしても、様子がおかしかった。


「てめぇら、正規の騎士か?」

「一応は」

「一応って、そんな正規騎士がいるかよ」


 呆れるデライトに、青年は膝をついたまま頭を下げた。


「なんだよそれは?」

「恥を忍んでお願いします。助けてほしい」

「ああ?」

「そちらに伺った使者のザカリアを捕らえ――いや、殺してくれ」


 青年の懇願に、デライトは言葉を失った。





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