20「ゴレ子さんを追いかけます」①
「ただいま戻りました」
転移で友也が戻ってくると、サムが声をかけた。
「おかえり。街はどうだった?」
「どえりゃーことになっていましたよ」
「……その元凶は友也なんだけどね」
「大事の前の小事です」
「そういうことにしておこうかな?」
「そうしてください。僕の心が折れる前に」
友也の表情は暗い。しかし、無理やり微笑んでいる。
無理をしているのがわかった。
サムだって、何かある度に全裸にはなりたくない。
ラッキースケベだってごめんだ。
幸いなことというべきか、サムやサムの妻たち、婚約者たちはまだラッキースケベの被害に遭っていない。
ラッキースケベが気を遣ってくれているのか、友也が意地でもサムたちにラッキースケベしないように頑張ってくれているのかまでは不明だが、このままラッキースケベとは無縁でいたいと思う。
「ゴレ子さんを転移したまま放置というわけにはいきません。グレゴリー殿、僕たちがスノーデン王国に向かいたいのですがよろしいでしょうか?」
「無論、かまわぬ。むしろ、お願いしたい」
「ありがとうございます。――問題は、オークニー王国のリチャード王たちですが」
ちらり、とサムと友也がリチャードたちを伺った。
彼がどのような王なのか知らないが、少なくともクライドのような王ではないだろう。
クライド・アイル・スカイは結界術師として優れており、護衛を必要としない。
若い頃は、やんちゃだったようで、戦闘経験も豊富だ。
フットワークが軽すぎるため、ジョナサン・ウォーカーの胃をちょっとした行動で全力で攻撃してくるのだが、それは、今はおいておこう。
グレゴリー・スノーデンは、今の立場から護衛はいない。
だが、クライドの結界に守られており、サムと友也も彼に何かあったら全力で守ると決めている。
しかし、リチャード王はどうだろうか。
サムは、「勇者」関連でオークニー王国そのものに良い印象はないので、リチャード王のことも微妙だ。
友也に至っては、そもそもこの国に来ていたのは、霧島薫子に対しオークニー王国が暗殺や誘拐を企んでいたことを突き止め、制裁するためだったからだ。
まだサムたちには伝えていないが、スノーデン王国の貴族に「勇者召喚の儀」を教えたのも、オークニー王国の貴族だ。
それらの理由から、リチャードを守ってやろうなどとは毛ほども思っていなかった。
「――私も他人事ではありません。グレゴリー陛下のお許しをいただけるのであれば、スノーデン王国にお連れください。無論、護衛は置いていきます」
「国王陛下! それは!」
「黙れ! 我が国の未来がかかっている! 私は信頼を得るためならば、なんでもしよう!」
友也とサムは頷きあう。
そこまでの覚悟があればいいだろう。
「グレゴリー殿、よろしいですか?」
「承知しました」
友也に問われたグレゴリーは、リチャードを一瞥してから頷いた。
続けてクライドが口を開く。
「リチャード・オークニー殿。そなたがビンビンたる王であるかどうか、見極めさせていただく」




