エピローグ2「世界の意思とまた会いました」①
サミュエル・シャイトの長女シャルロッテが生まれてから早いもので一ヶ月の時間が経った。
慌ただしくも賑やかな日々だったので、あっという間だった。
二週間遅れて生まれてきた次女サマンサたちはまだだが、シャルロッテは少しずつ周囲のものを認識できているように感じる。
リーゼの顔を興味深そうに触ったり、サムの頬をてしてし叩いたり、メルシーの指を掴んで離さなかったりと好奇心旺盛に見えた。
夫婦関係も良好だ。子供が生まれたことでより絆が深まったと思う。
一時は調子を崩していたリーゼはすっかり回復し、最近では剣を握って鈍った身体を鍛え直している。
剣士であったリーゼは、一年の間にサムや父ジョナサンをはじめ様々な人たちが強くなっていることに悔しさを覚えているようだった。
彼女はサムと結婚し、子を産み、幸せであるが、同時に隣で支えたかったとも思っているようだ。
彼女の気持ちにサムはただ感謝するしかない。
このまま平和な時間がずっと続けばいいと思った。
神との戦いなどもしかしたら起きないのではないかとも思えていた夜、サムは夢の中で世界の意思に呼ばれた。
「――久しいな、サミュエル・シャイト」
「どうも、お久しぶりです、世界さん」
星空の輝く草原で、白いテーブルと椅子だけしかない世界の中でサムが世界の意思に挨拶をしていた。
世界の意思が軽く頷くと、次の瞬間、サムと一緒に椅子に座っていた。
まるで時間が省略されたような感覚が起きるが、気にしないことにした。
「まずは、祝いの言葉を贈りたい。無事に子供たちが生まれたようでなによりだ」
「ありがとうございます!」
「世界の意思として、子供たちを祝福しておいた」
「…………ありがとう、ございます?」
世界の祝福がどのような効果をもたらすのかわからないので心配はあったが、純粋な行為であるとわかったので、お礼を言う。
するとサムのぎこちなさで察したのだろう、世界の意思がフォローをしてくれた。
「案ずることはない。日比谷白雪をはじめ魔王たちのように特別な変化が起きるわけではない。強いて言うのであれば、大病を患わないなど健康面での効果だ」
「それは、本当にありがとうございますっ!」
「気にすることはない。私もいずれサムの妻になる身だ。言わば、シャルロッテたちは家族だ」
「…………ソウデスネー」
サムもさすがに学んだ。
世界の意思の中では決定事項として話が進んでいるのだ。
ならば、ここでどうこう言っても何も変わらない。
彼女を不機嫌にしてもよいことはないので、流すことにした。
大変申し訳ないが、世界の意思がどうやってサムの嫁になるためにやってくるのか興味がないといえば嘘になる。
「ただし、何をしても病気にならないわけではない。あくまでも元気であるというだけだ。例えば、雪が吹雪く日に全裸で雪合戦をしようものなら風邪だけではすまないぞ」
「そんなことする人いる!?」
「…………イグナーツ公爵家で、サムの妻であるギュンターが家人と楽しそうにやっていた」
「例外中の例外を例にされても困りますぅ!」
「とにかく祝福はしたが、私も完全な存在ではない。気をつけて育ててあげるといい」
「それは、はい。もちろんです」
健康面で祝福してくれたことだけでもありがたい。
どの世界でも、病気は最も容易く命を奪うことがある。
娘たちの脅威がひとつでも減ったことに、親として感謝するしかない。
「リーゼも元気になって何よりだ」
「おかげさまで」
「だが、感心しない。いくら久しぶりとはいえ、さすがに昨晩はやりすぎだ」
「――覗くのやめてもらっていいですか!? プライベートって言葉を知っています!?」




