77「お風呂に入ります」②
「さーて、サムたちもお風呂に入ったし、私もお風呂をいただきまーす」
綾音はお風呂セットを準備していると、リーゼたちがにこりと微笑む。
「わたくしたちもご一緒させてくださいな」
「え? あ、うん。別にいいけど。急にどうしたの?」
「綾音っち様とゆっくりお風呂に入りたいと思っているだけです」
「そうですわ! 綾音っち様とあまり交流できていませんので、もっと仲良くしたいのです!」
「綾音っち様はいろいろ大変だったとお聞きしていますし、どうかお話を聞かせてくださいませ」
「……あんたら、本気でその綾音っち様って言い続ける気なのね」
「綾音っち、とフレンドリーに呼ばせてもらえると嬉しいですが」
「っち、をやめろって言ってんのよ! 多々二郎のせいで、私のことを綾音っちって呼ぶ奴が増えたのに、ここでも!?」
「まあまあ、綾音っち。愚痴はお風呂で聞きますよ」
「ぐいぐい来るわね! どうしたの!?」
リーゼたちとは一定の距離があったはずだ。
これは彼女たちが距離をとっていたのではなく、綾音が距離を置いていたのだ。
まだ女神の影響がどれくらい残っているのか分からず、白雪との問題もあった。仲良くして、傷つけてしまう可能性だってあったのだ。
何よりも、サムの愛する妻や婚約者たちを、家族を傷つけたくなかったのだ。
本音を言えば、リーゼたちと親しくしたかった。
「お背中流します、ささ、お風呂へ」
「マッサージもしますわ!」
「私も頑張ります!」
「いや、妊婦にマッサージさせるとか、私そこまで嫌な女じゃないから! むしろ、私がしてあげるから! なになになんなの!?」
綾音が困惑していると、お風呂セットを持ったオフェーリアが現れた。
「お風呂の準備ができましたわ。さあ、皆様、どうぞ」
「あんたもなのね!?」
「できれば全員集合したかったのですが、残念です」
「この展開についていけない! なんか怖い!」
「さあさあ、綾音っち様、皆様、どうぞ」
何が起きているのかよくわかっていない綾音をリーゼたちがぐいぐい押していく。
彼女たちの好意を無碍にできることはできず、綾音はあれよこれよと浴場に連れて行かれてしまった。
浴室では、マットを用意しているクリーがいた。
「申し訳ございません! まだマットの準備が」
「マットってなに!? マッサージってなんか如何わしい系なの!?」
「そんなことはありませんわ! ぎゅんぎゅん様がアヘ顔ダブルピースするほどお喜びになるマッサージですわ!」
「そんなマッサージいるか! あの男も、こんな少女に、しかも妊婦に……なんて背徳的な! 度し難い変態ね!」
「だから良いのですわ!」
「そうなの!?」
「そうなのですわ! お待ちくださいね、今、ローションを」
「だからいらないって言ってるでしょう!? あんたたちも転んだら困るんだからやめさせなさい!」
綾音は、疲れを取るためにお風呂に入りたかったのに、どっと疲れてしまった。




