プロローグ「因縁です」
「ねえ、ねえ、変態大魔王」
「なんですか、綾音っちくん」
アルフレッド・ポーンが神の使徒として現れると、日比谷綾音は不思議そうな顔をした。
魔王遠藤友也は返事をしながら、綾音に執着していた人間の登場に動揺しているのかと考える。
「――あの少年は誰に因縁があるのかしら?」
「ちょ!?」
「え? 何よ、その反応?」
「いえ、逆に僕が綾音っちくんの反応にびっくりなんですけど!」
「え? そうなの?」
「かつて綾音っちくんの仲間で、あなたを復活させようと長々と暗躍していた人間でしょ! カリアンお父様の奥様、サムのお祖母様を生贄にしただけではなく、多くの悪事に関わっていた過去の亡霊です」
「あー。いたわね。昔のことは、正直、覚えていないのよね。こんな奴いたかしらって。こいつのせいで私はウルリーケたちに命を狙われたのよ! ぶっ殺してやるわ!」
「覚えていなかったくせによく言いますね……」
「そもそも! 私をあの忌々しい封印から解き放つには、まず私の器となるべき人間を探すことなんだけど、それだって私が憑依するだけであって完全な解放じゃないの。どちらかといったら、その憑依した肉体を使って封印を物理的にぶっ壊そうとしていたんだから。もしくは、封印をしたやつを殺すかのどちらかよね」
「うわぁ」
「あのね、何もないところに永遠の封印されてみなさいよ。誰だって封印をどうにかすることしか考えなくなるわよ!」
「それは申し訳ないです!」
「あんただっていずれラッキースケベのしすぎで封印されるんでしょうから、気をつけなさい!」
「そんな馬鹿な!? 千年も許されてきたのに!」
「許されていないんじゃない? 神々との戦いが終わったら、勇者がふらりと現れてあんたを倒して封印するのよ」
「ひどい!」
実際問題、友也はラッキースケベを許されてはいない。
スカイ王国では概ね「ラッキースケベ大魔王だから仕方がない」と受け入れられているが、他の国ではそうはいかない。
許されていなくても、魔王である友也に何かできる者はそうそういないのだ。
綾音の言葉通り、いずれ友也を倒す勇者が出てくるかもしれない。
「やれやれよね。つまりあのドヤ顔をサムに向けている子は私に因縁があるから、私が殺さないといけないわけね」
「……待ってください」
「なによ?」
「何かしら因縁がある者が敵として現れるというのなら、僕の相手は……今までラッキースケベしてきた相手ということですか!?」
「数の暴力で殺されそうね! その場合は土下座しなさいよ!」
綾音と友也がくだらない話をしている時、カリアン・ショーンがゆっくりとアルフレッド・ポーンに向かい足を進めていた。




