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79「お風呂に入ります」④





「……ごほん。いえ、特に意味はないのですが……綾音っちのことを知りたいので、女子が仲良くなるにはまず恋バナをと思いまして」

「……恋バナねぇ。私って、殺伐とした時代に生まれて殺すことしかしてないし。唯一の恋愛も中途半端な感じで終わっちゃって、そのあとは女神の影響もあって自棄になっていろいろやらかしちゃったしねぇ」


 綾音は召喚された時代が悪かった。

 サムエル・カイトという想い人はいた。

 だが、愛情がどのような愛情だったのか、今は少しわからない。

 男女のものか、仲間としてか、親友としてか、それとも家族か。

 もしくはすべてだったかもしれない。

 しかし、サムエルとの関係は彼の死によって最後まで育つことなく終わってしまった。


 その後、権力を得るために、戦争を終わらせるために、政略結婚をして名前さえ覚えていない男と結婚し、子供を産んだ。それから戦いばかりの日々。白雪に殺されるまで、子供のことすら忘れて戦い続けた。


 当時の事情や、出来事など、綾音だけが悪いわけではないが、他ならぬ綾音自身が自分のことを「最低な女である」と思っていた。


「というか、恋バナならあんたたちの方でしょう!」

「私たちですか?」

「そうよ! ハーレムじゃない! なんでそうなったの!?」

「そうですね……」


 リーゼが腕を組み、アリシアとステラと顔を見合わせて笑う。


「魅力的なサムに」

「わたくしたちがわらわらと」

「集まったのです!」

「言い方ぁ! もっと恋バナっぽい言い方してぇ!?」


 お世辞にも恋バナとは言えない物言いに、綾音が顔を引き攣らせる。

 リーゼたちは苦笑した。

 思えば、彼女たちも長女ウルを看取ったサムがふらりと現れたことをきっかけに、こんなにも人生が変わるとは思っていなかった。

 もし、サムが現れない未来があると考えただけでぞっとする。


「自分で言うのもあれですが、わたくしたちはワケありでしたから。それでもサムとの出会いは運命の出会いでした」

「わたくしは少しずつ惹かれましたけど、それでもあっという間だったと思いますわ」

「私は、この方じゃないとダメだとびびっときましたわ」


 リーゼ、アリシア、ステラがサムとの出会いを思い出し、頬を赤く染めた。


「あらあら、羨ましいことで」

「まあまあ、綾音っちもサムとは親しいではありませんか」

「相性はいいと思うわよ。会話は弾むし、変に競わなくてもいいしね」

「訓練にも献身的に付き合ってくださってくれていましたし」

「あの子はどんどん強くなるものね。見ていて面白いわ」

「……サムから聞いたのですが」

「何よ、リーゼ?」

「綾音っちが女神として封印されているときから、執拗にコンタクトを取っていたと」

「執拗にって言うのやめてくれない!? そりゃ確かに、コンタクト何回か取ったけど」

「あと、復活時にサムに自分のものになれと大胆アピールを」

「…………なんで、あんなこと言ったのかしらねぇ」

「断られたら指を折ってこれでもかとボコボコに」

「そうやって聞くと本当に嫌なやつよね、私!」


 外部的な要因があったことは間違いないが、サムを欲したのは事実だ。

 手に入らないのなら、殺してしまおうとも思ったのも、また事実だった。


「……若さゆえの過ちね」

「数ヶ月前の出来事ですけどね」

「…………そうだったわね。ほ、ほら、私、もうピチピチじゃないから」

「いえ……ピチピチですわ。幼い身体とはいえ、羨ましいくらい水を弾くではないですか!」

「目が、目が怖いからね、リーゼ、ステラ、アリシア!」

「ぜひわたくしたちもアンチエイジングを」

「これはアンチエイジングじゃねーから! 力がないから幼い姿ってだけだから! あんたたち、ウルにも同じようなことを言ったでしょう!? そんなに若返りたいのなら、エヴァンジェリン様に頼りなさいよ!」

「いえ、さすがにそれはずるいかなと」

「そうですわ! アンチエイジングは努力しなければ!」

「いずれ綾音っちにもわかります」

「意外と真面目ね! あと、アンチエイジングをするほど年重ねてないじゃん! 若いじゃん!」


 恋バナをする予定が、アンチエイジングの話になってしまった。

 羨ましい、と綾音は身体の隅々をリーゼたちに触れられてちょっと変な声を出してしまった。





 ■





「わたくしたちはアンチエイジングは必要ありませんわね!」

「クリー様、そんな大きな声でよく言えますね!?」







 シリアス先輩「綾音っちの肌はかっさかさだと思ってた!」

 綾音っち「だから、どういう先入観!?」

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