104「友也のピンチかもしれません」①
スカイ王国には個性的な貴族、民が多い。
特に魔王との交流が始まってからは個性的な者が増えただろう。
さらに、女神エヴァンジェリンの降臨によって個性的な人間が国内外から集まってきたのは言うまでもない。
――そんなスカイ王国だからこそ、魔王遠藤友也のラッキースケベに関しても、民の感想は「あ、いつものね」という感じだ。
驚いていたのは最初くらいだろう。
気づけば、魔王遠藤友也のラッキースケベは「いつものこと」であり、今では子どもたちからもラッキースケベ大魔王と人気になっている。
友也としても、魔族たちにはこれでもかと警戒されていていたというのに、スカイ王国民はおおらかなのか変なのか、嬉しいようで悩ましいと感じられていた。
スカイ王国民にとって、賢王クライド・アイル・スカイの若かりし頃の日々や、彼の弟でありわからせ殿下と名高いロイグ・アイル・スカイの言動に鍛えられているのでちょっとくらい「おいた」してしまう友也は微笑ましく映るらしい。
むしろ、「かかってこい!」と準備している猛者もいるので恐ろしい国だ。
――しかし、スカイ王国民の中でも「常識的な人間」も一定数いるのだ。
残念ながらそういう「常識人」がラッキースケベをされることを嫌がる。
体質だから仕方がない、仕返しに引っ叩いたからよしとする、と言ってくれる者が大半だが、中には傷つく者もいるのだ。
サミュエル・シャイトの叔母マクナマラ・ショーンが「常識人」かどうかはさておくとして、彼女もかつてラッキースケベ被害に遭った経験を持つ女性だ。
復讐するために長い時間を費やし、再び友也と相対したマクナマラだったが、甥のサムの存在、生き別れの妹メラニーとの再会などを挟んだおかげでなんとか大事にはならなかった。
その後、紆余曲折あり、ふたりが婚約すると言う別の意味で大事になるとは思わなかったが、一部の被害者は「――責任を撮ってもらえるの!?」とガッツポーズをとったとか、とらなかったとか。
そして、大小の被害を受けた人間が集まり「被害者の会」を設立したという。
ただ、友也に本気で責任を取らせようというよりも、被害者同士で文句や悪口を言うのがメインだったようだが、ひとりだけその中に貴族のご令嬢がいたようだ。
グレン侯爵家の縁戚であり、婚約者がいる少女のようだ。
「はわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ」
ざっと事情をヘイゼルから聞かされた友也がどうしようと泣きそうになっている。
いつか責任をとってと被害者から言われる日が来ることは覚悟していた。
今までになかったわけではないが、金で解決してきた。きちんと話し合い、真摯に謝罪し、なんなら子どもや孫を魔王として守ると約束したこともあった。
スカイ王国では、被害者もアグレッシブに再戦を挑んでくる場合もあったので少し気を抜いていたかも知れない。
「……はい! おばあちゃん、質問です!」
「なんでしょうか?」
「その被害者の方は?」
「今、お名前を言うのは不都合がありますので控えますが、良いお嬢さんです。かつてはイグナーツ公爵家で行儀見習いをしてから王宮で働く方でした」
「今は?」
「女神エヴァンジェリン様の神殿でシスター見習いとして働いています」
「……おっと」
「ちなみに、綾音殿とも親しくしているようです」
友也の顔が青くなる。
無理もない。
最悪の場合、エヴァンジェリンと綾音が揃って敵になる可能性があるのだから。




