表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1990/2182

73「マニオンのケジメです」②





「お久しぶりです、母上。マニオン・ラインバッハです」

「……まに、おん?」

「はい。マニオンです。見た目が変わってしまいましたが、あなたの息子です」


 ヨランダは、じぃ、とマニオンを見て、失笑した。


「……馬鹿なことを言わないで。役立たずの無能な息子は死んだわ。どういう理由があって、あの出来損ないの名前を名乗るかしらないけれど、もっとマシな名前を名乗りなさいな」

「変わりませんね」


 今更、出来損ないと言われても、痛くも痒くもなかった。


「あんた、悪いことでも企んでいるの? それなら、サミュエル・シャイトを名乗りなさい。あの忌々しいメラニーの息子は、今じゃ有名人らしいじゃない。田舎や別の国に行けば勝手に名乗ったってわかりはしないわ」

「ご親切にどうも。ですが、なぜそんな助言を?」


 マニオンが何気なく尋ねてみると、ヨランダがいやらしい笑みを浮かべた。


「私が知る限りのサミュエル・シャイトの情報をあげるから、見返りをちょうだい」

「見返り、とは?」

「ここから出して!」


 はて、とマニオンは首を傾げた。


「ここから出たいのですか?」

「そう言っているでしょう!」

「ですが、良いところのようですが」

「……これだからガキは。私はね、身体が悪いのよ。強制労働こそなくなったけどね、つまらない修道院で自給自足生活を強いられているの。私みたいな女はね、都会じゃなきゃだめなのよ」

「なるほど。しかし、あなたにとってここは牢獄のはずです。逃げ出せば、相応の罰が待っているでしょうね」

「そんなの出てしまえばなんとかなるわ!」

「……行き当たりばったりなところは健在ですか」


 マニオンが死んでから一年も経っていない。

 そう簡単に人は変わらないだろう。

 マニオン自身も使徒として蘇った時は、同じようだった。

 かつての自分を見ているようで恥ずかしくなる。


「母上が信じてくれずとも、私はマニオンです。そして、息子としてすべきことをするためにきました」

「なにを? ここから出してくれるとでもいいの?」

「ええ。ある意味、では」


 マニオンはヨランダの身体を探る。

 身体が悪いというのは事実のようだ。

 肺を患っているのがわかる。

 すぐに死ぬことはないが、いずれ死ぬだろう。


 ――だが、それはさせない。死んで楽にはさせない。


「ヨランダ・ラインバッハ、あなたは償わなければならない。僕もあなたを責める立場にはないが、それでも、このままあなたがゆるりと死ぬことは許さない」

「あんた、なにを!」


 ヨランダを中心に魔法陣が展開する。


「ちょっと! なにを!」

「あなたを健康にしてあげます。二度と病気することがなく、怪我をしてもすぐに治る理想的な身体です」

「やめ」


 ヨランダが逃げようとするが、それよりも先に術式はヨランダの中に入った。


「これで、母上は老衰で死ぬまで健康です。よかったですね、労動刑に戻れますよ」

「はっ、なにを言ってるの! 私の病は医者でも治せないと言ったのよ! そう簡単に治るもんですか!」

「では、さようなら、母上。いずれ死ぬその日までお元気で」

「待ちなさい! あんた、ちょっと!」


 喚くヨランダを無視してマニオンは部屋から出ていく。

 誰にも気づかれず、修道院を後にする。

 のどかな田園風景を振り返る。




「――さようなら、母上」




 最後まで自分のことに気づいてくれなかった母に、最後の別れを告げた。





 ■





 その後、ヨランダ・ラインバッハは「奇跡的に」病が治った。

 喜んだのは束の間、肉体が健康であるのなら、再び労働刑に戻ることとなった。

 喚き暴れるヨランダだったが、兵士たちによってかつていた労働場所に戻されてしまう。


 ヨランダは、病にかかり修道院に送られることとなった際、他の受刑者たちに余計なことを言っている。

 そんなヨランダが戻ってきたのだ。

 手厚い歓迎をされたのは言うまでもない。


 ヨランダは、修道院が天国であったことに気づくと、病になろうと無茶をした。だが、風邪ひとつ引かない。

 怪我をしようと骨を折っても、激痛にのたうち回ってから治ってしまう。

 絶望し、死んでやろうと尖った細かい石を飲み込んでも、死ぬような痛みに襲われながら、死なない。


 病にもかかれず、怪我もできない。死ぬことさえ許されないヨランダは、絶叫をあげた。


 彼女は、恩赦を与えられることなく、文字通り死ぬまで刑罰を受け続けた。






 マニオンくんのケジメでした。

 彼が再び出てくるのは、戦いの時です。しばし、お待ちください。


 〜〜宣伝させてください!〜〜

 ブシロードコミックス様より「異世界から帰還したら地球もかなりファンタジーでした。あと、負けヒロインどもこっち見んな。」1巻が発売となりました!

 コミカライズ最新話公開中です!!


 また、ピッコマ様にてコミカライズ『この度、公爵家の令嬢の婚約者となりました。しかし、噂では性格が悪く、十歳も年上です。』の連載が始まりました。

 1話〜3話まで公開されております!


 そろって何卒よろしくお願いいたします(((o(*゜▽゜*)o)))♡

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ