30「普通の男の子に戻ります」③
感情的になったコーデリアを落ち着かせ、クライドはお茶を飲む。
「ふう。まだまだ引退は先のようであるな」
「陛下はまだお元気なのですから、わたくしたちを変わらず導いてくださいませ」
「子供たちも時間こそかかるかもしれませんが、成長するでしょう。なんなら、サミュエル・シャイトを王にしてしまえばいいのです」
「――ほう」
「あらあら、まあまあ」
「……なにか?」
クライドとフランシスは、コーデリアが「サムに王位を」と言ったことに驚いていた。
フランシスとコーデリアの関係は少々複雑だ。幼馴染みであり、次期国王に嫁いだ友人でもあった。
しかし、王になったクライドは若かりし頃の明るさを消し、どこか影を浮かべるようになった。
どれだけ言葉を交わそうとしても、肝心なことは教えてもらえない。
王妃として、ひとりの女性として、思うことはあった。
そのせいか、コーデリアは夫の気を引こうとした。
その中でも、もっとも力を入れたのが、息子エミルを次期国王にしようとしたことだ。
結果として、フランシスとの仲も悪くなり、コーデリアの実子レイチェルはフランシスの実子ステラを敵視してしまうようになった。
それでも頑なにエミルを王にしようとしていたコーデリアの口から、「サムを王に」というのだから、驚くしかない。
「ふふふ、コーデリアも陛下と同じように昔のように戻ってくれたわね」
「……お前が変わらなすぎるのだ、フランシス」
「そうかもね」
思い返せば、サミュエル・シャイトが王都に現れてから、何もかが変わった。
王が解放され、夫婦の仲も、王妃たちの仲も改善した。
子供達は幸せになった。
「これでも、サミュエル・シャイトには感謝している。王にすればいいと言ったが、極論だ。個人的に王の器ではあると思うが、本人が望まないだろう」
「そうであるな。公爵位でさえ断られてしまっているのである」
「わたくしたちにできるのは、サムが楽しく暮らせるように力を貸すことですわ」
最近は、サムへの婚姻の話はまず王家にもってこい、と言っている。
それでもジョナサンと交流がある者は直接ウォーカー伯爵家に話を持っていくようだが、彼の負担は減ったようだ。
「このようなことは言いたくありませんが、陛下もサミュエル・シャイトに面倒をかけるのはほどほどに」
「う、うむ」
「メルシーが可愛いといって、ウォーカー伯爵家に入り浸るのもよろしくないと思います」
「め、メルシーちゃんが癒しなのだ! 娘たちが嫁にいってしまったので、可愛がる女の子がいないのである!」
「……気持ちはわかりますが、我が愚息が血の涙を流して悔しがっている光景は、母としても酷いのです」
「…………そうであるな。ただ、エミルも婚約者ができたのでセドリックのように良い方向に向かうはずである! うむ! たとえアヘ顔ダブルピースをしていたとしても、幸せならばいいのである! 良きビンビンである!」




