98「サムの立場です」②
サムはなんとかウルを捕まえることができた。
その代償は大きく、頬の右側が思い切り腫れているし、口の中も痛い。
「……せっかくゴーレムを見に行こうとしたのに」
「気持ちはわかるけど、ウルも宮廷魔法使いじゃないか! ちょうど陛下とその話をしていたのに……なんで、あっ、みたいな顔をしているの? まさか宮廷魔法使いだって忘れていたの!?」
「すまん。すっかり忘れていた」
「素直さん!」
サムは、これからどうするべきか悩む。
ゴーレムの長の場所がわかったことは幸いだが、長がどこに行くのかどうかも気になる。
「ねえ、エヴァンジェリン。ゴーレムの長ってさすがにスノーデン王国に移動するよね?」
「……そうじゃなきゃ、まずいって思うんだけどな。さすがに国境からスカイ王国までこないだろ。ちょっと聞いてくるから待ってて」
「お願いします」
「おう!」
エヴァンジェリンがゾゾムに向かって飛ぶ。
ゴーレムたちは、今は地面に座ってのんびり空を見上げている。
基本的にのんびりした性格のようだ。
「クライド陛下、グレゴリー陛下」
「なんだろうか?」
「なにかな?」
「スノーデン王国にゴーレムの長さんが向かうなら、俺とウルで行ってもいいですか?」
「ふむ。スノーデン王国に関しては、どうかなグレゴリー殿」
「ぜひお願いしたい。ただ、できれば、私も連れて行ってほしい。我が国の未来がかかっているのだ。直接、我が行くべきだと思うが」
グレゴリーはどこまでも王としての責任を果たそうとしている。
まだ病み上がりだというのに、その心意気は尊敬に値する。
「よかったです。じゃあ、ウル。友也に頼んでスノーデン王国に連れて行ってもらって、ゴーレムの長さんに接触しようぜ」
「いい考えだ! あの魔王がいれば寒い中飛んでいかなくてもいいな」
「……一応言っておくけど、長さんに喧嘩売っちゃダメだからね?」
「………………わかってるよ」
「マジでやめてね!」
気づけば、揺れも治っている。
サムは一度屋敷に戻り、家族の安否を確認してから屋敷にいるはずの友也にお願いしてスノーデン王国に行こうと決めた。
問題は、ゴーレムたちだ。
気のいいゴーレムたちを、このまま雪の中に放置することは心苦しい。
どうするものか、と悩んでいると、クライドが声をかけてきた。
「サムよ」
「陛下。実はあの、相談したいことが」
「うむ。その前に聞いて欲しいことがあるのだ」
「なんでしょうか?」
先ほどまでのクライドと違い、どこか気まずそうな、言い辛そうな顔をしている気がした。
彼は言葉を探すが、見つからないようで、唸っている。
しばらくして、ゆっくりと口を開いた。
「ビンビン魔王遠藤友也殿についてである」
「……どうしましたか?」
どんな魔王だよ、と思ったが突っ込まない。
「その、とても言いにくいのだが、彼はスカイ王国にいないのである」
「……どういうことですか?」
「オークニー王国にいるのである」
「……え? それ、本当ですか?」
「うむ。本当である!」
サムはウルとエヴァンジェリンに視線を向けた。
ウルは、「抜け駆けしやがって」と文句を言っているが、エヴァンジェリンの顔色は今までにないほど青い。
「あ、あのさ、ダーリン!」
「……怖くて聞きたいくない!」
「聞けって! ゴーレムっていうか精霊たちはマジで仲間想いなんだよ! そんな妖精のゴーレムが、しかも長があの変態魔王にラッキースケベられたなんてことになったら」
「……あ、お腹痛い」
「やばいことになるぜ」
サムは気絶しそうになった。
友也くん「山にどうやってラッキースケベしろと!?」




