38「想定内のはずが想定外でした」②
友也にラッキースケベされた女性兵士の懐柔は簡単だった。
レプシーがローションまみれになった彼女たちを綺麗にし、サムが清潔な温かい服と、美味しい食事を提供すると、
「忠誠を誓う!」
「隊長殿と一緒にお世話になります!」
ふたりは感涙して、サムたちの軍門に降った。
(それにしても、仮にも自分の国を守る兵士に与える装備が剣一本ってどうなんだろうねぇ)
女性兵士の格好は、隊服の上に厚手のコートを羽織り、マフラーを首に巻いて、ニット帽をかぶっていた。
武器は長剣を一振りだけ。
最初こそ威勢がよかった彼女たちだが、寒さに震えているのがわかった。
サムはアイテムボックスからウイスキー、ワイン、ビールを取り出し並べた。
女性兵士が「ごくり」と喉を鳴らすのがわかった。
「いやー、寒い日にはお酒が飲みたいよねぇ」
「くっ、殺せ!」
「いや、別にくっころを求めているわけじゃないんですけど」
「ならば……はっ、そこの破廉恥な男に肉体を差し出せと言うのだろう!」
「誰が破廉恥ですか!」
友也の抗議の声に、女兵士は鼻で笑った。
「囚われの身になった美しい女性がどのような目に遭うかわかりきっている」
「……隊長殿。ぐすん」
「あのさ、ご飯食べさせてあげて、洋服もあげて、なんでそこまでしてあげたのに辱めなきゃならないの? そういう態度なら、雪の中に全裸で放り出そうかな」
「申し訳ございませんでした!」
「ごめんなさい!」
兵士はその場にひれ伏した。
さすがに彼女たちを言葉通りに雪の中に放り投げる気はない。
「それであの、どうすればそのお酒をいただけるのでしょうか?」
「ごくり」
「情報が欲しい」
「情報とは?」
「この国の現状、貴族、王族。あと――勇者に関してかな」
「――っ、まさか勇者を存じているのか?」
「もちろん」
サムは勇者二人が襲撃してきたこと、勇者ひとりを保護していることは言わなかった。
悪人ではなさそうだが、どこまで信用できるか不明だ。
「……わかった。情報を渡そう。久しぶりの食事と上等な衣服の礼したいのもあるが、私はあの勇者を許せない。お前たちがどのような人物で何を企んでいるのかわからないことは不安だが――勇者を殺してくれるのだろう?」
「場合によっては殺すよ。今はこれしか言えない」
「いや、それだけで十分だ。私の知る、情報を教えよう」
女性兵士はサムに握手を求めるように手を差し出した。
「名乗るのが遅れたが、私の名ジーナ。警備兵の隊長をしている」
「私はタマラです!」
「俺はサミュエル・シャイト。サムって呼んでくれ」
握手に応じ、手を握り名乗ったサムにふたりは驚いた顔をした。
「――っ、夜の魔王サミュエル・シャイト殿か!?」
「ひえっ」
このような北の国で、自分がどのように思われているのか不安になり硬直するサムの肩を友也が叩いた。
「さすがビンビンの血脈ですね」




