93「娘の日記を読みます」
息子からの手紙を抱きしめ泣いていた綾音は、鼻をすすると娘アイリーンが残した手紙と日記をアイテムボックスから取り出した。
「息子だけ見て娘をスルーするなんてことはできないものね。ヘイゼルおばあちゃんが言うことが確かならちょっと辛口みたいだけど……文句言われても仕方がないことをしてしまったのだから、受け入れるしかないものね」
綾音は女神の影響を受けていた。
その上で、サムエル・カイトを失った悲しみ、妹白雪への複雑な感情、そして魔族との戦争を終わらせるという確固たる目的から、政略結婚を受けた。
夫となった男は、本当に覚えている価値がない男だ。顔も名前も、声さえも覚えていない。
息子ルーシェルの日記にも少し出てきただけなので、碌でもない男だったのだろう。
(――もっとも私も碌でもない女だけどね)
女神の影響を受けようと、戦いに明け暮れようと、自分が産んだ子供を顧みることができなかった綾音は罪深いと思っている。
たまたまた子供たちが行動力の塊だったから知らずに交流できていたが、母親として接したことはない。
それが申し訳なかった。
もし、子供たちが行動していなかったら、今以上に後悔をしていただろう。
――だからこそ、今からでも向き合わなければならないのだ。
「とりあえず、日記からいきましょう。どんな生活をしていたのか知りたいし、ルーの領地を乗っ取ったみたいだものね。ていうか、本当に何があったのかしら?」
アイリーンの日記はルーシェルよりも多かった。
マメにつけていたのか、長い期間つけていたのか。
丁寧に、番号が振ってある。
「そういえばモアイはしっかりしていたものね。実を言うと、ルーと違ってモアイはあまり心配していなかったのよね」
ルーシェルの日記のおかげで、もともと覚えていた過去が鮮明となった綾音が懐かしみながら一冊目を開いた。
そして、冒頭にはこう書かれていた。
『――勇者の娘にして聖女の姪でありながら、暗黒面に落ちた混沌の暗黒騎士アイリーンの優雅な悪役令嬢日記』
「…………」
すう、と息を吐き、綾音は一度日記を閉じた。
「――なるほど、こうくるのね」
変化球を受けた感じだ。
しっかりした子という印象のアイリーンだったが、悲しいかなスカイ王国の先祖であった。
拳系妹にして混沌の暗黒騎士にして優雅な悪役令嬢アイリーンサイドがはーじーまーるーよー!
シリアス先輩「シリアスの予感しかしねぇ!」




