18「戦いの懸念です」②
「ギュンターよ。サムも恥ずかしがり屋さんである。ご褒美の要求はあとでこっそりやるとよいのである」
「――っ、僕としたことが。サム、すまなかったね。今宵、君のベッドの上で語り明かそうじゃないか」
「……おーい、誰かこのふたりをどうにかしてくれませんかー! このままだと神々と戦う前に、俺がこの場で大暴れしちゃいそうなんですけどー!」
クライドとギュンターが揃うと、話が進まない。
頭痛を覚えるサムだったが、ペースに乗せられると今以上にぐだぐだになってしまうので我慢した。
「サムとギュンターの秘密のご褒美に関しては良しとしておくのである。問題は、戦いの場所であるな。さすがに、王都での戦いはさせるわけにはいかぬのである」
「しかし、陛下が世界の楔である以上、気付かれてしまったら神々もじっとしていないでしょう」
カリアンが神妙な顔をした。
この世界で暮らしているわけではない神界の神々が、こちらの世界に配慮して戦ってくれるとは思わない。
愛情と戦いの女神ヴァルレインは、この世界の神となるべく気遣いはあるだろう。だが、戦神ディーオドールや、楔を破壊することだけを目的にしている神々はこの世界の人など関係ないと暴れるはずだ。
仮に、サムが神々の立場であれば、クライドという目標が王宮にいるのならなんの躊躇いもなく居場所ごと攻撃をしかけるだろう。
その結果、どれだけの被害が出ても、目的さえ果たせばよいのなら構わないはずだ。
神々にとって、勝利条件は楔を破壊して、ディーオドールとヴァルレインをこの世界に完璧な状態で降臨させることなのだから。
「神との戦いがどれだけの被害を与えるのかわからないというのも問題だな」
ゾーイが腕を組み、唸った。
「そうですね。実際問題として、格上の相手に僕たちが民を守りながら戦うこと言うことは不利以外の何者でもありません。正直なことを言うならば、民を守るという余裕すらないでしょうね」
「……すでに民は神々のことを知っているのであれば、民には逃げてもらうことが一番でしょうね」
カリアンの言葉に、誰もが頷く。
貴族たちがやる気満々であっても、民がエヴァンジェリンのために怒っていたとしても、神々との戦いに巻き込んでしまうことは望ましくない。
言い方は悪いが、足手纏いになる。
ならば、逃げてもらった方が戦うには間違いなく楽だ。
「スノーデン王国はいかがですか?」
カリアンがクライドに尋ねた。
しかし、渋い顔をが返ってくる。
「スノデーン王国王都跡地は、カリアン温泉が沸いており今後のスノーデン王国の収入源になる可能性があるゆえに土地を台無しにしたくはない」
「……カリアン温泉って、変えていただける予定はないのでしょうか。いえ、今は、いいでしょう。ええ、今はやめておきましょう」
カリアンが掘り当てた温泉はスノーデン王国の貴重な収入源として話を進めている。
スノーデン王国王都の跡地が広くても、現状維持をしたいというのが正直なところだ。
「シューレン魔法国はグライン殿が再起している最中なので邪魔をするわけにはいきませんし、やはりスカイ王国のどこかで戦うしかないでしょうね」
はっきり言って神々との戦いがどれほどの規模になるのかわからない。
都市をひとつ破壊してしまうような攻防になるのか、それとも狭い範囲で可決してくれるのか。
こればかりは戦ってみないとわからない。
何よりも、場所を用意したからといって神々がこちらの思うように動いてくれる保証もないのだ。
「……最悪の場合、王都での戦いを想定しておくのである。まずは、命を守ることを優先しよう。家屋や財産が失われた場合は、できる限り王宮で保証をする。このくらいが限界であろうな」
クライドは考えた末に、王都が犠牲になることも覚悟するしかないと決意した。
もしかすると、民が失われるかもしれない、人の住めなくなるような土地になってしまう可能性だってある。
――それでも、世界が滅びるよりはずっとマシだ。ずっとずっとマシだった。
「――そして、最悪の事態を想定したからこそ、世界の意思殿と我らの女神エヴァンジェリン様のために祭りを開くことはどうであろうか?」
「この話の流れで祭りになるのですか!?」




