48「ぶっ飛ばす相手を見つけました」①
スレイマンはバーザロフ公爵に駆け寄り、お互いの無事を喜び合うように抱きしめた。
「よく生きてくださいました!」
「心配かけた! 父も母も生きている!」
「それは、それは、本当に! ようございました!」
腕に力を入れて、スレイマンが本当にこの場にいると確認するように抱きしめたバーザロフ。
しばし無言で抱き合っていると、ゆっくり腕を離す。
老人の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
「……申し訳ありません。この歳になると涙もろくなってしまいました」
「構わん。よくぞ生きていてくれた。しかし、襲撃されているとは思わなかったぞ」
「……王宮がなくなり、陛下と王妃様、そして殿下までが消えてしまい……バーブリン公爵が王を名乗りはじめたのです」
「……バーブリンめ。ネイモンを担ぎ上げていたので野心があるとは思っていたが、こんな国の王になってどのような得があるというのだ」
呆れと失望がスレイマンに浮かんでいた。
仮に王になっても、スノーデン王国では贅沢はできない。どれほどの欲望があるか知らないが、満たされることはないだろう。
「奴の考えはわかりません。しかし、我が一族をはじめ、陛下に忠誠を誓う貴族は敵視されておりましたので、邪魔だと思われたのでしょう」
「苦労をかけた」
「スレイマン様が生きておられたことをこうして知ることができただけで、報われます」
スレイマンも涙を流していたが、目元を拭った。
彼の瞳には怒りが宿っていた。
当たり前だ。
父王に毒を盛り、自分を幽閉し、母を地下牢に放り込んだネイモンとその母アリョーシャを担ぎ上げたのがバーブリン公爵だ。
それだけでも憎々しいというのに、王を名乗った挙句、忠臣に襲撃をかけた。
「……ところで、殿下。そちらの方々は?」
「――私を救ってくださったスカイ王国の方々だ。おひとりは、魔王様であらせられる」
「な、なんと!」
「魔王遠藤友也様、スカイ王国宮廷魔法使いサミュエル・シャイト殿、ウルリーケ・ウォーカー・ファレル殿、サミュエル殿の祖父であるカリアン・ショーン殿だ」
紹介されたサムたちはお辞儀をした。
「これはこれは……遠いスカイ王国の方々に、かつて敵対したこともあった我が国の王族を助けていただけるとは……感謝の言葉しかございません」
(言えない! この国を滅ぼしに殴り込みかけたら偶然と偶然が重なった結果だなんて言えない!)
そもそも、サムたちにとって王は殺害対象だった。
ネイモンが王を名乗り、やりたい放題だったことや、グレゴリーたちが良識があるとわかったらから殺さなかっただけに過ぎなかった。
もちろん、感謝している人間に口が裂けてもそんなことは言えない。
「……しかし、魔王様がこちらの大陸にいるとは思いませんでした。スノーデン王国は、遠い昔に生まれた魔王ロボ・ノースランド様のことを存じていますので、魔王様方の存在は疑ってはいませんでしたが、お目にかかることは初めてです」
「ご紹介に預かりました、魔王遠藤友也です。サミュエル・シャイトをはじめ、スカイ王国に懇意にさせてもらっています」
「……やはり、噂は本当でしたか。スカイ王国は魔王様方をはじめとした、魔族と積極的に交流をしているというのは」
「はい」
友也は驚くバーザロフ公爵に短く返事をする。
長々と喋るつもりはないようだ。
バーザロフ公爵は続いて、カリアンを見て目を丸くしていた。
カリアンも少し困った顔をして会釈している。
どうやら知り合いのようだ。
「……カリアン・ショーン枢機卿殿?」
「今の私は、神聖ディザイア国から出てスカイ王国に身を寄せています。愛の女神エヴァンジェリン・アラヒー様の神殿で、一介の神父として遣える日々です」
「そうでしたか。良い選択をなされましたな」
「――ええ」
バーザロフ公爵は、神聖ディザイア国のことを知っているようだ。
彼の目には、カリアンへの羨望が見えた気がした。
「よし! じゃあ、挨拶がおわったってことで! バーブリン公爵家を更地にしようぜ!」
静かにしていたウルだったが、もう話は終わりだとばかりに大声を上げた。
「ひぇっ、荒ぶる幼女!」
バーザロフ公爵は、おそらく先ほどのウルの登場を見ていたのだろう。
とても怖がっていた。
まさか北の地に女神エヴァンジェリン・アラヒーの名が轟くとは、スカイ王国でのんびりお茶を飲んでいる本人は夢にも思っていなかった。
エヴァンジェリンさん「マジで!?」
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異世界帰りの主人公由良夏樹が勇者の力を持ってして現代日本で神や魔族を相手に暴れまくるお話です。ぜひお盆休みの読書にお読みいただけますと幸いです。
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