101「祖母と祖父と魔王とサムです」③
慌てるサムに、祖父祖母ヘイゼルは静かに話を続ける。
「綾音殿の子孫としてグレン侯爵家はぜひ縁を繋ぎたいのです。もちろん、サムともですよ」
「……そう言われましても」
「すでに子供ができる行為をしていると聞いています」
「どなたからですか!?」
「……伯爵家で働く者であって王族からの命令には逆らえないとだけ言っておきましょう」
「権力すごい!」
権力を振り翳さずとも、伯爵家の使用人はきちんと教育されている。
話してもいい事と、何があっても話してはいけない事の区別はできているはずだ。
(俺と綾音さんのあれこれは、話さないで欲しかったんだけどなぁ)
「補足すると、聞くまでもありませんでしたけどね」
「それは、どういう?」
「……元気なことは何よりですが、ほどほどにとだけ言っておきます」
サムは祖母の言葉の意味が理解できず首を傾げた。
しかし、友也は何かを察したように「あー」と言い、祖父ロバートが「若いでちゅね」と慈しんだ目でサムを見てくる。
本当に意味がわからなかった。
「ごほん。もともとグレン侯爵家は、私の実家です。できればサムと縁を繋いで欲しかったのですが、ちょうど良い年頃の個性的な女性がいませんでした」
「……あの、別に、紹介して欲しかったわけでは決してないんですが、個性的な女性が好みというわけではないのですけど?」
「あなたの周囲の女性たちは例外なく個性的ですのでご安心を」
「安心の意味ー!」
「他ならぬあなたが一番個性的なのですから、普通の女性を送り込んでも……無駄かと思いました」
「俺のことなんだと思っています!?」
「愉快な男性がいたので女神エヴァンジェリン様にお願いし、女体化させてもらって送り込もうと企んでいたのですが」
「企まないでください!」
「これ以上、ダーリンの嫁を増やそうとするな、とお怒りになって女体化していただけませんでした」
「エヴァンジェリンさん、ナイス! ファインプレーだよ!」
その男性のことを知らないが、家の事情で女体化させられてしまうことはかわいそうだ。
せめて自分の意思で選ばせてあげて欲しい。
どちらに転んでも、サムはその方とどうこうなるつもりはないのだが。
「……本人も残念がっていました」
「……残念がっちゃったんですか」
「ええ。最近の言葉は難しくてよくわかりませんが、女体化しておねショタしたかった、と」
「まともだと思っていたグレン侯爵家にも変なのがいるぅ!」
「スカイ王国ですからねぇ」
「スカイ王国でちゅからねぇ」
サムの驚きに対し、友也とロバートは冷静だった。




