105「友也のピンチかもしれません」②
「ま、なんでちゅかね。ラッキーちゅけべから始まる結婚生活もあってもよいと思いまちゅよ」
「……ははは、とりあえずマクナマラおばさんと相談しなよ。うん。残念だけど、こういう話は俺たちじゃまったく役に立たないからさ」
「わかり、ました。最近、ラッキースケベって謝罪に行くことを繰り返していて、弟子のはずのアマリアくんが、しょうがない人だなって顔をして一緒に謝りについてきてくれるようになったんです。――せめてラッキースケベを極めることができれば!」
友也は、ラッキースケベさえ極めることができれば、望まぬラッキースケベが起きないらしい。
望んでやったらただのスケベの気がするが、余計なことは言わないことにした。
(むしろ、今までラッキースケベ被害者が責任とってと本気で言わなかったことが奇跡というかなんといか)
今まで被害者と揉めたことはあるようだが、丁寧な謝罪と金で許してもらったことはあるらしい。
「サム、これが魔王の業です」
「……かっこよく言おうとしても、ただのラッキースケベの責任問題だからね」
「僕の意思でやっているわけじゃないのに!」
顔を覆って泣き出した友也に、なんともいえない雰囲気になる。
ヘイゼルですら「……わざとやっているわけではなかったのですね」と友也のラッキースケベを誤解していたらしい。
わざとだったら、友也はただのスケベ野郎だ。
「個人的なことを言わせていただきますと、魔王である友也様がスカイ王国の誰かと縁を持つことはよいことだと思います」
ヘイゼルの口調的に無理強いするつもりはないようだ。
「いやらしいことをされた令嬢が哀れではありますが、ええ、無理強いはしません。ええ、私では魔王様に何かを言っても強制はできませんので」
「……い、嫌な言い方をしないでください! とりあえずお会いして誠心誠意謝罪をさせていただきます!」
罪悪感を覚えた友也がヘイゼルに屈した。
サムは友也に手を合わせた。
「サムも、友也様も貴重なお時間をどうもありがとうございました。ですが、もう少しお付き合いください。ここからが、本題です」
サムは友也と顔を見合わせた。
まだ何かあるのか、と。
「――ロバート」
「うみゅ?」
「いい年をした男が可愛い声を出さないでください、気色が悪い」
「へ、ヘイゼルちん! 可愛い赤ちゃんに向かって酷いでちゅ!」
「文句を言いたいのはこちらのほうです。引退し、隠居したのは構いません。幼馴染みの孫娘に手を出して子供を産ませたのも、些細なことです」
(――些細じゃないよね?)
(些細じゃないですよね?)
サムと友也は、目で通じ合った。
残念だが、普通の感性であれば、いくら王族とは言え幼馴染みの孫娘との間に子供を作ったことを「些細」で流すことはできない。
変態性はなくとも、ヘイゼルの豪胆さはスカイ王国級だった。




