間話「リーゼとクリーは察するそうです」
――サムたちが、シューレン魔法国にいる頃。
無事に執筆を終えてウォーカー伯爵家にやってきたクリー・イグナーツは、夫ギュンター・イグナーツと一緒にリーゼロッテ・ウォーカー・シャイトと三人で話をしていた。
「綾音っち様と白雪様にもいろいろあったのですね」
白雪が戻り、カルミナと一時的に戻ってきた友也から事情を、クリーにも共有していた。
「しかし、なんといいますか、神というのは性格が死んでいると言いますか、お馬鹿さんといいますか、気持ち悪いといいますか」
「し、辛辣ね、クリー。気持ちはわからなくはないけれど」
リーゼもちょいちょい裏で暗躍している、「神」に呆れている。
そもそも目的がわからない。
神の介入の全てを把握しているわけではないので、断言することは難しいのだが、現状では「何をしたいのかわからない」。
行動に一貫性がないように思えた。
ただ、人間視点ではなく、神の視点では何か理由がしっかりあるのだろうか。
「リーゼお姉様! わたくしは激おこですわ! サムお兄様は子作りに励まなければならない大事な時期ですのに! よくわからぬ女神や戦神のせいで戦ってばかりですわ!」
「……え、ええ、後者には同意するわ」
現時点で、ウル、オフェーリア、ゾーイが婚約者として名を連ねている。
その後、続く女性たちもいる。
神の介入がなければ、三人も結婚して子作りしていただろう。
余計なことをしてくれた、と思わなくもない。
「……責任者にはお仕置きが必要ですわねぇ」
にちゃぁ、と幼い聖女とは似つかない笑みを浮かべたクリーに、ギュンターがびくりと震える。
「……一応、言っておくけどね、ママ。イケメンすぎる創造神様は、管理神をひとり選んだだけで、そのあとは彼女任せといいますか、決して責任があるわけではと心までイケメンすぎる創造神様のフォローをさせていただきたく」
「わたくしからしたら使えない部下を選んだ時点で、ダメダメですわ」
「……さすがに心優しい創造神様が可哀想だよぉ!」
元創造神であるギュンターが必死でフォローをしている。
いちいち、創造神の前に褒め言葉を足すのが鬱陶しい。
「ところで、わたくしにはよくわからいのですが、そのイケメンすぎる創造神様的には良い加減、黒幕とかはわからないのですか?」
「そういえば、壮絶なイケメン創造神様が言っていたんだけど、知らないそうだよ!」
「……やはりお仕置きですね。そろそろ、拡張の時間かもしれませんわね」
リーゼは、何をどう拡張するのか気になったが、聞いたら胎教に悪そうなので黙っていた。
「イケメン創造神様が言っていたけど、すべきことをしてから人間として生きているから、基本的はノータッチだし、介入もできないということさ!」
「使えないですわねぇ」
「ひどい! その代わり、イケメンすぎる創造神様とは関係ないけど、僕ギュンター・イグナーツは愛の狩人として、サムたちと一緒に神々と戦うつもりさ!」
「……拡張は今度にしましょう」
ギュンターがホッとする。
本当に何をされそうになっているのだろうか。
「それよりも! リーゼお姉様!」
「どうしたの?」
「わたくし、思うのですが! 綾音っち様て、かなりサムお兄様を好きじゃありません?」
「と、唐突ね。でも、そうよね。そう思うわよね。私もちょっとそう思っていたのよ。綾音様ってとてもサムを気にかけてくれているじゃない。姉と弟や友人の延長線上かしらって思っていたのだけど、好意があるように見えるのよね」
リーゼとクリーは、綾音が復活した際にサムを欲したことを覚えている。
拒んだサムをボコボコにしたこともよく覚えている。
思えば、彼女が正気ではない時から、サムに対して好意的ななにかを抱いているのであれば――。
「つまり、綾音くんはサムを狙う悪い子ということかな!?」
「……いえ、そういう意味ではすでにリーゼお姉様方がいただいていると思うので今更だと思うのですが」
「……ずるいずるい、とここで子供のように駄々をこねたら怒る?」
「とても怒りますし、わたくしが考えたすんごいことをお仕置きとしてします」
「――ぴ」
クリーの威圧に、ギュンターは静かになった。
「あなたたちも相変わらずねぇ」
「わたくしとぎゅんぎゅん様は老衰するまでこんな感じですわ!」
「……途中で落ち着きなさいな」
リーゼは苦笑した。




