46「ダニエルズ兄妹のご挨拶です」①
サムがカルと邂逅し、ジュラ公爵と話をしている頃――レーム・ダニエルズとティナ・ダニエルズは、クラシカルなスーツとドレスに身を包んで、パーティーを楽しんでした。
「まさか俺たちがレプシー兄さんを封じていたスカイ王国の王宮で歓迎パーティーに参加することになるとは、長い時間を生きているといろいろなことが起きるものだな」
「そうだね。あ、このお酒美味しい! レーム兄さんも飲みなよ」
「うむ、いただこう。――ほう、これは素晴らしい」
給仕からワインを受け取り、舌鼓を打つダニエルズ兄妹は、相変わらず兄妹仲が良い。
幾人かふたりに声をかけてきたが、当たり障りのない挨拶を返していく。
「人間だった頃はもちろんだが、魔族になってからもこのような場に呼ばれたことはないので新鮮だな」
「あれ? 何度かあったはずだけど?」
「そうだったか? だが、些末なことだ。サムお兄ちゃんの母国のパーティーに出席したのが初めてだ、ということにしておくと、こう心にくるものがあるだろう?」
「さすがレーム兄さん!」
基本的に準魔王というのは、名前こそ魔族の中では有名だが、ほとんどが異質な存在として距離を置かれている場合が多かった。
カル・イーラとダフネ・ロマックは所在不明であり、ダニエルズ兄妹も異質な存在として接点を持たれることはそうなかった。他にも準魔王はいるが、唯一ゾーイ・ストックウェルだけが魔王ヴィヴィアン・クラクストンズの騎士として働いていたので地域での交流こそあったが、彼女だって人間嫌いで有名だった。
一癖も二癖もある準魔王たちは、ある意味魔王よりも恐ろしい存在と言われていた。
そんな準魔王が、五人もひとりの少年の元に集まり楽しげにしている光景を、大陸西側に住まう魔族たちが見たら、間違いなく目を疑うだろう。
「――む。サムお兄ちゃんの匂いがする」
「え? あ、本当だ。あれ? でも、サムお兄ちゃんはさっき会場から出て行ったよ?」
「わかっている」
くん、とレームは鼻を動かした。
「この香り、濃度、魔力、伝わるママ力からして、サムお兄ちゃんの奥方たちではない。――っ、まさか!」
「もしかして!」
ぐわっ、とダニエルズ兄妹が血走った目を広げて会場の一角を向いた。
近くにいた人が、びくぅっ、と突然の奇行に驚いた様子だが知ったことではない。
「ようやく、ようやくお目にかかることができそうだ!」
「うん! ようやく会えるね!」
ふたりの視線の先には、夫と娘、そして親しい貴族たちと談笑をする――メラニー・ティーリング子爵夫人がいた。
「さあ、ご挨拶の時間だ!」
「ご挨拶だ!」
「俺たちの母になる方だ、無礼がないようにな!」
「うん! あ、兄さん、ネクタイ曲っているよ!」
「おっと、俺としたことが。身嗜みを整え、よし、いざ!」
ワインを飲み干し気合を入れたダニエルズ兄妹は、新たな息子と娘としてメラニーに挨拶すべく、足を進めたのだった。
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