55「綾音のメイの友情です」③
じゃあ、誰が導いたのかっていうのが、問題っすね。
一応、少しだけ。
鳳凰院たちの召喚と、サムの転生は違います。とだけ。
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「よりによってスノーデン王国ですか」
メイ・リー・リーが苦い顔をしたので、綾音が尋ねる。
「知ってるの? 私の時代にはなかったけど」
「……綾音が生きていた時代を私が知らないのでなんとも言えませんが、レプシー・ダニエルズが暴走し数多の国が滅び、スカイ王国建国の勇者が現れた後にできた国ですからしかたがありません」
「……なにそのレプシー・ダニエルズって怖い」
鳳凰院は、こちら世界最強の魔王を知らなかったようだ。
「神聖ディザイア国は貧しいですが、もっと貧しい国がスノーデン王国です」
「……神聖ディザイア国よりって、終わってるじゃない」
「ええ。その通りです。しかし、あの国が恐ろしいのは、民から平気で搾取しているところです。神聖ディザイア国もしていますが、善性の人間もいます。仮にも宗教国家ですからね。しかし、スノーデン王国は、魔法使えるから貴族、貴族だから偉い、偉いなら何をしてもいいという感じで、狂っているのです」
「そんな国に召喚されたって、クズの素質があるのかもしれないわね」
じとっ、とした目を綾音から向けられて、鳳凰院は焦る。
「ご、誤解しないでほしい! 拙者は日本では死ぬ寸前までブラック企業に酷使されていたのでござる! 虐げる側になどなったりしないでござるよ!」
「急に口調に個性持たせんな! 逆に怪しいんだけど!」
「信じてほしいでござる! ――白状すると、召喚時は調子に乗っていたことは否定しないでござるよ」
「……こいつ、口調をこのまま通すつもりだな、おい!」
おそらく鳳凰院は忍者的な口調にしたかったのだろう。
登場時に普通の口調だったが、ここで「ござる」口調を定着させようと企んでいるように見えた。
(はぁ。どいつもこいつも個性的な奴らね)
「まあまあ、聞いてほしいでござるよ。拙者もスノーデン王国に召喚された時は、選ばれし忍者と勘違いし、ちょっと調子乗っていたでござる。しかし」
鳳凰院はその時を思い出したのか、苦しげな表情をした。
「平民は飢え、人として扱われていないでござる。平和なジャパンからやってきた拙者には、理性を取り戻すのに十分すぎる光景でござった」
「……異世界ファンタジーなんて創作だからいいのよ。実際にやらされたらたまんないわ」
「そうでござるね。拙者の付き人という名の奴隷が与えられましたが、好きにしていいと言われたでござるよ。まるで物のように……光のない瞳でなんでもしてください、と十代の少女が言うのでござる。正直、欲望など抱けないでござる」
「そりゃそうでしょうねぇ」
「しかし、召喚された他の勇者の中には、その、気にせずやりたい放題の奴もいるのも事実! そして、その者が女神綾音殿の始末をするために早々に動き出したでござる。拙者は、綾音殿をお守りし、スノーデン国から子供達を救い出したいのでござるよ!」
「それよ!」
「どれでござるか?」
綾音の指摘が抽象的だったので、鳳凰院は首を傾げる。
「あんたがちょいちょい距離感縮めてくるのも気になるけど! なーんで、日本から召喚された勇者が複数人もいて、しかも私の命を狙ってくるやつと、私を助けようとするやつに分かれてんのよ!」
「なるほど、気づいてしまったでござるな」
「気づかないわけないでしょう!」
「正確に言うならば、この世界を救えという漠然とした使命を得ているものもいるのでござるよ。拙者は、綾音殿を救え、と。しかし、どう救えとはいわれていないのでござる。そして、使命と言いながら、絶対ではないのでござる」
「なによそれ」
「推測でござるが……」
言い辛そうに、鳳凰院が躊躇った。
「言いなさいよ」
綾音が促すと、恐る恐る口を開いた。
「拙者たちをこの世界に導いた「何者」かは、きっと綾音殿や拙者たちを見て――楽しんでいるのでござろう。つまるところ、拙者たちの存在は、良くて娯楽、悪ければ駒ですらない、そう判断しているでござる」




