102「祖母と祖父と魔王とサムです」④
「ちょっと納得してどうするの!?」
サムも「スカイ王国だから」と言われてしまうと納得してしまうのだが、まだ見ぬ子供の将来をここで決めてしまうのは貴族としてはよくある話なのだろうが、サムとしてはなかなか頷くことはできない。
「おばあちゃん、いくらなんでも性急すぎますよ。綾音さんとはまだ婚約しかしていませんし、子供だってできていないんですから」
「……そう、ですね。我が一族の悲願が叶って浮かれすぎていたようです。申し訳ありません」
サムはほっとした。
祖母ヘイゼルが遠い先祖から託された手紙を綾音に託すことができたことを喜んでいることはわかった。
先祖である綾音が現代に蘇っていることと、そんな彼女が孫のサムと婚約している事実は奇跡のように思えたのかもしれない。
気持ちがわからないわけではない。
しかし、気が早い。
「わかってくれてよかったです」
「……では、子供ができたらその時に」
にっこり微笑む祖母は諦めていなかった。
「ははは、善処します」
「きちんとした相手がいなければ無理強いしませんし、将来的には本人の意思を重要視すると約束します。ここだけの話、先祖の願いは綾音様とまた家族になりたいというものです。本人たちは、綾音殿へのお手紙で転生する気満々のようですが……そう簡単に転生できるものでもありませんし、仮にできたとしても都合よく綾音殿の子供に生まれることはできないでしょう。なので、つい子孫としてできることを考えてしまうのです」
正直、綾音の子供たちが残した手紙の内容が気になる。
友也がこの世界に転生するよりももっと以前の時代の出来事のようだが、話をしたら気があったかもしれないと思う。
「サムと綾音殿に関しては追々ということで……魔王遠藤友也様」
「はい」
「あなたがサムの叔母にあたるマクナマラ・ショーン殿とご婚約していることは承知しています。あなたの従者であったふたりとも」
「ええ、まあ。ありがたいことに、こんな僕でもよいと言ってくださる女性と出会い、僕も覚悟を決めれたと言いますか、はい」
「……なるほど。とても良い出会いだったようですね。そんな友也様にお知らせがあります」
「お知らせ、ですか?」
「スカイ王国貴族を妻のひとりに加えるつもりはありませんか?」
ヘイゼルの言葉に、友也はもちろん、サムとロバートもぎょっとする。
「……冗談ですよね?」
「実を言うと、クライドは気にしていないのですが、貴族たちの中には魔王である友也様をよろしく思っていない者もいるのです」
「まあ、覚悟はしていました」
「あちらこちらにラッキースケベをする魔王を誰が止められるのか、と」
「まあ、覚悟はしていましたっ!」
「そこで……というと友也様に申し訳ないと思いますが、スカイ王国貴族からひとり女性を紹介したいのですが……」
確かに、ラッキースケベを抜きにしても、魔王の力は恐ろしい。
友也はスカイ王国民となっており、国の防衛を担う貴族派使いにも選ばれ、受け入れた。
しかし、この国とは縁がない。
実際は、サムや、この国で保護されている幼馴染み赤金茜、同郷の友人にして聖女霧島薫子、古き親友レプシー・ダニエルズとその家族がいるので縁がないわけではないのだが、なかなかそれらをわかれというのは難しい話だ。
「言いたいことは理解しましたが、僕は受け入れることができないでしょう」
「そうですか、残念です」
ふう、とヘイゼルが息を深く吐く。
ほっとした友也だったが、穏やかな雰囲気が消え空気が張り詰める。
「ならば言い方を変えましょう。あなたにラッキースケベをされたとある令嬢が責任をとって欲しいとおっしゃっています」
「――ついにきてしまった! この時が!」
(あー、今までは気を使って建前を言ってくれていただけなのかぁ)




