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エピローグ「長い一日が終わりました」





「あー、疲れたぁ」


 急遽、王宮の中庭で始まったパーティーを眺めながら、サムは、ひとり椅子に座って力を抜いていた。

 暑さと疲労から、このまま溶けてしまいそうだ。

 視線を、賑わっているほうに向けると、ロボをアリシアたちが囲んで談笑していた。

 肉をかっ喰らい、酒を豪快に飲むロボに、他の食べ物を用意したり、口周りを拭いてあげたりと甲斐甲斐しい。

 ロボも世話されるのが満更ではないみたいで、嬉しそうだ。


 そんなロボたちの近くでは、ダニエルズ兄弟が魔法少女の姿をしたギュンターに「お兄ちゃんとは」と心構えを熱弁している。

 ギュンターも感心しながら耳を傾けているのだが、彼の首にはいつの間にか頑丈な首輪が巻かれており、繋がる鎖は、夫と同じくなぜか魔法少女の衣装を身に纏ったクリーが握っている。

 サムも、さすがに疲れたのでもう突っ込む気力がない。


 魔王たちも、後から現れたクライドたちと一緒にワインに舌鼓を打っている。

 その場には、祖母ヘイゼルと、サムの親戚に当たるロイグ侯爵もいた。

 宮廷魔法使いのキャサリンは、クリーの母シフォンと、魔法少女について熱く語っている。

 シナトラ夫妻は、第二王妃コーデリアと、第一王子セドリックとなにやら話をしている。彼らの視線の先には、人化した子竜のメルシーが他の姉妹たちと一緒に食事中だ。なにか、メルシーたちが気になるのか、内容は聞こえないのでさっぱりだ。ただ、レイチェル王女だけがクリーの握る首輪を羨ましそうに眺めているのが印象的だった。

 母メラニーとティーリング子爵一家は、ダフネと後から合流したデリックと楽しそうだ。


「なんつーか、平和だ。いろいろありすぎたけど、ようやく平和になった」


 この場に、ウルとレプシーもいたらさぞよかっただろう、と思ってしまうのはきっと傲慢なのだと思う。

 ウルは生き返っただけでも奇跡であり、レプシーは妻子が奪われ憎しみに囚われていたのだからこの場で談笑などできなかっただろう。


「まあ、ロボがアリシアだけじゃなくて、リーゼ、ステラ、水樹、花蓮、フランたちとも仲良くなってくれたのは嬉しいな」


 きっと明日からも平和だが騒がしい日々が続くだろう。

 気になることも残ってはいるものの、しばらく羽休めをしたい。


「あー、未成年だけど、いい加減お酒が飲みたくなってきた!」


 あと少しで成人なのだが、みんなが美味しそうに酒を飲んでいる姿を見ると、思わず、ごくり、と喉がなる。

 ウルが残したウイスキーはどれも一級品らしく、成人が楽しみだった。


「隣に、いいか?」

「ゾーイ?」


 華やかなドレスを身に纏い、お酒を飲んだのか白い頬をほんのり赤く染めたゾーイがいた。


「もちろんだよ、どうぞ」

「うむ。失礼するぞ。サム、お疲れだったな。まさか、あのロボまで倒してしまうとは思わなかった」

「ウルの魔法の知識に、レプシーの魔力や能力で俺の地力が底上げされていたからね。魔王に至っていたこともあるんだけど、ふたりには感謝しているよ」

「そうか。思えば、最初に出会った頃のお前はもういないな。今、戦えば、私が敗北するだろう」

「どうだろうね」


 ロボも速いがゾーイも速い。

 サムは魔力を注ぎ込んだ斬り裂くスキルの攻撃に特化しているのだが、ゾーイは速いのだ。

 ロボほどではなくても、実際に戦ったら対応し切れる自信がない。

 もっとも、戦う理由もないのだが。


「謙遜する必要はない。お前は、魔王だ。レプシー様の後継者だ。胸を張り、誇るといい」

「――ああ」

「そして、今は亡きレプシー様に変わり、サミュエル・シャイトに感謝を」

「ゾーイ?」


 急に、感謝なんてされたので、サムは戸惑った。


「レプシー様はロボを気にかけていた。だが、見てみろ。魔王の中で一番面倒な奴が、楽しそうに笑っている。レプシー様が、ロボを殺さなかった選択は正しかった。それが、嬉しいのだ」


 ゾーイはサムを真っ直ぐ見つめて、感謝の気持ちを口にした。


「――ありがとう」

「どういたしまして」





 こうして、サミュエル・シャイトはウルの全てと、レプシーの力を継承し、魔王に至ったのだった。




9/2(金)コミックウォーカー様にてコミカライズ第2話公開致しました!

そして、9/30に書籍2巻の発売となります!

Amazon様ではご予約始まっておりますので、何卒よろしくお願い致します!

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― 新着の感想 ―
[一言] レプシーの力の他に、大量のトラブルの種と変態も獲得した魔王になっちゃったけどね。
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