39「再会です?」①
日比谷綾音は、サムの姿に見惚れながらも、内心では驚いていた。
胸の高鳴りと同時に、大きく動揺もしていた。
(サミュエル……この子、まったく魔力を使わなかったわ。全てを斬り裂く者と刹那に斬り裂く者だけで、女神の使徒を……)
かつてサムエル・カイトという鋼の力を持つ者がいた。
彼は自らを剣として、敵を斬った優しい強者だった。
サミュエル・シャイトは、そんなサムエル・カイトの転生体であり、力を受け継いでいる。
――しかし、サムエルとサミュエルでは力の使い方が違った。
サミュエルの方が、力の使い方が上手い。
幼少期から力を使っているせいか。
戦いを導いてくれた闘神のような師匠がいたからか。
(今、戦ったら負けちゃうかもしれないわね)
綾音だって、全ての力を出したわけではないので、まだサミュエルと戦いようはある。
しかし、それでは殺し合いになってしまう。
サミュエルと命のやり取りをするつもりは毛頭ない。
(男の子って、ちょっと目を離すとすぐ強くなっちゃうのよねぇ)
その力で守ってくれたことは嬉しい。
勇者であり女神である自分をひとりの人間として女として見てくれて、守ろうとしてくれるなんて、何人いるだろうか。
きっとサムくらいだろう。
(な、なんていうか、不覚にもときめいちゃったんですけど。サミュエルのこと結構好きなんだけど、ちょっとまずいかも……)
もともと好意があって可愛がっていたサミュエルをはっきり男として意識してしまった綾音だった。
■
魔法王ルルカス・シューレンを殺したサムは、遠い空を眺めていた。
(――やはり干渉はないんだね)
愛情と戦いの女神ヴァルレインは、ルルカスを使徒にしたようだが、実際は捨て駒扱いだったのだろう。
手駒にするならば、もっと優秀な人材はいただろう。
それこそ、グライン・ルルカスを使徒に選ぶことだってできたはずだ。
復讐を目的にしていた彼ならば、使徒になったと思う。
(神々が何を考えているのかわからない。それこそ、何も考えずに感情的に動いているのか……一番考えたくないことだけど、神々の中で誰かが笑って暗躍しているって可能性だってある)
可能性だけならいくつもで浮かぶ。
しかし、確証を得ることはできない。
つまり、考えるだけ無駄だ。
「――ふう」
大きく息を吐き、身体から力を抜いた。
「やあ、兄さん。久しぶり」
すると、まるでサムが力を抜くを待っていたようなタイミングで声がかけられた。




