28「弟は疲れてしまったようです」④
マニオンになんとか変態を目指すことはやめるように説き伏せたサムは、「今は身体と心を休めてくれ。また来るよ」と挨拶を交わし、部屋の外に出た。
「マニオンくんはどうでしたか?」
「――重症でした」
サムの一言は、重かった。
まさかマニオンが変態たちを持て余した結果、変態になろうとしていたとは思わなかった。
「話を何度かしていますが、マニオン殿は少々生真面目すぎるきらいがあるようですね」
困った顔をしながらモンドがサムを促し、部屋から離れていく。
しばし歩き、サムとカリアン、モンドの三人は教会の食堂に着いた。
事前に言ってあったのだろう、用意してもらってあるアイスティーとクッキーを三人分受け取り、窓際の席につく。
途中で、カリアンとモンドを慕う神殿関係者たちが挨拶し、次にサムを見て「うわぁっ、夜の魔王だ!」と指を差されたことは大変遺憾である。
「マニオン殿の件ですが、幼少期の話をお聞きしたこともありまして、察するに……元々生真面目な方なのでしょう。お母上の話に懸命に耳を傾ける子供であったようですが、結果的に幼少期の善悪の判断がつかないこともあり凶行を行うことになってしまった。マニオン殿というよりも、お母上の責任の方が大きいと思います。そんな幼少期を送ったからこそ、善であろうとしているように見受けられました」
「善、ですか」
「はい、善です。もちろん、人によって善の意味は違います。私が言いたいのはマニオン殿は善性であろうとしているのでしょうね。だからこそ、恩人であるヴァルレイン殿に対し付き従っています。同時に、この世界と敵対している時には葛藤しているようにもありました。結果的に、ヴァルレイン殿の英断のおかげで戦いは避けることができましたが、きっとマニオン殿としては敵対していた事実は消えていないので罪悪感があるんでしょう」
カリアンがモンドの言葉を引き継いだ。
「ヴァルレイン殿、マニオンくん、両者とも罪悪感、もしくは気まずさを抱いていたようですので、エヴァンジェリン様が神殿の仕事を手伝わせるという考えは賛成だったのです。彼らを相手にしていれば、難しく考えることはないでしょうから」
「でしょうね!」
「ですが、マニオンくんの場合は少々相性が悪かったですね。ヴァルレイン殿のように、相談者を少々雑に扱ったとしても平気だ、と絶妙なラインを読んであしらい方を覚えることもできる方がいる一方で、マニオンくんのようにきちんと向き合おうとして、限界を迎えてしまった感じです」
「……俺さ、マニオンは頑張った方だと思うよ」
「そうですね。エヴァンジェリン様も少々悪ノリしてしまい、癖のある方々をわざとふたりのもとへ送り込みましたので……」
「むしろ、マニオンを追い込むレベルの変態たちを毎日相手にしているエヴァンジェリンたちが心配なんだけど」
「ははは、エヴァンジェリン様は口では文句が多い方ですが、生真面目に向き合ってしまう性格でありながら、柔軟性も持ち合わせているので大丈夫ですよ」
「その代わりに、相談者が増えていくのですが……」
「うわぁ」
もしかしたらエヴァンジェリンもマニオンのように限界を迎えていれば、また違っていたのかもしれない。
「時間を作りますので、サムはエヴァンジェリン様とたまには遊んであげてください」
「話をしたり、お茶を飲むくらいでいいのです。息抜きに、どうか」
「頼まれるまでもなく、エヴァンジェリンのためなら喜んで」
幸いにも、神との戦いがひとまず終わって時間はある、忙しいエヴァンジェリンでもあるが時間を見つけて会いにこよう。
マニオンのことも心配ではなるし、ちょうどいい。
(――でも、変態と鉢合わせたら怖いなぁ)
シリアス先輩「お前の方が怖いわ! ベッドの魔王め!」




