106「おばあちゃんは凄いです」
「はぁ。あなたには申し訳ないと思っています。私はあなたと違って感性がまともですので、ばぶばぶに付き合い続けることはできませんでした。国王が魔王レプシー様の墓守であることも、知りませんでしたのでその重圧に苦しんでいることも、です」
「……ヘイゼルちん」
(……おばあちゃんの言葉を否定するわけじゃないんだけど、レプシーという恐ろしい存在がいたことを知っていたとしても別にばぶばぶする必要はなかったんじゃないかなぁ。律儀に付き合う必要もないと思うんだけどなぁ)
夫婦の形は様々なので、サムは心でそんなことを考えながらあえて口にするようなことはしない。
「私も私で、今は楽しく生活をさせていただいています」
「ロイグちんがひょっこり戻ってきまちたからね」
「ええ。私は、ロイグが亡くなってしまったことはもちろん悲しかったのですが、それ以上に、あの子が何も私に言ってくれずに国を出てしまったことが悲しく、悔しく、不甲斐なかったのです。しかし、ロイグと再会し、話ができました。あの子はあの子なりにスカイ王国のことを考えた上での行動でした」
「ちょう、でちゅね。ボクちんもパパ上としてもっと気にかけてあげることができればと思っていまちた」
「私はあの子の当時の考えを聞き、納得はできませんでしたが、理解はしました。あの子はあの子でスカイ王家という牢獄から解き放たれ、自由に生きた。愛する人を見つけて、サムが生まれた。それで十分です」
「……イーディスちんにはすまないことをしてちまいまちたけどね」
「はい。……まあ、その償いは現在進行形でロイグ自身がしているので、よしとしておきましょう」
「しょう、でちゅね」
ロイグ・アイル・スカイのかつての婚約者であるイーディス・ジュラ公爵によって自宅で「おもてなし」される日々だ。
近くを通る人や、使用人たちからは「毎晩汚い悲鳴が響いて、公爵様もお元気そうです」という証言がある。
サムは極力、ジュラ公爵家に近づかないようにしている。
「ロイグはロイグで今も充実した日々を送っているので問題ありません」
「……問題ありありだと思いまちゅが」
「孫が増えることを楽しみにしているのです!」
「ちょ、ちょうでちゅね」
(その場合、俺の弟か妹が増えるのか…………考えないにしよう)
「問題はあなたですよ、ロバート。ステファニーを正式に妻とし、イェットを子としなさい」
「ばぶ!?」
「正式に、あなたの家族とするのです」
ロバートはもちろんだが、静かにことの成り行きを見守っていたサムと友也も驚いた顔をした。
まさか、愛人を絶対に認めないというならいざ知らず、正式に妻と子としなさいと言う正妻がいるとは思わなかった。
(……さすがヘイゼルおばあちゃん。度量がスカイ王国級だ)
サムは心の中で拍手喝采した。




