51「ウルの絶叫です」
ウルリーケ・ウォーカー・ファレルは、浴室で念入りに身体を洗っていた。
「……私はビビってなどいない。サムのサムが大きかろうと、いずれ子供を産むことを考えれば裂けるなんてことはないだろうし、大したことはないはずだ」
自分に言い聞かせながら、指先から頭のてっぺんまで洗うことすでに三回。
「私は決めたではないか、二度と後悔はしない、と」
ウルはサミュエル・シャイトのことを弟子として男性として心から愛している。
一度、死んでもその思いは消えることはない。
また再会できたことでむしろ、想いは強くなっている。
しかし、ウルは魔法や戦いは長けていても恋愛に関してはまるで駄目だ。
苦手というか、初心である。
守護霊ギュンター・イグナーツが幼少期からいたせいで、同年代の異性とまともに触れ合ったことはない。
唯一の異性にギュンターがいたが、ウルは彼のことを「変態」としか思っていなかったので、扱いはとても雑であった。
師匠であるデライトは今も尊敬しているが、間違っても異性ではない。
そんなわけで、恋愛面ではとことん駄目だった。
しかし、ウルリーケ・ウォーカー・ファレルは大の負けず嫌いである。
サムとの関係を前向きに進めようとしているゾーイ、オフェーリア。ひとりだけ関係を一歩進めてドヤ顔をしている綾音に負けたくはないのだ。
良くも悪くもウルは直情的な性格をしている。
そんな彼女が考えるのは、――夜這いだった。
きっと今頃、サムたちは夕食をとっているだろう。
だが、ウルはいらない。
できれば、ほっそりとした自分を見て欲しいと思ってしまう。
一食抜いたくらいで変わるものか、と思うだろうが、気分の問題だ。
「……ウル、兄として言わせてもらうがサムは夜の魔王にしてベッドの魔王だ。たくさんたべて体力気力をしっかりして挑まないと負けてしまうよ?」
と、心配そうに声をかけてきたギュンターを張り倒し、ウルは念入りに身体を洗うのだ。
「自分で言うのもなんだが、なかなかのスタイルだと思うぞ。……我が家の女性陣はみんなぺったんこだが、スレンダーで無駄な肉はない。むしろ、あれもこれも肉付きしている女よりサムの好みにあっているだろう」
ウルは気づいていないが、むしろ、サムの異性への好みはウルの影響を受けている。
「……スタイル的にはリーゼよりも私の方が良いからな。サムも満足するだろう!」
リーゼが聞いていたら、全力の姉妹喧嘩が始まりそうなことを平然と言いながら、ウルは自身を昂らせた。
「――覚悟は決まった。身体の隅々まで綺麗にした。変態はクリーが確保してくれるから邪魔が入ることはないだろう。父上、母上、ウルリーケは今日、大人になります」
むんっ、と拳を握り締めた時だった。
――世界が揺れた。
「――っ」
何が起きたのかすぐにわかった。
――神々の襲来だ。
ウルにとって念願の神殺しの時間がやってきたのだ。
「だからって、このタイミングで来るのはなんか違うだろぉおおおおおおおおおおおおおおお! 私の覚悟を返せぇえええええええええええええええええええ!」




