85「ビン茶です」
「おう! サム! 戻ってきたか! こいつらかなり強いぞ! あと、この巨体のくせにめっちゃくちゃ速くてやべぇ! こいつらよりも大きな個体に会ってみたいな!」
「……ウルぅ……優しいゴーレムさんと喧嘩したの!? めっ、だよ! めっ!」
サムがグレゴリーとオーネィを伴いゴーレムの元に戻ってくると、満面の笑みを浮かべたウルが出迎えてくれた。
「喧嘩じゃないぞ。ちょっと暇だから遊ぼうぜ、って誘ったんだ」
「言葉巧みに……」
「悪いことしたみたいに言うなよ。あと、そのおっさんをいつまでお姫様抱っこしているんだ?」
「あ、すみません、グレゴリー様」
友也とカルミナがいなかったので、サムはグレゴリーを抱き抱えてこの場に飛んできたのだ。
オーネィはヴァルザードがエリカを腕に抱えて、背中に背負った状態で連れてきた。
ボーウッドは飛べないが、軽く疾走してこの場にいる。
オーネィの秘書たちはそれぞれ個人で走ってくるようだが、まだ着いていない。
「構わぬ。運んでもらって感謝する。あれほど速く移動できると心地よいものだ」
グレゴリーはサムに礼を言うと、ゴーレムを見て感嘆の声を漏らした。
七、八メートル以上あるゴーレムは圧巻の一言だ。
「美しい。生命に満ち溢れた、なんと優雅な……」
ゴーレムを見たグレゴリーの、感想だった。
サムとウルは「でかい!」が第一印象だったので、ちょっと感覚のセンスが無いことに気づき頬を赤くする。
「これはこれは壮観ですね。ゴーレムは初めて見ましたが、不思議と恐ろしいなどという感情は出てきません。なるほど、サミュエル殿の仰っていた優しいの意味がわかりました」
オーネィもゴーレムを見て感動を覚えている。
「うわ」
「すごい」
ヴァルザードとエリカは、言葉がないようだ。
「世界は広いですねぇ」
ボーウッドは、初めてみるゴーレムに世界の広さを感動していた。
「ダーリン! ようやく帰ってきてくれた!」
「エヴァンジェリンさん、寒いのにいてくれてありがとう」
「ううん。それはいいんだけど、暖かいお茶くれる? もう飲み終わっちゃった」
「あ、ごめん。はい」
「ありがとー!」
アイテムボックスから暖かい紅茶を取り出し、エヴァンジェリンに渡す。
彼女は嬉しそうに紅茶を飲み、白い息を吐き出す。
「女神よ、先ほどから私のお茶を分けようと申しているのだが、遠慮されてしまったのである」
肩を落とすクライドだが、エヴァンジェリンが目を釣り上げて吠えた。
「ふざけんな! 遠慮じゃねえよ! 拒否だよ! なんだよ、ビン茶って! 千年以上生きているけど、初めて聞いたぞ!」
「元気になるのである! お味も保証するのであるぞ!」
「変な意味で元気になりそうで困るんだよ!」
「はっはっはっ、女神とはいえおませさんであるな!」
「……ぶっ飛ばしてぇ!」
拳を握りしめるエヴァンジェリンを「まあまあ」とサムが宥める。
「サムよ、寒い中感謝するのである。さ、ビン茶を飲んで温まるのである」
「いえ、いいですぅー!」
サムもクライドからビン茶を勧められたが、もちろん断った。




