77「玄関の外に玉兎がいました」②
次期竜王玉兎は、親友のエミル・アイル・スカイに要請によりシューレン魔法国で働いていた。
竜ということで恐れられたのは最初だけで、今ではすっかりエヴァンジェリン・アラヒーの眷属として認められて、人気者だ。
忙しい日々だが、慕ってくれる人間たちの暮らしを少しでも良くするために頑張った。
玉兎が頑張るだけで、みんなに笑顔が増えていく。
「ありがとう」と言ってもらえる。
目がまわるほど忙しいが、充実していた。
――そんな折、親友サミュエル・シャイトの子供が生まれたと聞いた。
エミルがお祝いに行きたいと、国王グラインにお願いしたが却下された。
エミルに任せた仕事が山のようにあるので外出禁止らしい。
――実は、エミルに余裕がなくなるまで仕事を与えて忙殺させてほしいと、スカイ王国王妃コーデリアからの「お願い」が書かれた書状がグラインに送られているのだが、山のような仕事を与えられながらエミルにはまだ余裕があった。
余裕があっても忙しいものは忙しいので、代わりに空を移動できる玉兎が親友の名代としてシャイト家を祝いにきたのだ。
グラインからも祝いの品を預かっている。
重要な役目に、身が引き締まる思いだ。
思えば、今まで、次期竜王候補とされていながら、何か役目を負ったことはない。
ただ強いだけ。
竜に必要なことではあるが、玉兎としては竜王という立場にあまりその座に固執していない。
だからだろうか、誰かに期待され、仕事を任され、褒めてもらえる。
竜の里にいた時には味わえなかった満足感と充実感があった。
エミル御用達の店によって、商品を準備して支払いをする。
身だしなみを整えて、いざ、ウォーカー伯爵家へ。
「――あれ? はじめまして、サムパパのお友達? お祝いにきてくれたんだー! ありがとう!」
愛娘メルシーが声をかけてくれた。
いつもなら鉄拳が飛んでくるはずが、今日は違った。
(――あれ? この反応って)
「お姉ちゃん、何やってるの? あ、お客さん? はじめまして、どうぞー」
「ちょっと、ちゃんと挨拶をしなさい。はじめまして、ようこそウォーカー伯爵家へ」
長女だけではなく、次女、三女からも「はじめまして」と連続して言われた玉兎は手を振って去っていく娘たちを見送った後、その場に膝をついて号泣した。
シリアス先輩「シリアス先輩ね、思うんだけど。娘たちの前で頑張らないと! いけるいける! ここから巻き戻せるって! がんばれ!」




