36「子供たちのこれからです」
子供と違い、大人たちは想像していた以上に食べた。
料理のストックはまだあるが、限界がある。
個人的に薫子に作ってもらっていた、味噌汁、おにぎり、カレーライスはこの国の民に受け入れられるか不明なので、心配がある。
一応、ポトフが鍋ふたつあるので、それを食べてもらって、その後は――冷たいと思うが、勝手にやってもらうしかない。
大人たちの建物から子供たちのいる建物に戻る。
暖炉があり、隙間風もないので中は暖かい。
子供たちの中には、お腹がいっぱいになったことと暖かさのおかげで毛布を巻き付けて眠っている子もいる。
おそらく、今まではまともに眠ることさえできていなかったのだろう。
「……友也、レプシー、これからどうする?」
起きている子供もいるので、サムたちは小声で話すことにした。
眠れない子供は、おそらく少し離れているが大人がまとまっていることや、眠っている間にサムたちがいなくなってしまうのではないかという不安があると思われた。
子供に不安を与えたくないので、飴を与えておいた。今は、美味しそうに飴を舐めている。寝ている子供たちも起きたら食べられるようにきちんと用意していた。
「保護は難しいかな? このまま去ることは、子を持つ親として難しい」
レプシーの言葉に、サムと友也は頷く。
「俺も父親になるから、子供を放置して帰るって言うのはなんか嫌かな。いや、親とかじゃなくても、食事を与えるだけ与えて、はいさようならっていうのは無責任だと思う」
「そうですね。一時的に子供たちをぬか喜びさせるだけで、また絶望の日々に戻ってしまうでしょうね。僕も望みません」
サムたちが情報を得て、子供たちと別れたとする。
子供達は再び、腹を空かせるだろう。
建物はあるが、この寒空の中、薪を手に入れらるとはわからない。
サムたちが追い払った大人たちに、この場所を奪われる可能性だっている。
(食料を一日、二日与えたって何もならない。子供たちのことを考えると、未来まで保護しないと意味がない)
飢えた子に食事を与えても、また子供は飢える。
境遇が変わらなければ、同じことの繰り返しだ。
「幸いというべきか、子供達は仲間思いのいい子だ。この国じゃ駄目でも、スカイ王国なら新たな生活を送れるはずだよね」
「……確証はできませんが、可能性は大きいです」
「個人的にはスカイ王国の負担を増やすことは好ましくないが、子供を優先したい」
「幸い、というべきか、ステラが関わる孤児院もあります。善良な先生が子供を立派に育ててくれるみたいです」
妻のステラが関わる孤児院は、子供たちの長所を伸ばし、のびのびとした日々を送らせてくれる。
才能を見出された子が、支援を受けて専門分野の勉強をすることもできる。
中には、養子に迎えられる子もいる。
「大人たちはどうしよっか? 個人的には、勝手にやってほしいと思っている。俺たちは慈善事業じゃないから、全員は救えない」
「……そうですね。赤子を抱えた女性は保護してあげたいですが、そうすると、誰も彼も助けなければならなくなりますものね」
「ままならないものだね」
救えるものなら全員を救いたいが、そのようなことをサムにできはずがない。
ならば、せめて手の届く範囲だけでも助けたいと思う。
「サム、気づいていますか」
「ああ」
「どうやら、先ほど追い払った男が仲間か、兵士でも呼んだようだね」
建物に近づく気配を感じ取った。
数はざっと十人。
魔力らしい魔力を持つ者はいない。
相手ではなかった。
「さてと、せっかく子供たちが安心できているんだ。邪魔をするなら、それ相応の罰を受けてもらおうかな」




