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【電子書籍化】悪役令嬢(!?)の鑑なんてごめんです! だから殿下、ついて来ちゃダメです。  作者: 氷雨そら
破滅なんてゆるしません。だから殿下、一緒に抗ってください。

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61 第二王子殿下、ついて来ちゃダメです。



 ✳︎ ✳︎ ✳︎



「さて、ルルーシア。行こうか?」


「えっと、はい。でもどうやって?」


「闇の精霊様に、お願いすれば良い。対価は、もう十分払っている。……そうですよね? 尊きお方」


「そうだな、今さら取ってつけたような尊称が気になるが。ま、この間、セラフと会わせてもらった礼も出来てない。たまには本気を出すか」


 話がスピーディーに進む中、私には気になることがあった。確実に、このままにしてはいけない案件だ。


「あっ、あのっ。ところで」


 グラグラと景色が歪む。


「ひっ!」


 ちょうど、垂直に落ちる遊園地のアトラクションみたいに、地面が消えて落ちていく。


 私、これ苦手な感覚っ!


「ルルーシア、大丈夫だから」


 ぎゅっと父に手を握られる。父が、カッコよくて頼りになる。もし、アレス殿下と出会わなければ、父よりカッコいいと思える人なんて、この世にいないだろう。


 もう片方の手には、フワフワでツヤツヤの毛並みが触れる。恐怖感が薄らいでいく。


 でも、それはそれ、これはこれ。

 絶叫系なんて嫌いだ。


「ぎゃあああああっ!」


 たぶんそれは、ほんの数十秒の出来事だった。落下していく感覚が消えたのに、衝撃は訪れず、目を開けば、そこは周囲を埋め尽くすほど大きな木に白い小さな花が一面に咲く不思議な空間だった。


 風が吹くたびに舞い落ちる、白い花びらは、淡雪みたいに手や地面に触れるたびに、シュワシュワと消えていく。


 美しい景色。いつか、あなたと見たい。

 でも、それはそれ、これはこれ。


 これだけは、はっきりさせておく必要がある。


「ところで、リベラ殿下は、どうしてこちらに?」


 どうして、ついて来ちゃいました?


 いることに気がついていながら、止めるのが遅れた私も、申し訳なかったですが。


 第二王子殿下ともあろうお方が、命の危険がある竜の討伐について来ちゃうとか、思わないですよね?


「公務については、母とレイチェルが、何とかするから、義姉上を守るようにと王宮を追い出された」


「はぁ……?」


 王妃殿下と、王妃になりたい悪役令嬢の取り巻き侯爵令嬢の組み合わせ。悪役令嬢の息の根を止めろと、追い出されたという方が、まだ納得がいく。


「それに、義姉上が危険な場所に行くのに、何もしなかったら、兄上に……」


 うん。リベラ殿下は、ぼかしましたが、怒ったアレス殿下は、怖いですよね? 


 私のことを置いて、危険な場所に飛び込んだ、アレス殿下が悪いと思いますけどっ。


「……何しに行くか、分かっておられるのですか? そもそも、アレス殿下と、リベラ殿下の両方に何か起こったら、王国は誰が守るのですか」


「……災厄の日が訪れれば、王族など無意味ですよ。それに……闇の精霊を召喚した乙女を守るのが、長い年月、王家と光の精霊の盟約ですから」


 私は思わず、フェイの方に勢いよく振り返る。あんな風に愛する人を吹き飛ばしながら、ここに来ての光の精霊のツンデレが尊すぎる。


「……本当に?」


「王家に秘匿された文書に記載されている、事実です」


「セラフが?」


 信じられないとでも言うように、呟いたフェイは、アレス殿下と思考回路が似ているのかもしれない。その尻尾がゆらゆら揺れている。


 傍目に見れば、どう見たってセラフは、フェイにベタ惚れだ。でも、それは当人同士の問題だから、口に出したりしないけれど。


「義姉上。たしかに、近接戦では兄上に敵いませんが、こう見えて魔術師ギルドでは」


 冒険者ギルドよりも、魔術師ギルドの規模は小さい。でも、それは攻撃魔法が使える人間が、少ないからだ。だから魔術師ギルドの最高峰は、S級冒険者に匹敵する力を持つ。


 ――――そもそも、リベラ殿下は、メインヒーローですし。


「……魔術師ギルドの紫炎」


「ふっ?! どうしてその二つ名を」


 美しい紫水晶の瞳が見開かれる。


「……光陰の子ども達全ての祝福を受けし者」


 光と闇の精霊の間に生まれた、全ての精霊の属性を持つから。


「うわぁっ! ご勘弁を!」


 ――――そんなに恥ずかしがる事だろうか?


 確かに自分が呼ばれたら、ちょっと恥ずかしい二つ名だけれど、事実に基づくし、小説の中でもよく出てきましたよ?


「ふふっ。頼りにしてます。リベラ殿下」


「……義姉上の御身は、命に替えてもお守りいたします」


「未来の国王陛下が、命を賭けるなんて許されるはずがありませんよ。……でも、私の方は、余裕あるか分からないので、御身はご自分でお守りくださいね?」


 リベラ殿下が、ほんの少しだけ瞳を見開いて、私を見つめる。


「兄上が、全てを投げ捨てるほど惚れてしまった理由が、少し分かった気がします」


「……レイチェル様に、言いつけますよ」


 だがしかし、今のやりとりのどこにそんなことを言われるような要因があっただろうか。それは、永遠の疑問だ。


「ははっ、余計なことを申しました。俺の可愛い婚約者は、意外とそういう事を気にする方ですので、どうかご内密に」


 ……分かっていらっしゃる。レイチェル様は、可愛らしいですよねっ!


 ツンデレ令嬢レイチェル様推し仲間として、リベラ殿下と仲良く出来そう。そんな予感がした。


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