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28「犬猿の仲だそうです」①




「ひでー目に遭ったっす!」


 音も立てずにダグラスの部屋に転移してきた準魔王カル・イーラは、服から髪までボロボロとなって満身創痍だった。

 フラフラしながら、勝手に椅子にすわると、突然の転移にも関わらず眉ひとつ動かさないダグラスとジェーンに手を振る。


「ようやくお迎えか? なんならこのまま一泊してもよかったんだが? というか、なんでそんなにボロボロなんだ?」

「一日中変態を相手にしていたら、そりゃこうなりますって!」

「変態? ああ、サムの妻のひとりか」

「それ、サムさんの前で言ったら泣くっすからね!」


 テーブルに置かれていた水を手に取り、喉を鳴らして一気に飲み干す。


「ぷはーっ! 五臓六腑に染み渡るっす!」

「水を酒みたいに飲むなよ」

「本当なら酒が飲みたいくらいっすよ! まったく、あの変態め! 最初こそ、変態魔王を使って兄に会いに行ったそうなんですが、途中でサムさん成分がなくなったと大暴れして。私がクリーさんを運んだからなんとかなったものの、あのままだったら――世界が滅んでいましたよ!」

「世界が滅ぶのかよ」


 大袈裟な物言いのカルに、ダグラスは呆れた声を出した。

 しかし、実際は世界が滅ぶのはさておき、ギュンターが大暴れしたのは事実だ。


 ギュンターが友也の転移魔法をタクシーよろしく使って、イグナーツ公爵領に向かったのがきっかけだった。

 兄と兄嫁と久しぶりに会ったギュンターは、いつもの変態さがなりを潜めて、普通の青年だった。

 しかし、急に「サム成分が足りない!」と叫びだし、大暴れ。

 クリーを召喚し、無事調教を終えたのだが、友也もカルも手痛い目に遭ったのだ。

「あの変態って、本当に人間ですか? いえ、人間だとわかっているんですが、言動と力となによりも変態さがおかしすぎて……人間に思えません」と、泣きそうになっていたのは友也だ。

 ある意味最強の魔王である彼をああも追い詰めることができる人間は、古今東西探してもギュンターくらいだろう。


「こっちは、せっかくダグラスさんがジェーンさんを連れてサムさんとお会いするようなので、変態が邪魔しないように気を使っていたっすよ!」

「気遣いしてくれて悪いな。おかげで、いい喧嘩ができたぜ」


 嬉しそうに拳を握りしめるダグラスに、はぁぁ、とカルがため息をつく。


「サムさんも大変っすね。先日はロボさんが襲撃してくるわ、今日はダグラスさんと喧嘩するわで、あの人に平穏ってないじゃないっすかね!」

「お前さんだって、サムの平穏を崩しているひとりじゃないか。聞いたぞ、出会ってすぐにプロポーズしたらしいじゃないか。行き遅れているのは知っていたが、そんなに焦っていたのなら言ってくれればいい男を紹介したんだがな」

「ダグラスさんの国でいい男って、基本的に脳筋ばっかりじゃないっすか! そういうのはいらないんっすよ! 私みたいな美少女には、サムさんみたいな可愛くて将来性のある男の子がお似合いなんですってば!」


 カルが唾を飛ばして力んでいると、


「―ーふっ」


 と、目を瞑り沈黙を保っていたジェーンが、嘲笑めいた失笑をした。


「あ? なんすか、今の? もしかして、私のこと笑ったっすか?」

「失礼しました。まさか、自分のことを美少女などと自称するような方が実際にいるとは思わず」

「なにか文句でもあるっすか?」

「いいえ、別に。ただ一言だけ言わせていただけるのなら――鏡を見てみろ」


 澄まし顔のジェーンの整った唇から、きつい言葉が飛び出した。

 カルの顔が引きつる。そして、立ち上がり、ジェーンを睨んだ。


「……しまった。こいつらめちゃくちゃ仲が悪いんだった」


 準魔王ジェーン・エイドと準魔王カル・イーラ。

 同じ準魔王であるが――犬猿の仲だった。






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