87「グレゴリーとゴーレムです」②
「あ、あの、ゾゾムさん?」
「おー?」
「ゴーレムの長さんってどのくらい大きいんでしょうか?」
青い顔をしたサムがゾゾムに恐る恐る尋ねる。
すると、彼はぐるりと周囲を見渡し、視界の端にある遠い山を見た。
――まさか、とサムとグレゴリーの顔色がさらに青くなる。
「長はあの山くらいおっきいぞー!」
「待って、待ってゾゾムざん! あの山って、一座? それとも連なる山全部ですか!?」
「とにかくおっきいぞー!」
これはまずい、とサムは慌てた。
どれだけ大きいのか不明だが、山が起き上がるようなサイズならば大事件だ。
事情を知らず目にした者は、一目散に逃げるだろう。
冒険者たちなどは勇猛に戦うかもしれない。
「エヴァンジェリンさーん! ちょっと、ちょーっと!」
「なんだよ、ダーリン?」
エヴァンジェリンを呼ぶと、すぐにきてくれた。
「あの、ゴーレムの長さんがスカイ王国かスノーデン王国に来るって言っているんだけど」
「あー、ご愁傷さん」
「待って、諦めないでください! 止めて!」
「無理だって。私だって止めてやりたいけど、ゴーレムたちは独自のテレパシーのようなもので会話しているんだ」
「さっき、話せてたよね!?」
「私も竜だから。ゴーレムよりだから触れれば会話ができるんだけど……さすがにどこにいるのかわからない長と話すことはできないぞ」
「そ、そっか。参考までに聞きたいけど、長さんってどのくらい大きいの?」
「…………見たことはないけど、どっかの山脈がゴーレムって聞いたことがあるから、それなりにでかいんじゃないか?」
「――山脈レベル!?」
寒いはずが、汗が止まらない。
ゴーレムと良い関係を築きたいと思っているのは変わらないが、そんな大きなゴーレムが来て混乱が起きないかどうか不安でたまらない。
「あ、あのさ、エヴァンジェリンさん」
「どうしたの?」
「ゴーレムさんたちって山に擬態してそこに暮らしているんだよね」
「大半がな」
「じゃあ、そんな巨体のゴーレムさんが移動するって急に起き上がったらどうなる?」
「――あ」
エヴァンジェリンの顔がサムに負けず真っ青になった。
彼女は慌てて声を大にする。
「おい! ゾゾム! 長を呼ぶな! あ? 呼んでない? 長が来るって言ってる? 止めろよ! 止めろって、止めろっつってんだろ! まじで止めてください!」
しばらく会話を試みたエヴァンジェリンだったが、ぴたりと動きを止めた。
サムとグレゴリーが恐る恐る声をかける。
「エヴァンジェリンさん?」
「エヴァンジェリン様?」
エヴァンジェリンがサムたちに振り返る。
「――無理だって」




