29「普通の男の子に戻ります」②
「落ち着くのである、コーデリアよ」
「落ち着いていられるものですか! そもそも、陛下は男の子というお歳ではないでしょう!」
「……年齢の話は、悪きビンビンである」
まだ四十代と若くはあるが、春には孫が生まれる身だ。
「男の子」というわけにはいかない。
「……陛下が自分を男の子であると思っていることは良いのですが、玉座を譲るには早すぎるのではないかと思います」
「わたくしも同感ですわ」
現在、王位を継ぐのは第一王子であるセドリック・アイル・スカイだ。
次に、第二王子エミル・アイル・スカイだった。
王家の血を引く者の大半が王位継承権を放棄している。
王位継承権第三位にいるのは、ギュンター・イグナーツであった。
「セドリックも成長したようであるが?」
「想い人と結婚したことで成長はしたようですが、今は腰を動かす方が大事なようです。王族として子孫を残すのは良いことですが」
「まあまあ、コーデリアったら」
「すまない、フランシス。だが」
「セドリックじゃなくてルイーズのほうが動くのよ!」
「そうか、すまな……知るかそんなこと! お前も、なぜ息子の夜の事情に詳しいのだ!」
「ふふ」
「意味深に笑うな!」
まったく、とコーデリアは嘆息する。
ただ、セドリックが想い人と結ばれたことは好ましい。
スカイ王国は王族としては珍しく、恋愛結婚が多い。
コーデリアもフランシスも、政略結婚ではあるが、もともとクライドに恋していたのでなにも問題はなかった。
一時期、反対したが、娘のレイチェル・アイル・スカイも想い人のデライト・シナトラと幸せな日々を送っている。
子宝にも恵まれ、デライトも宮廷魔法使いに返り咲いた。
ステラ・アイル・スカイも、サミュエル・シャイトと良い結婚をした。
王族の大半は幸せそうだ。
「ときに、コーデリアよ」
「なんでしょうか?」
「エミルはどうしているのであるか? メルシーに相手にされず不貞腐れていると以前聞いていたが、今は大人しくしているのだろうか?」
コーデリアはわざとらしく首を傾げた。
「エミル? そんな名前に心当たりはありせんね」
「びん?」
「私の息子は快楽に屈しアヘ顔ダブルピースを晒すような息子ではなかったはず! ロイグ・アイル・スカイよりも早く屈するとは、なんたること! まだ奴のほうが耐えた! いや、むしろ、イーディス・ジュラを相手によくぞ耐えてみせたと讃えたい! だが、あの馬鹿息子は……」
ぷるぷる震えるコーデリアを、フランシスが慰めるようにそっと手を重ねる。
クライドは、暗くなった窓の外を見て、亡き弟を思い出した。
「懐かしい。わからせ殿下ロイグよ、思えばそなたは早々に普通の男の子なったのであるな。できることなら、その日々がどのようなものだったか聞きたかった」




