94「ゴーレムの長です」①
友也はオークニー王国の空を全力で飛んだ。
「想像していたよりも、大きい!」
山が起き上がったのだ、大きいと理解していたが近づけば近づくほど予想を超えた大きさであるのだと思い知らされる。
スノーデン王国とオークニー王国の国境は、友也のいた場所からかなりの距離がある。
オークニー王国王都から見えるのは、王都の街並みと、街道だけ。
王都に隣接する領地の街並みまでは見えない。
そんな光景の中に、国境の山だけは見えるのだ。
――それだけ山が大きな存在であるのだとわかる。
「……巨人? いや、そんな種族はいない。少なくとも僕は知らない。まさか、ゴーレムか? 人に干渉しない彼らがなぜ? 待て、これほど大きなゴーレムがそもそもいるのか!?」
友也も想定していない事態に混乱していた。
「本来ならば、オークニー王国に僕の影響を強くして、いずれスカイ王国にゆっくりと取り込んでもらおうとしていたのに……この体質が、ラッキースケベが憎い! ていうか、大陸東側ってこんなにイベントばかりなの!? 西側はもっと静かだよ!」
飛んでいるだけですることがないので、友也は延々と愚痴を言い続けている。
そんなことをしながら十分以上空を飛び、障壁を張っていながらも身体が凍るように冷え切ったとき、ようやく起きあがろうとしている山の眼前に辿り着いた。
「――待ってください!」
友也は声に魔力を乗せて大きな声を出した。
山がぴたりと止まる。
「僕は遠藤友也! 魔王をしています! あなたは何者ですか!?」
山や大地の精霊という場合もあるので、種族を固定にして問わない。
気難しい種族は、種族を間違えられると激昂することもある。
山サイズの存在が万が一暴れたら、いくら魔王であっても無す術がない。
「――私は、ゴーレム族の長」
「声が! 念話ですか!」
この世界に声を飛ばす技術はない。
声を念じて遠い誰かに伝える能力も、魔法もない。
唯一例外があるとするならば、一部の魔族と精霊たちが言葉の代わりに使う会話の手段だけだ。
(しかし、ゴーレムにこれほど大きな個体が。いえ、そうではない。今までずっと山として過ごしていたことにただただ驚くしかありませんね)
ゴーレムの逸話は知っている。
だが、実際に目にしてみると驚いてしまう。
(もっと小さな個体となら何度か会ったことはありますが……こういうことはエヴァンジェリンのほうが相性がいいのですが、彼女は今女神業が忙しいですし、僕が呼んでここまできてくれるかどうか)
幸いというべきか、相手は会話ができる。
会話に応じる気もあると見えた。
「改めて、僕は魔王遠藤友也と申します! ゴーレム族の方々とは何度か出会ったことがあります! ですが、その長がどのようなご用でしょうか?」
緊張しながら問う。
返事はすぐにあった。
「――私もビンビンの仲間に迎え入れてほしい」
「……今、なんて?」




