エピローグ「神界の動きです」①
――神界。
愛情と戦いの女神ヴァルレインはゆっくりと目を開けた。
薄手の衣を纏い、ただぼうっと目を開けたまま動かないのは単に寝起きが悪いからだ。
「――ふむ」
まどろみながら、停止していた思考が動く。
同時に、情報が入ってきた。
「おや、我が妹君は万を超える死を迎えても、完全に死ぬことができぬようだ。哀れな。数万回殺されれば、どこかで奇跡が起きると思うのでまだまだ頑張らなくてはならぬ。だが、もういい」
もう仕返しはしたので、自分を殺した妹には興味がない。
情報を遮断していなかったので、生まれ育った世界の情報が流れてきたが、今後は二度と来ることがないように情報を遮断した。
「体調は、九割か。十割というのは贅沢だな。もともと私が十割の力を発揮したことはない」
ヴァルレインは女神になった存在であるが、生まれながらに神であるため、大きく強くなったわけではない。
女神としての権能、また、性能面では上昇し、できることの幅が増えたが、単純な戦闘力は格別強くなっていない。
戦神ディーオドールのように、戦うことしか脳がない蛮族とは違う。
彼は神としての力を全て戦いに注いでいる。
呆れ、見かねた管理心が他の神を戦神のサポートにおいているが、戦神の恐ろしいところは、その気になれば誰にも頼らずとも神としてなんでもできてしまうことだ。ただ、する気がまったくない、のだ。
神としての格は、管理神からさほど離れていない。
ヴァルレインも同格の神であり、他にも同じ神々はいるが、交流があり会話をし、戦いにまで発展するのは管理する世界が近いからだろう。
神々は他にもいるが、ヴァルレインは存在を知りながら一度も会ったことがない神もいる。
真面目に世界のために頭を悩ませている者、転生者を呼んで世界を舞台に遊ぶもの、最低限の興味すらない者など様々だ。
それらの神にすると、ヴァルレインもディーオドールも、そして管理神も「入れ込みすぎ」なのだろう。もしくは「過干渉」とも言える。
ヴァルレインは身体を起こすとベッドから起き上がる。
ずっと眠っていたので、身体が硬い。
軽く身体を動かしながら、戦神ディーオドールの動きを探る。
「ふむ。まだ神界にいるのだな。存外、のんびりな男だ」
戦神ディーオドールはサミュエル・シャイトと戦い殺し、世界を滅ぼすことだ。
なぜそのような攻撃魔法を持つに至ったのか不明だが、大した問題ではない。
神々などそんなものだ。
愛情と戦いの女神ヴァルレインの目的は、サムたちが住まう世界の「神」になることだ。
干渉するつもりはない。
ただ拒む世界の意思を排除する必要があり、すでに神として君臨している愛の女神エヴァンジェリン・アラヒーを対処しなければならない。
会話で済むのであれば、他の世界を用意しよう。交渉決裂であれば、戦い、殺すしかない。
まだ成り立ての神であれば、さほど問題ではないだろう。
――問題はサミュエル・シャイトだった。




