57「パパは辛そうです」
魔法少女のお披露目パーティーは無事に終わった。
ミシャをはじめ、レスリー、ゾーイ、サム、そしてウルと錚々たるメンバーが魔法少女となったことに誰もが拍手喝采し、その後の握手会も大盛況だった。
後日、城下町でもお披露目イベントをするそうだが、辞退はできないようだ。
サムと、ウルとゾーイが、死んだ目をして「せめて晴れた日にしてください」とお願いした。疲弊し切った魔法少女たちは、抵抗しても無駄だと思い、せめてとばかりに天候だけでもと要求した。
おかげで数日は吹雪きそうなので、しばらく魔法少女の衣装に袖を通さないでいいようだ。
そして、サムとウルは、未だ盛り上がる会場を抜けて、グレン侯爵家当主のジャスパー・グレンと別室で会っていた。
――魔法少女の姿のままで。
「その、なんだ、私が言うことではないのだが、大変だったな」
「……労っていただけるだけで嬉しいです」
「奴らめ……私たちが嫌がっているのを、嫌も嫌よも好きのうちだと勘違いしやがって。どういう感性をしていたらそうなるんだ」
ソファーに座り、ぐでん、としているサムとウルにグレン侯爵の顔が引き攣った。
彼の幼い娘が嬉々としてサムたちと握手していたのは秘密にしておこうと決意する。
「さて、話をしたいのだが……平気かな? 主に精神面で?」
「平気に見えますか?」
「見えないね」
「……復活した女神にボコボコにされていた時よりも辛い」
「……不治の病にかかったと知った時よりも辛い」
「反応に困ることを言わないで欲しいのだが?」
ごほん、と咳払いをしたグレン侯爵は、テーブルに置かれたワインを飲み干した。
「単刀直入に言わせていただこう。サミュエル・シャイト殿」
「はい?」
「我がグレン侯爵家から嫁をもらってくれないだろうか?」
「――あ?」
サムよりも早く反応したのはウルだった。
彼女はドスの効いた声を出すと、身を乗り出し、グレン侯爵を睨む。
睨まれた彼は額に汗を滲ませて、視線を逸らした。
「政治的な話もないと言ったら嘘になるが、ヘイゼルおばさま……つまりサムの祖母であるヘイゼル様のご要望というか、気になさっていてな」
「……ヘイゼルって、王太后だよな? 私もなんどか挨拶をした記憶があるけど、なぜだよ?」
「君は知らないのか? サムは、亡きロイグ殿下の息子だぞ」
「……あーあー! 聞いたような聞いてないような! そっか、まじか、サムはあのビンビン言い出したクライド陛下の血族か」
「ちょ、その言い方やめてよ、ウル! というか、ウォーカー伯爵家だって王家の家を少なからず引いてるじゃない! ウルの身体にもビンビンの血が!」
「いや、私は異世界で転生したので、血的には他人だよーだ! いち抜け!」
「ずーるーいー!」
サムとウルの漫才を見ていたグレン侯爵は、ワインをグラスに注ぐと一気の煽った。
「おいおい、お行儀の悪い飲み方だな。お酒に申し訳ないと思わないのか」
「そんなことはどうでもいいのだ! 私は、サムの嫁入り相手を一族から探している過程で知ってしまったのだ!」
「な、なんだよ、急に」
「上の娘がギュンター・イグナーツの大ファンだった!」
なんとも言えない沈黙が走った。
ウルから目配せを受けたサムは、頷いて、アイテムボックスからとっておきのワインを数本取り出した。
「とりあえず、飲もうぜ。なーに、娘なんていつか嫁に行くもんだ。それが変態ってこともたまにはあるだろ」
慰める気があるのかわからないウルの言葉に、グレン侯爵は顔を覆って泣き始めた。
そりゃパパサイドなら泣くよね。
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