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ゲームの勇者と入れ替わりました  作者: エア


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第14話『俺たちと一緒に戦ってくれ/親友の変化』

良明サイド


 レイズの塔に泊まった翌朝、机の上にカイトからのメモが置いてあった。

 俺は飛び起きて手に取った。

『良明へ。

 隼人が藤銀次に相談に行っていた。

 話した後、「すっきりしたけどぼーっとする」と言っていた。

 感情を吸われている可能性がある。今日のところは引き離したが、時間がない。

 藤銀次の目的と正体を、早く突き止めてくれ。

 こっちだけでは限界がある。

 それと——良明、お前は今どこにいる?

 レイズに会えたか?

 カイト』

(隼人が……)

 嫌な予感が膨らんだ。

(急がないといけない。でも今の俺にできることは、カイトに情報を伝えることだけだ)

 俺は急いでメモ帳を取り出した。

『カイトへ。

 レイズに会えた。全部話す。

 まず、隼人のことだ。

 藤銀次がやっていることは、カオスに負の感情を届けるための「感情の収集」だと思う。

 カオスは人の欲望や負の感情を餌にして力を蓄える。

 藤銀次はその手先として、現実世界で負の感情を集めているはずだ。

 隼人が「ぼーっとする」というのは、感情を少しずつ吸われているサインかもしれない。

 できるだけ藤銀次から引き離してくれ。

 次に、レイズから聞いた話だ。

 この世界の異変を止めるには、カオスを封印するしかない。

 カオスが力を失えば、壁の崩壊が止まり、俺たちは元の世界に戻れる。

 そして、現実世界に現れた藤銀次も力を失うはずだ。

 つまり——俺がカオスを倒せば、全部解決する。

 レイズはカオスの居場所も教えてくれた。

 北の魔王城だ。ゲーム通りの場所だ。

 ただし、今の俺たちの実力ではまだ早い。もう少し準備が必要だと言っていた。

 カイト、もう少し待ってくれ。必ず戻る。

 良明』

 書き終えて、俺は息を吐いた。

 部屋の扉が開いて、レオが顔を出した。

「良明……じゃなかった、岬。朝飯ができてるぞ」

 レオがぎこちなく名前を呼んだ。

(まだ慣れてないんだな)

「ありがとう、レオ」

 食堂に下りると、マリアとイズが席についていた。

 昨夜の告白から一夜明けて、三人の顔つきは落ち着いていた。

 しかし、食事が始まってしばらくしても、誰も口を開かなかった。

 沈黙に耐えられなくなったのは、レオだった。

「なあ……カイトは今、どんな様子なんだ?」

「ちゃんとやれてるよ。お前たちのことを、心配してた」

「そうか……」

 レオが俯いた。

「俺、気づかなかった。ずっと一緒にいたのに」

「気づけなくて当然だよ。カイトの体にいたんだから」

「でも……カイトじゃないのに、カイトと同じように仲間を守ろうとしてくれた。それは……本物だと思う」

 俺は少し面食らった。

(レオ……)

 マリアが静かに口を開いた。

「一つ聞いていい?」

「何だ?」

「カイトは……この状況を知ってるの? 私たちのことを心配してるって言ったけど、あんたが仲間として戦ってきたことも、知ってるの?」

「ああ。メモで全部伝えてある」

「メモ?」

「俺とカイトは、入れ替わった時に机の上にメモを残して、互いに情報を伝え合ってる」

 マリアが目を丸くした。

「……なにそれ。なんか、すごいわね」

「お前たちのことも書いた。三人ともいいヤツだって、カイトも言ってた」

 マリアが少し顔を赤くした。

「べ、別に……そんなこと言われても」

 イズが微笑んだ。

「カイトさんらしいですね」

 レオが立ち上がった。

「よし。俺は決めた」

「何を?」

「岬……良明。お前がカイトじゃないのは分かった。でも、お前はずっと俺たちと一緒に戦ってくれた。それは変わらない事実だ」

 レオが真っ直ぐにこちらを見た。

「カオスを倒して、カイトを元の世界に戻す。そのために、俺たちと一緒に戦ってくれないか?」

 俺は少し驚いた。

(俺に、頼んでくれるのか)

「……ああ。もちろんだ」

 マリアがため息をついた。

「まったく……こういう時だけ、レオって頼もしいわね」

「こういう時だけって何だよ!」

「いつもはうるさいだけでしょ」

「ひどい!」

 イズがくすりと笑った。

 俺も、思わず笑っていた。

(こいつら……本当にいいヤツらだ)

 レイズが部屋の入口に立っていた。

「準備ができたようだな」

 レイズが静かに言った。

「カオスへの道は、険しい。しかし——」

 レイズの目が、温かく細まった。

「これだけの仲間がいれば、恐れるものはない」

***

カイトサイド


 今日の恭介は、どこかおかしかった。

 朝から口数が少なく、授業中もぼんやりしている。

 休み時間も、いつものようにカイトに話しかけてこない。

(恭介……)

 昼休み、カイトが恭介に声をかけた。

「恭介、今日は静かだな」

 恭介がはっとした顔を向けた。

「あ……そう? なんか、ちょっと考え事してて」

「何を考えてた?」

「んー……」

 恭介が少し俯いた。

「なんか、藤先生と話してたら、色々思い出しちゃって」

(藤銀次と話した?)

「いつ話した?」

「昨日の放課後。なんか、廊下で捕まって……先生がいきなり『君、最近悩んでることない?』って聞いてきてさ」

(やつが自分から近づいた)

「それで、何を話した?」

「んー……なんか、勉強のこととか、将来のこととか。俺、勉強も運動も苦手じゃん? なんか自分って何もできないなーって思うこと、たまにあって。それを話したら、先生がすごく共感してくれて……なんか、すっきりしたんだけど」

(すっきりした。隼人と同じ言葉だ)

「今は?」

「今は……なんか、ぼーっとする。頭が重い感じ?」

 カイトは内心で舌打ちした。

(まずい。恭介も感情を吸われた)

「恭介」

「何?」

「藤先生には、もう近づくな」

 恭介が目を丸くした。

「え? なんで? いい先生じゃん」

「いい先生じゃない。あの人は……危険だ」

「危険って、何が?」

 カイトは言葉を選んだ。

(正直に言っても信じてもらえないかもしれない。でも、伝えなければならない)

「うまく説明できないが……あの人の近くにいると、お前の大事なものが少しずつ奪われる」

「大事なもの?」

「気持ちだ。お前が感じる、怒りや悲しみや不満。そういうものを、あの人は集めている」

 恭介がじっとカイトを見た。

「……良明、お前、最近ほんとに変だよな」

「変でいい。信じてくれ」

 沈黙が続いた。

 恭介が、ため息をついた。

「……まあ、お前がそこまで言うなら。近づかないようにする」

「ありがとう」

「でもさ」

 恭介が少し照れくさそうに言った。

「お前、最近頼もしくなったよな。前の良明は、こういうこと言えるタイプじゃなかったし」

(そうだな。俺は良明ではないからな)

「……色々あって、変わった」

「そっか」

 恭介が窓の外を見た。

「なんか、最近空気が重い気がするんだよな。気のせいかな」

(気のせいではない)

「気のせいじゃないかもしれない。でも、俺がなんとかする」

「お前が?」

「ああ」

 恭介が少し笑った。

「なんか、かっこいいこと言うじゃん」

 カイトは静かに前を向いた。

(良明、急いでくれ。こっちも、時間がない)

 放課後、カイトはメモ帳に向かった。

『良明へ。

 今日、恭介も藤銀次に話しかけられていた。

 隼人と同じく「すっきりしたがぼーっとする」と言っていた。

 二人とも、今日は藤銀次から引き離した。

 しかし、藤銀次は生徒に自分から近づき始めている。

 学校全体に広がる前に、何とかしなければならない。

 レイズに会えたなら、急いで教えてくれ。

 こっちはもう、限界が近い。

 カイト』

 折りたたんで、机の上に置いた。

 窓の外は、夕暮れだった。

 しかし空の色が、どこかおかしかった。

 赤でも橙でもない——紫がかった、不自然な色。

(異変が、さらに加速している)

 カイトは窓を見つめながら、静かに思った。

(良明……頼む)

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