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プロローグ 悪夢の始まり
「先生、大丈夫ですか!」
古く青白い蛍光灯だけが頼りの、旧校舎の薄暗い廊下の片隅。
滝沢直斗は、床に仰向けに倒れた紺色のスーツ姿の女性のそばに膝をつき、そっとその肩へ手をかけた。
――まだ温かい。気絶しているだけだ。
必死にそう言い聞かせながら、身体を支え、起こそうと傾ける。
だが、そのとき――
光が彼女の細い首筋を照らし出し、直斗は息を呑んだ。
そこには、恐ろしいほど鮮明な赤紫色の痕が刻まれていた。
布のように幅のあるもので、力任せに締め上げられた痕。
すぐ下では、引き剥がそうと自らの爪で掻きむしったのか、暗い血がにじんでいる。
――気絶なんかじゃない。
死んでいる。
その理解が、直斗の全身の血を一瞬で凍らせた。
恐怖で声も出ない。
ただ、さっき暗闇の奥へ音もなく駆け去っていった「あいつ」の黒い背中だけが、脳裏に焼き付いて離れなかった。
今から一時間前――




