95「ゴーレムの長です」②
魔王遠藤友也は、一千年以上を生きる転生者だ。
日本で生きていた時間は十四年と短いが、こちらの異世界に転生してからの時間はあまりにも長い。
見知らぬ異世界で多くの失敗をした。
何度となく悔しくて涙を流したことがある。
命を奪った罪悪感に苦しんだこともあった。
人を信じることができず、それでも長い時間を経て友を得た。
仲間ができた。
ときには仲間を失い悲しみに暮れることもあった。
――長い経験や時間がいくつもの困難や試練を乗り越える力になってくれた。
「だからって、ゴーレムの長が念話でビンビンって言ってくるなんて誰が思うかぁあああああああああああああああああああああ!」
孤高の魔王は、たった数ヶ月で腹の底からツッコミができるほど成長した。
彼に影響を与えたのは、同郷の友人。
お互いに気づかなかったが、交流があった友人未満の関係だった。
名をサミュエル・シャイトという。
彼の周囲は賑やかで、楽しい。
巻き込まれやすいのか、トラブルメーカーなのかわからないが、サムはとにかく面倒ごとに愛されていた。
そんなサムと関わり始めて一年も満たない間に、友也の日常は一変した。
目まぐるしい日々だった。
最恐の魔王として彼の前に登場したときが懐かしい。
「――落ち着いてほしい。魔王遠藤友也よ。私は山ではなくゴーレムと呼ばれる種族である」
「はい、存じています! 落ち着けない理由はそこじゃないんですよね!」
友也の叫びに、ゴーレムの長が首を傾げる。
その巨体の首部分が動き、「ごごごごごっ」と耳がどうにかなりそうな音が響く。
長の身体に積もった土や木々が、地面に向かって滝のように落ちていった。
「待ってぇええええええええええええええええ! 大きさを考えてくださいぃいいいいいいいいいいい!」
「魔王よ。大きな声を出さずとも、聞こえている。安心してほしい」
「安心させたいのなら、もっと静かに、そっと動いてぇえええええええええええええええ!」
「…………これでも全力で静かに動いているのだが」
困ったような長の声が届く。
念話とはこうも感情の起伏が素直に伝わるのか、と驚くが、今はそれどころではない。
不幸中の幸いというべきか、近隣に人里はない。
大地の揺れで混乱が広がっている可能性は大いにあるが、目を瞑ることができる範疇――であると思いたい。
「あなたの大きさを考えてください! ていうか、今更ですが、なんでビンビン言い出したんですか!?」
驚くことばかりで突っ込みが遅くなったが、ゴーレムの長がビンビンと言い出した理由が気になった。
だが、友也は聞いたことを後悔することになる。
「――精霊たちの間で、クライド・アイル・スカイとビンビンは大人気だ」
「――なん、だ、と」




