閑話「陛下とジュラ公爵のお話です」①
スカイ王国国王陛下クライド・アイル・スカイの執務室に、イーディス・ジュラ公爵がいた。
このふたりは互いに王家、公爵家ということもあり、ほぼ家族と言っても過言ではない関係だ。特に、クライドの亡き弟ロイグとイーディスは婚約していたので、本当の意味で家族になっていた未来もあった。
しかし、ロイグの出奔により婚約も破棄され、ジュラ公爵家は王家と対立する貴族派に加わり不仲となった――表向きは。
実際は、肥大化してしまった貴族派貴族たちを監視、管理することがジュラ公爵の役目であった。
すべてを監視、管理することは難しかったが、ジュラ公爵はうまくやっていた。
そんな関係である国王と公爵が、こうして顔を合わせることは滅多にない。
やりとりはすべて信頼できる従者を通じて秘密裏に行ってきたからだ。
では、なぜ、ふたりが堂々と会っているかというと――貴族派がほぼ壊滅状態に陥ったからだった。
「長い間ご苦労だった、ジュラ公爵。――いや、イーディス」
「労いのお言葉を感謝します。ですが、ちょうどいい暇つぶしでした。どこぞの弟君に対する怒りをぶつけることもできましたし」
「う、うむ、ロイグに関しては兄としても申し訳ないと思っている」
ロイグの出奔は王位継承権で揉めないための決断だったので、クライドも責任を感じていた。
まだ若く、父からレプシーの存在を知らされたばかりだったクライドは、周囲の思惑や弟の変化まで気遣うことができなかったのだ。
「冗談ですから、お気になさらず」
公爵の軽口であったことにクライドは安心したように大きく息を吐き出した。
「心臓に悪いのでやめてほしい」
「申し訳ございません。でも、このくらいいいではないですか」
「う、うむ。その話はまた別の機会として、だな。連中はどうしている?」
「かわいそうなほど怯えていますよ。誰もがレロード伯爵の二の舞にはなりたくないのでしょうね。もっとも、アルバート・フレイジュの一件があったのですから、もっと早く気づくべきだったのですけど」
「――違いないな」
貴族派貴族の面々は、ユング・レロード伯爵のたどった末路に心底怯えていたのだ。
観衆の前で凌辱され、原型も残らず殺されたのだ。
貴族だから、スカイ王国の人間だから、最悪のことにはならないだろう、と高を括っていた連中は、今後敵対行動を続ければ待っているのは死だとようやく気付いたようだ。
「私や、イグナーツ公爵、ウォーカー伯爵ならば、貴族派貴族といえど敵対しながらも手心は加えただろう。というよりも、わざわざ命を奪うなど面倒だ」
「しかし、サミュエルは違った」
「うむ。サムは、連中と縁もゆかりもなく、敵対した者を放置することもしない。私たちよりも、よほど思い切りがある」
若さだけでは片付けられない、強さと勢いを持つサムをクライドは羨ましいと思った。
自分がもっとサムのように力があれば、と悩んだことは何度もあるのだ。
「サミュエルの力を直接見た連中は、彼そのものが怖いのでしょう」
「サムはひとりでこの国を滅ぼすことが可能であるしな」
「サミュエルに複数人の妻を娶らせたことは良い判断です。偏りはありますが、少なくともこの国になにかしようとは思わないでしょう」
「誤解するな。ステラ、リーゼ、アリシア、フラン、水樹、花蓮、そして一応加えておくとギュンターの全員が純粋にサムを愛したからの縁だ。私はなにもしておらんよ」
「では、そういうことにしておきましょう。では、本題を。サミュエルのこれからのことです」
ジュラ公爵は、含みのある薄い笑みを浮かべた。
「サムの今後であるか?」
「ええ、あの子が一介の伯爵でいるのはいろいろと問題があるでしょう」
「そのことに関しては私も同感だ。だが、本人が今以上の待遇を望んでいない。どうする?」
「――領地をお与えになるのはいかがでしょうか?」
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