25「あとは丸投げです」②
「サムよ、ギュンターと仲睦まじく戯れているのはいいが、こちらの話にも参加してくれぬか?」
「戯れてないです。というか、俺は一介の宮廷魔法使いなので政治はちょっと」
「そういうでない。そなたは爵位こそ伯爵であるが、我が弟ロイグの忘れ形見であるゆえ、公爵でも問題ないのだぞ」
ギュンターに馬乗りになっていざ殴ろうとしていたサムは、渋々立ち上がった。
服についた雪を払うと、ギュンターも立ち上がる。
不思議なことに、彼の衣類には汚れが一切ついていない。
「それなら、ギュンターだって次期公爵じゃないですか」
「……ギュンターも会話に参加してもらうつもりだが、極力黙っていて欲しいのである」
「陛下。僕は失言などしませんよ」
「普段から失言ばかりなのである!」
「ビンビン陛下も負けてないですからね!」
つまり、どっちもどっちだった。
「さ、ふたりともこちらに」
「はい」
「わかりました」
ゴレ子たちは焚き火から離れた場所に、四つの長椅子を四角形に並べて座っていた。
真ん中には焚き火があり、暖をとっている。
「お待たせしたのである」
「サミュエル殿、ギュンター殿、お時間をとらせて申し訳ない」
グレゴリー・スノーデンが立ち上がり、お辞儀をした。
彼は王であるが、サムたちには恩義を感じているようで腰が低い。
王に頭を下げさせ、無闇に感謝されるのもどうかと思うのだが、彼は「どうせ見ている者などおらぬ」と気にしていない。彼の息子のスレイマンも同じだった。
「サミュエル・シャイト殿、あなたとは一度きちんとお話をしたいと思っています。今回の一件が終わったら、お時間をいただけないでしょうか?」
リチャード・オークニーも、同じく立ち上がり、サムたちに礼をする。
まだ若い王からの願いに、サムは応じた。
「わかりました。約束しましょう」
「感謝します」
リチャードは安堵の息を吐く。
勇者葉山勇人の問題では、正式に謝罪があったし、スカイ王国は緩やかな制裁をしているので、気にしていない。
サムは、オークニー王国を嫌いではあるが、自分から何かをするつもりはない。
勇者に狙われた妻ステラは、最初から気にも留めていないので、あまりサムがオークニー王国に対して頑なな態度を取るのは大人気ないと思われるかもしれない。
しかし、サムは妻を、クライドは娘を狙われたことになかなか感情の折り合いがつかない。
それでも、前に進むべきなのだとは理解していた。
「サム、ギュンター。現在、スカイ王国を中心に複数の国が同盟を結んでいることは知っているであろう?」
「はい。どの国がというのはちょっと覚えていないんですが、オークニー王国が同盟に加盟していて、スノーデン王国が加盟していないことは覚えています」
グレゴリーが苦い顔をする。
スノーデン王国は周辺諸国と折り合いが悪い。
貧しい国ゆえに、貴族を抑えられず、オークニー王国と小競り合いを繰り返し、スカイ王国に進軍しようとした過去もある。
戦力となる兵士が食糧難で万全ではなく、魔法使いたちも貴族たちも貴族の見栄に使われ、選民思想を持つため己に訓練を課すこともなく弱かったこともあって、オークニー王国は敗戦続きだ。
そしてまた貧しく苦しくなるのだ。
「現在、同盟などあってないようである」
「そうなんですか?」
「スカイ王国が魔王方と交友をはじめたことで僻まれているのである」
「陛下、もっと言い方があるでしょうに」
「だが事実である。そして、同じ同盟内の国がオークニー王国を攻めて領土を奪おうとしている」
「やだやだ、これだから偉い人って悪いことばかり考える」
「もしくはいやらしいことばかりだね!」
「……誰もそんなことは言ってねーし、思ってもいねーよ」
ギュンターの暴言に、つい突っ込んでしまう。
よくも王を三人前にして言えるものだと感心さえした。
「そこで、我々は新たに同盟を組むこととした」
「まさかビンビン同盟なんて言いませんよね?」
サムが先んじて釘を刺そうとすると、クライドが残念な子でも見るような顔をした。
「サムよ、同盟とは歴史に長く残るものである。いくらなんでもそのような名前にはしないのだ」
「あれー?」




