#15~堕天使ルシフェルによるドM再生産計画
とうとう全人類ドM化計画の支配管理側には死神までが付いた。
コレにより人類はもう抗えない所までドM化されるかに見えたが、
一点、盲点があった。
それはこれから生まれて来る命達であった。
彼らはもちろん、親や社会による教育によって、
本来持って生まれた性質よりも後天的にM性を植え付けられる。
しかしそこには一定数の反発もあり、特に反抗期を迎えると
ドM化に疑問を持つ者も少ないはずだ。
そこで今回はそうした生まれ来る命達の設計図さえも書き換える、
堕天使の話だ。
これによりいよいよ人類はドM化社会を免れる術を失うかも知れない。
堕天使、ルシフェル。
ツインテールの緑髪で外見は10代の少女のようである。
黒い翼を持ち、基本的には現世よりも別世界に住むのであるが、
時折現世に現れて人間に啓示を与えたり、関与する事もある。
そんな彼女が、今回死神ハデスからの誘いによって、
丸木戸 紗土香達のアジトに呼ばれた。
ルシフェル
「あのぅ、ここがハデスちゃんが呼んでくれた、『良い場所』?」
ハデス
「あら、いらっしゃい。本当に来てくれたのね。
大丈夫よ、ここには人間はいない・・・あ、一人、半人間がいるか。」
それを奥で聞き、板目が機嫌を損ねる。
板目
「あのさぁ~、何で人外って半分人間ってだけでそんな風に区別するワケ!?
本質的には普通の人間じゃ無いんだから、アタシだって人外じゃん~。」
紗土香
「まぁまぁ、つける。
昨夜は可愛がってあげたでしょう?
それとももうこれから、あんな淫靡な夜はお望みじゃないのかしら?」
板目
「わっ、紗土香様、わかりましたってば~。
ちゃんと半分人間である事を自覚してそれを恥じますから、
また良い事した時は強く深く痛く抱いて下さいね?」
紗土香
「もちろんよ、約束するわ。
ところで・・・貴女が堕天使ルシフェル、ね?」
ルシフェル
「え、えと、そうですけど、私正直、ハデスちゃんに呼ばれて、
ワケわからないままココに来ちゃって、さっきのお二人のご関係とか、
そういう世界に来るつもりじゃなくて・・・。」
紗土香
「あぁ、違うの。さっきのは私とつけるだけの話よ。
それでね、早速なのだけど。
今現世では、人類のドM化が始まっているのは知ってるかしら?」
ルシフェル
「えぇ、時代の流れで、人間がドM化している、と言うのは知ってます。」
紗土香
「それで、お願いがあるのだけど・・・。
これからせっかく大ドM時代が来るのに、生まれて来る子供達が
ドMじゃないと可哀そうでしょう?
だから、これから生まれて来る魂達に、ドM化を刻み付けて欲しいの。
貴女なた、出来るでしょう?」
ルシフェル
「それは確かに可能ではありますが・・良いのかな、そんな事しちゃって。
時代によって魂に一定の方向性を与える事は確かにあるけど、
ここまで大規模なものとなると・・・何かが壊れてしまいそうで。」
紗土香
「それじゃあ、人々の様子を見て頂戴。」
紗土香は、ドM化した人々の暮らしぶりをまとめた映像を流した。
それは意図的に作られた映像ではあったが、確かに一部の側面として
事実を切り抜いたものでもあった。
ルシフェル
「コレを見ていると、人間って本当はドMな方が幸せなのだろうな、
と感じますね。略奪や侵略は一時は良くても、すぐにまだ飢えや渇き、
結局いつまで経っても満たされない。
それならば、最初から全てを管理支配されている方が幸せ、
これはとても辻褄が合う、素晴らしい哲学のように感じます。
だけど、本当に良いのでしょうか・・・。
正直、決めかねています。」
紗土香
「それじゃあ、コレを見て頂戴。」
紗土香は次に、戦争・紛争・内戦。
あらゆる人類の攻撃性による、負の側面を見せた。
紗土香
「コレはあくまでほんの一例ですわ。
こうした攻撃性により人類は自ら滅びる。
それを防ぐ唯一の手段こそが、ドM化計画。
いかがかしら?」
ルシフェル
「正直、その映像は少しズルい気がします・・・。
もちろん私も知らないワケでは無いけれど、
あえて今直接見せ付けられると、
あなたの理念に共感せざるを得ない。」
ルシフェルが紗土香の提案に堕ちる様は、
まさに堕天使の堕天を象徴するようだった。
紗土香
「理念にご共感頂き、大変嬉しいですわ♡
さぁ、ルシフェルさん。私に付いて来て。」
言われて、ルシフェルは紗土香の後を付いて行く。
プライベートジェットを利用しようとする紗土香に、
自分の羽を使った方が効率的だと言い、紗土香を抱きかかえる。
そして紗土香の指示の通りに進むと、そこには病院があった。
紗土香
「あそこですわ。降ろして、いや降りて下さい。」
ルシフェルは屋上に降り、紗土香と共に屋上の扉から建物内に入る。
そして、『分娩室』へと向かう。
紗土香
「本日この病院では、同日に5つの出産が予定されているの。
そこで生まれる子供達の魂に、ドM化の印を刻んで欲しいのですわ。」
ルシフェル
「なるほど、わかりました。それでは・・・。」
ルシフェルは今まさに生まれようとする子供に入ってくる魂を掴み、
それにタトゥーを掘るような要領で何かを刻み込んだ。
そしてそのままパッと手を離すと、魂は母親のお腹の中へと向かう。
そして、出産。
立ち会っていた、まだドM化していない父親が言う。
「おぉ、生まれたか!!立派な男の子だな。
この子は今のおかしなドM化の時代の中でも、
ちゃんと積極的に自分で物事を考えて動き、
古き良き野心溢れる男子として頑張って欲しいなぁ。」
それを見ながら、紗土香がクスクスと嗤う。
「あ、哀れ・・・ですわね(笑)
プ、クッ・・・だって、アレ、どう見ても・・・
もうあの、こど・・も・・・ドMでしょう?」
紗土香は笑いを堪え切れずに、言葉を詰まらせながらルシフェルに尋ねる。
ルシフェル
「えぇ、確実に印を刻みました。
本当はあんな事をしなくてもドM化は出来るのですが、
あの子供に関しては絶対にドM化は免れません。
あそこまで確実にやってしまうと、私自身でももう
あの魂からドM化を取り除く事は不可能です。」
紗土香
「プッ・・・ぐ・・・アハハッハー!!!
こ、滑稽、ですわ・・・だって、だってあの赤ん坊はもう既に(笑)」
紗土香は随分とツボに入ってしまったようで、笑い転げそうになっている。
母親が赤ん坊をくすぐるイタズラを仕掛けた。
すると赤ん坊はただ笑うのでは無く、恍惚の表情を浮かべた。
それはまるでドM化した者がくすぐられて快感を感じる顔のように。
父親が不安そうな顔を浮かべる。
「え・・・?
今の顔、どう見てもドMのような・・・嘘、だよな?
だって俺はドSで、お前はノーマルだ。
ドMの子供なんて、生まれるはずが無い、そうだよな!?」
母親が耳を塞ぎながら答える。
「あなた、大声で怒鳴らないで!!
心療科の先生も仰っていたじゃない。
遺伝的に考えて、私達からドMの子供が生まれる確率はほぼ0だって。」
父親は愕然としながら言う。
「そう・・・だよな。まさか俺達の子供がドMだなんて・・・、
無い・・・よな?」
しかし不安がぬぐえず、父親はトイレに行き吐いてしまった。
ドM化は一部の人々からは非常に忌避され、もし近親者にドMがいたら
牢に閉じ込めて世間から隠してしまいたい、それくらいの恥だった。
紗土香からするとこうした前代的な者の姿を見る事は愉悦だった。
とっくに変わっている時代を読めていない愚か者。
それは身分不相応だったり、場違い、あらゆる笑いの根源。
ドン・キホーテの喜劇のような滑稽感。
紗土香は暫くそこにうずくまり、笑いが収まるまでジッと耐えていた。
ルシフェルの加入後、四拝はいつもの如く文句を言った。
「部屋がメス臭くなる。
ダメだ。もうコレ以上、メスをこの部屋に詰め込むな。」
しかしこの部屋は元々、紗土香のものである。
気密性を高くする必要がある為換気扇が設けられない事を告げ、
紗土香は四拝に言った。
紗土香
「だけど、もうそろそろ全人類ドM化計画は私達側に傾きますわ。
それは坂を転がり始める球のように、一度勢いがつけばもう、
止まる事はありませんわ。」
ルシフェルの加入により、その計画をより盤石にした紗土香達。
ついに人類にドM化に抗う術はほぼ取り上げられてしまった。
紗土香はこの日、勝利の美酒を仲間達と嗜んだ。




