56「可能性はあるかもしれません」
「夫のばぶばぶは横に置いておきましょう。夫も会いたがっていたので、いずれ会う日もくるでしょう」
「……えっと、俺は会いたくないかなぁ。どんな顔をして会えばいいのかわからないんですけどぉ!」
不安になるサムに、ウル、オフェーリア、ゾーイが慰めるように順番に肩を叩いた。
「……夫は孫の妻と婚約者に会うことを楽しみにしているわよ」
「うえ」
「……まあ」
「嫌だ!」
自分だけではなく、ウルたちも祖父と会うことが決まったことにサムは嬉しそうに親指を立てた。
(……とりあえず、いろいろな理由をつけて会わないようにしよう)
「ところで、サム」
「はい?」
「カリアン・ショーン殿は、メラニー殿のお父上であり、あなたの祖父で間違いないわね?」
「ええ」
決定的な証拠はないが、友也や白雪、レプシーから見るとサムの魔力とカリアンの聖力の波長が似ているようだ。
これだけで親族であることはわかるらしい。
魔族特有の感覚なのか、サムにはわからない。
しかし、不思議なことにサムにはカリアンが祖父であることの根拠のない確信があった。
「……とても言いづらいのだけど、貴族のご令嬢や、離縁して独身になったお嬢さんなどから、ぜひに、とお誘いがあるようよ」
「ぜひに?」
「サム様……結婚を前提にお付き合いしたいということです」
「……ほえ?」
「特に、その、皇太后様を介してですと、断るにも一苦労といいますか、断らせたくないから皇太后様までお話を持って行かれたのではないでしょうか」
何が起きたのかわからないサムに、オフェーリアが耳打ちをしてくれた。
「……なるほど、つまりおじいちゃんがモテ期か」
「いや、それですませたらいかんだろう!」
ぺしん、とゾーイがサムの頭を叩く。
「そういえば、メイドたちからの人気も高いんだよな」
腕を組んだウルが思い出すように言った。
「そうなの?」
「さりげなく十代のメイドに手をかしたかと思えば、時間があるからと水回りの仕事を率先的に引き受けてくれる。十代から四十代までのメイドから熱い支持を受けているぞ」
「すげぇ!」
「さらに男性使用人の悩みを聞いたり、恋の手助けをしたりと、プライベートでも聖職者のようだからダブルお父様まで最近悩みを相談してるとか」
「ダブルお父様て」
カリアンはサムの知らないところで、いろいろな人と交流を深めているようだ。
「同じくらいモンド・ムンドも人気があるんだが、ほらオクタビアがモンドに恋しちゃってるだろ?」
「そうだね」
「初々しい少女を見守るように応援しているから、モンドは残念ながらいい人止まりだ。しかし、メイドの中にはオクタビアの次でも、と考えている奴もいるぞ」
「おじいちゃんもモンドさんもすごいな!」
「――なによりも、変態じゃないのが大きいらしいな!」
「スカイ王国っ子には真似できないね! そりゃ、勝てないわ!」
カリアンにもし再婚の意思があれば、声をかけてほしいとヘイゼルに言われるも、サムはきっと祖父は断るだろうと思う。
彼の祖母への気持ちはあまりにも大きい。
もし、どこかに、祖父の祖母への気持ちごとまるっと受け入れられる人がいるのなら、その時は応援してようと思った。
メイ・リー・リーさん「いざ、スカイ王国へ!」
綾音さん「ちょ、どったの?」
鳳凰院さん「え? なになになんでござるか?」
メイ・リー・リーさん「私、祖母になります」
綾音さん「無理っしょ! 人間が女神になるより無理っしょ! まず母になれよ! 一足飛びするなよ!」
鳳凰院さん「……リー殿、まずは正気に戻って……なんと決意に満ちた瞳をしているでござるか。綾音殿、リー殿は本気でござるよ」
綾音さん「ちょ!? 目を見てなにがわかるってわけ!?」
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